曇らなかった鏡
風呂場の鏡は曇る事が無くなっていた。水滴の一つもつくこともなければ、曇る事もない。見え続ける自分の姿がやけに恥ずかしく見える。
自分の肌とはここまでに肉感に富んでいただろうか。太く、膨らんだ肌をしていただろうか。色々なことが目につくようになってしまった。いつもなら、すぐ曇ったり、水滴の付いて見えなくなる自分の姿を隠すことが出来ない。
その理由は他の誰でもない自分の仕業なのだけれど、ここまで防水の措置が上手くいくとは自分を褒めたい位なのに、大手を振ることが出来ない。そんなことしたら、全身が見えてしまうではないか。
笑い物だ。自身でやったことに自身で追い詰められるとは人の発明とはやはり人が扱うにはあまりに早かったという事だろうか。
時間がどんどんと進んでいってしまう。
「おねーちゃーん、まだー?」妹のダウナーな声が大きく響く。先を譲ってもらったのにも関わらず、私は全く少しも自分の日々の汚れ落としが進まない。
「ねー、聞こえてる?」ガタッという音がしてから、扉が開く。妹が何の躊躇いもなく浴室を見る。
浴室を見る。それから無論、鏡の前の私を見る。
「お姉ちゃん……」
「何?」
「痩せた?」そういうと、ばたりと扉を閉めて妹は去っていってしまった。
鏡を見直す。私は痩せていた。言われてみればそう見える気がする。センキュー妹、アイラブユー妹!
「お姉ちゃん、まだ入ってた?」
「浴槽にも入ってなかった」
「今日、お姉ちゃん風呂洗ってくれてたから」
「うん、だから言ってあげた」




