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人狼夫婦と妖精 ツインズの旅  作者: 冬忍 金銀花
第一章 駆け出しのハンザ商人 オレグ

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第34部 煙が充満? 煙突の考案!


 1242年6月17日 ポーランド・トチェフ


*)石材と煙突と傘?


 オレグは出来た長屋の検分に、住み込みを始め? ようとした。


 煙が充満する長屋。オレグは出来上がった長屋に住みこんだ。そう、重大な問題が発生したのだ。

 この時代には煙突という物が存在していなかった。


「今日はどうしたんだろう。昨日と打って変わって雪が降りそうだぜ。」

「そうね、もう春だけれども今までが暖かかったので寒いわね。」

「リリー、火をおこせるかい?」

「無理言わないで、火焔魔法は使えないよ。村に行って火種をもらってくれば?」

「ああ、そうするよ。では行こうかリリー。」


「ほえっ!」


 オレグはリリーと一緒に長屋を出た。どこか火を扱っている家を探すも、どこにも無かった。


「家からはどこも煙は出ていないわ。今は農事に携わっているから無理なのね。」


 リリーは妖精の姿になって空から村を見回してきた。


「そうか残念だ。夕方になるまで待つしかないのか。」

「ふふ~ん、オレグはそう思うでしょう。でも、一軒だけ在ったわよ。」

「どこにだい? あ、そうか、加治屋だな。すぐに行こうか。」

「ゲート!」


 水車小屋の鍛冶場にオレグとリリーは跳んできた。


「ようカミル、レフ。仕事はどうだい。」


「おう、旦那どこから湧いたんですかい? もうびっくりしましたよ。仕事も何もありませんぜ。ここ最近はどうも話が跳んでしまって、いつ何を作っていつのかが分かりません。」


「そうだろうな。今日は大きな鍋を作るのは? どうだい。」

「旦那は、その大きな鍋で何をゆがくので?」

「今度考えておくよ。それよりもさ、今日は寒いので火種をもらいに来たのさ。何か入れるものが有るかい?」


 カミルは考えてみた。レフは間髪を入れずに、


「このバケツでいいでしょうか。持つと手が熱くなりますので、お二人で棒を通されて持ってください。・・・あ、そうですね、それでいいです。」


 オレグはレフに教えを受けて火種もバケツももらって帰った。


 ここまでは良かった。四人が西暦 1241年4月1日 バルト海・ゴットランド島で生を受けてから今日まで、火を扱った事がなかった。宿屋ではどうだったか? オレグとソフィアの新居はどうしていたのか? どこででも火は扱わなかった。料理が出来ない女二人と男だったから。


「おう、ソフィア、火種だぜ。」


 オレグが持って帰った火種は二つあった。オレグには気が付く事は無かった。もちろん、リリーもソフィアにも・・・・・。


「ここに火種を入れて薪をいれる。そして、ふいごで風を送る、と。」

ここでいうふいごとは、オレグの口”そのもだった。大きく息を吸って吐いて~どうにか火は着いた。


「火が着いたぜ、すぐに温かくなるよ。」


 暖炉兼炊事用のかまどから煙が、部屋中に立ち込めた。次なる火種だ!


「オレグ! このソフィアさまを燻製にする気なの? あんた、バカじゃないのかしら? リリーなんかは、もう煙たくて萎れていますわ。」

「ソフィア、しょうがないだろう? 家はこういう作りだもの。俺に言われてもどうにもできないよ。」

「そうね、だったらどうするのよ。違うわ、どうにかしなさい!」


 萎れていたリリーが窓を開けてきた。


「ゴホ、ゴホ! ねぇ、オレグ。本当にこの煙はどうにか出来ないの?」

「なんでも大昔の日本の家は、建てたらすぐに煙でいぶすというらしいぜ?」

「なによ、その日本というのは、私は聞いた事はないわよ。」


 日本では、家を建てたら煙でいぶしていたらしいのだ。もちろん家を長く使用出来るように。穴や隙間の多い日本の民家、囲炉裏で煮炊きをしている。煙突? ありはしませ~ん。


 ここヨーロッパにも同じ風習があったのだ。???? 煙突が無いのだ。サンタさんは玄関から入るしかない時代だった。中世ヨーロッパになり煙突が考案されて、大都市から広がった。トチェフのようなド田舎では知識や風聞すら無かった。建築のイェジィも、石工のシモンにも知識が無かった。


 だが? 鍛冶屋にはまがいの煙突が在った。カミルは独自に作りあげていた。鍛冶屋を作る時は、シモンも溶鉱炉と煙突と石炭置き場、それに防火の壁もカミルに言われた通りに作りあげた。煙突以外は、だが。


 カミルは溶鉱炉の上の天井に穴を空けて、鉄板で雨が入らないようにしていた。また、溶鉱炉からは三方に煉瓦を高く積み上げていた。その上の屋根に穴があるから、熱はその穴から出ていた。基本、溶鉱炉からは薪みたいな煙は出ない。最初に薪で火を起こす時にだけ大量に煙が上る。最初だけだから問題が無い。



