沈まなかった紙飛行機
「ねぇ、何作ってるの?」
「紙飛行機」
彼は休日の昼に紙飛行機を作っていた。ケント紙を昨日買ってから帰ったと思っていたらどうやらこれをする為だったらしい。
「紙飛行機って折り紙とかで作るんじゃないの?」
「一枚の紙でどれだけ飛べるかを競うものもあるけれど、多分それの事だね」
「ふーん」
彼の手の中では骨組みから用意された飛行機に紙が貼り付けられているもので紙飛行機というのが些か疑問が残る。
「飛ぶの?」
「どうだろう、飛べるかも知れないかな」
「分からないの?」
「飛ぶことを主軸に作ってないから」
彼はこう言う風に言葉を使う。彼が言わんとする事は言葉の奥にこっそりとかくれんぼでもしているみたいにひょっこりと見えるだけ。私はいつも理解に迷う。でも彼が作るものはいつも美しく見える。
「飛行機なの?」
「飛行機だよ、飛べないかもだけど」
「綺麗ね」
「分かる?」
「うん」
彼は紙が貼られた飛行機を少し手で持ち上げて、手で支えたまま空に置く。過保護では無いだろうか。そんな空に飛ぶ事を求められた名前なのに、誰かの力を借りてその高さを眺めるなど、狡い。
でも美しかった。丁寧に形作られたその見かけはそれだけであって良いものであるかの様で。
休職2ヶ月目。私は彼といる。




