倒れた案山子
外を見やれば、田んぼが朝日に青々と広がる。頬杖をつく私、耳からは今流行っているらしいKPOPが流れる。
KPOPが終わるとラジオのパーソナリティが話し始める。私は眠いのをたらりと目尻に見せる。あくび。
見渡した向かいの家の足元からフキが生えている。清水が流れる用水路の水を吸い上げて、それは緑を映す。常緑樹が水に溶け出したみたいな色。薄い緑は水がその色に着替えて形作る様で。
でも私はフキが好きじゃない。食べるのが好きじゃない。鰹節と醤油の旨みがフキに染み込むまで煮物、正直食べ飽きている。
見るくらいで良い。それくらいになる。
「今、山から柘榴取ってきたけど食べるー?」母の大きな声が一階から届く。
「食べるー、置いておいてー」
「はーい」という母の言葉。私は柘榴の味を思い出して、口に唾を貯める。
いつ下に行こうかと、ぼんやり考えながら、外の景色を再度見やる。外の田んぼには案山子が見やる。
それはこちらを見つめている。守ってくれている。役割通り。
へのへのもへじ。なんとステレオタイプな奴だ。頭には網傘、手には軍手、青いちゃんちゃんこを着込む。
それは私の方を見つめていて、ぐっとこちらに顔が近づく様でいて、私と目が合う。目が合って、どんどんと近づいて来ている気がして、見つめる。
それは傾いていた。確かに傾いて、それは倒れた。
パタ。
光、自動車。ネオンライト。安い酒の匂い。伸び切った服。染まる銀髪。生ゴミの匂い。喧騒と雨水。
私は耳から流行りのKPOPを聴きながす。生まれてからずっと、住み慣れた街。案山子は立ってはいない。