 だからオレグにも知識が無かったから、また鍛冶屋に行ってみた。


「なぁ、カミル。今日俺が長屋でかまどで火を起こしたのだよ。」


 ぼそぼそと、オレグは話している。心はカミルには向いていない。溶鉱炉と壁や天井を見ているからだった。


「そうか、だから来たんだな?」

「で、どうにかならないのか? ここを見てもあまり変わりがないようだが。」

「村の家でも同じだろ? なにも問題はないだろうが・・・・・・・・。」

「いいや、おおありさ! かのソフィアさまがかんかんに怒ってらっしゃる。」

「俺は火の熱の通り道を、こうして作っているが長屋には無理だろう。」


「作る? 何を作ったんだい。ここはカミルの図面通りに作ったはずだぜ?」

「ああ、ここは図面どおりにとても良く出来てたぜ、だがよ、書いた図面がよくできて無かったんだよ。」

「なんだ、お前が悪いんじゃないかい。それで、なにを作ったのさ。」

「屋根に穴空けて鉄板で雨除けを作った。それから、溶鉱炉に沿って煉瓦を積みあげたのさ。ただそれだけだよ。」


「だから俺も煙にいぶされろ、というんだな。あの煙をどうにも出来んのだな?」

「俺だって我慢しているんだぜ。文句があるのかい。」

「いいや、なにもないよ。」


「おおそうだ、この大きい鉄のパイプをやるよ。これで煙を外に出せや!」

「ありがとうよ。工夫してみる。仕事、頑張れや!」


 長屋に帰ったら、二人は外でたむろしていた。目は赤く充血している。涙の跡も幾筋も見える。


「リリー、大地の魔法で手伝ってくれ。この鉄のパイプを暖炉に繋げてみる。」

「うん、いいよ。やってみる。」


 オレグはカミルから持たされたパイプを、いろいろとかまど・暖炉に当ててみた。もう煙も少なくなっていて部屋は暖かかった。ほっかりと和んでいる? オレグだった。


「人間、火を見ていると和むのもだな~。」


 あきれたソフィアは鉄パイプでオレグを殴った。パイプは折れ曲がってしまう。


「なんでぃ、痛いじゃないかい。なにしやがる。焼いて食ってやる。」

「おいしくないわよ。はやく考えなさい。この曲がったパイプでね!」


 オレグは曲がった性格と同じく曲がった脳みそで考えた。パイプをかまどに当ててみる。長さが足りないのは問題ではない。後で継ぎ足せばいいだけだ。


「オレグ、煙は上に登るから、上にこのパイプを着けたらどうなの?」

「そうだよな。バカとナントかは木に登るのが好きらしいし、煙もそうなのか。だったら、ここに穴を空けてこのパイプを突き刺す。どうだい、リリーここに取り付けができるかい?」


「うん、簡単よ。・・・・、オレグ、この煉瓦が熱くて出来ないわ。隣の家でやり直しをしてみましょう。」

「触りもしないのに、なんで熱いんだい?」

「私の魔法は間接的に触るのよ。だから細かい所まで出来るのよね。もうオレグは黙っていて。」

「オレグは私が黙らせるからリリーは頑張って。木以外の物は特に石は堅いので難しいでしょう?」

「うん、とても大変よ。草の根が石を穿つには長い年月がかかりますもの。私の魔法も、長い時間が・・・、ほら出来た。オレグ、パイプをはめ込んでみて!」


「OKよ、ここにパイプを差し込んで、パイプの向きを家の外に・・・・・?」

「お~い、リリーさん、ここの壁に穴を頼む。」

「ここでいいの?・・・・、もっと上、天井の所ね!」

「うん、いい感じだね。家の外には少ししか出ないが、後で継ぎ足すよ。次にバケツで火種を持ってきて、火を熾す。」


 それから少し時間が過ぎた。持ってきた薪が燃え出すと、煙はパイプの中を通って外に出ていく。


「やった成功だ! これで煙たくなくなるぞ。」


 だが、火が強くなると、


「オレグ、煙たい。煙がパイプを通りきれないのよ。このパイプを大きくしてよ。大きくなればケムけむも通りがいいのでしょう?」

「俺に言うな、出来ないよ。」


 苦情係のソフィアと苦情を受けるオレグ。散々言われ続けられるから、オレグは辟易する。


 リリーは、


「ねぇオレグ。このかまどの上に煉瓦をこう積んでさ、煙を屋根に逃がしたらどうなよ。できるでしょう?」

「・・・・・・・・、・・・。」

「おう、できるぞ。ここをこうやれば、な?」

「オレグ、こうやればって、文字だけでは解らないわ。紙に書いて頂戴。」

「ソフィア、この時代に紙が在るのかい?」

「あ、間違えた。ここの壁でいいわ。さぁ描いてちょうだい。下手な絵でいいのよ。さぁ。」


 オレグは釘で壁に傷を付けながら絵を描いた。


「石工のマシュを呼んでくるか。あれに説明して作らせるさ。リリーまた水車小屋まで頼むな。」

「そうね、まづ水車小屋へ跳ぶね。オレグは先に顔を洗ってね!」

「あぁ、このままでいいよ。俺が苦労した証になる。」

「バカ言わないで。オレグのバカが知られるからもう止めて頂戴。この私までバカと思われるじゃないのよ。」


 オレグは二人が言うように顔を洗って、加治屋に顔を出した。オレグの提案にカミルも乗ってきた。オレグとカミル、マシュの三人で長屋へ向かう。途中途中で加治屋に説明したが、この二人は理解は? 出来たようだ。長屋に着く。


