曲がったスプーン
カレーの前に佇む。
「いただきます」そう言ってから、スプーンを手に持つ。やや曲がったスプーン。
テレビをつける。どうでも良い内容のバラエティー番組が始まり、目のピントが合わずにぼやけていくつもの色彩がひかる。
カレーを口に運ぶ。カレーは作るのが楽だ。最近のインスタントはレンジですぐに出来上がる。お湯を準備する手間も無い。野菜を切る手間も、肉を切る手間も無い。
マグカップを手にして中に入った麦茶を飲む。ぬるい。仕事帰りに買ったペットボトルの麦茶。それを態々、マグカップに入れてから飲むのは氷を入れたいからだ。今日の麦茶には氷が浮かばない、ぬるい麦茶が注がれている。
半分まで食べたところで、スプーンが歯にかかる事を感じる。ある部分に曲がり跡があるから、自分の口の大きさだと丁度邪魔になるのだ。
僕は立ち上がると今着ている皺だらけのワイシャツが揺れる。
いつも出しているスプーンが何処にあるのかすぐには分からなくて、手当たり次第にキッチンの引き出しをを開けていく。ガチャガチャ、ジャラジャラ、あった。
曲がったスプーンと同じ柄のスプーン。同じものを揃いで買った。僕は曲げてないスプーン、特技とかなんとか言って、曲げられてしまったスプーン。
同じ様にすれば元に戻ると言った。曲がったスプーンを見る。僕の顔が写る。