「な、このかまどにさ、上に煉瓦を積んでかまどを伸ばすのだよ。するとケムけむは、空に登って行くだろう?」

「そうだよな、旦那は頭がいいぜ。で?」

「お前は頭が悪いぜ。マシュに試作させるのだよ。」

「おう、そうか。すぐに作らせるぜ。煉瓦はどこに有る?」


「オレグ、煉瓦は外に持って来たわ。早く作らせて!」


 リリーは大地の魔法で、天井と屋根に穴を開けている。外にはゲートで煉瓦をたくさん運んできて積み上げてあった。


「ほら、オレグ。カミルには屋根の穴の傘を作らせて頂戴な。」


 オレグは屋根から出る煉瓦の煙突の雨よけの傘を作らせた。


「おう、この煉瓦の作りは煙突だ! 俺はそう名付けたぞ。俺はカミルを呼んでくる。マシュ、簡単でいいから煉瓦を積み上げていてくれないかい。」

「いいぜ、旦那。でも、倒れても知らないぜ?」

「いいよ大丈夫だ。お前には出来るだろう。頑張ってな。」


 石工のシモン、マシュは、女二人の監督の元、石積みに励んだ。


「ほら梯子を持って来たわ。これで届くでしょう?」

「おう助かったよ、嬢ちゃん。もうすぐに出来るよ。奥さん。」

「まぁ奥さん! 誰が奥さんなのよ。お嬢様と呼んで下さいな。」

「フン! 嫁っこが何を言うか。」


「バシッ! バタン! ドカドカドカ! ギャー!?!?」


 叩かれたシモンは梯子から落ち、煉瓦もきれいに崩れ落ちた。


「わ~、ごめんなさい。ついつい、オレグのように殴ってしまいましたわ。」

「もう、お姉さま。それを言いましたらオレグに同情の眼差しが向けられましてよ。同時にお姉さまは、お・に・よ・め・ですわ。」


「俺もそう思いましたわ。オレグの旦那も不憫だね~!」


「え? 誰が不憫なんだ。・・・・・わ! ・・なんだ、ソフィアに遣られたのか、大丈夫か死んでいないか!」


「ええ、旦那。かろうじて生きております。さ、旦那もここに立って俺らをガードしてくんなさい。」

「おう、お前らを守ってやるぞ。あのサーモンからな。いや、Deーだった。」


 オレグとカミルが加わり四人で煉瓦を組み上げた。ものの三十分で完成した。カミルはこれを眺めて関心した。これは、シモンとマシュも同じだった。


「カミル、この煙突の穴にね雨よけに鉄板を着けたいのさ。傘が無いと雨の日には火が使えないよな。」


 カミルは屋根に上ったまま考えた。オレグは煙突の形が出来て大いに満足していた。


 カミルは、


「シモンとマシュ、すぐに煉瓦の煙突を建造してくれ。俺は明日にでもこの傘とやらを作ってくるよ。」

「と、カミルの旦那が言ってますぜ。オレグの旦那も建造のお手伝いをされますでしょう?」

「あぁ、俺も頑張って手伝うよ。」


 二日後に煙突が完成した。薪を用意して火を着ける。煙は? 上に登る。成功だ。だが、次の問題が発生した。


「大変ですぜ、旦那。旦那の頭が燃えていますぜ!」

「なんで俺の頭だ!」

「すみません、慌てました。旦那の頭の上の屋根が、も・え・て・い・ま・す・」

「俺の長屋を燃やしてなるものか。」


 オレグは急いで屋根の上った。そして安堵した。少し火が炎の勢いで屋根まで飛んできただけだった。でも、この事実が早めに分かって良かった。


 この欠点には、屋根の煙突の周りに煉瓦か石を置くことで解決した。が? カミルとレフが一言。


「旦那、とても大事なものを忘れていますぜ。」

「なんだい?」

「瓦でさ~」

「あ!」


 そうです、オレグは瓦の存在を思いつきませんでした。建築のイェジィは、この長屋はこれでいいのか? と思ったそうですが、オレグが自信たっぷりに言うものだから、言い出せなかったらしい。


 オレグは、イエジィとボブの三人で対策会議を行った。イエジィには、屋根の改造を。ボブには大量の瓦の輸入を頼んだ。


「よう兄ちゃん。いつもありがとうな。至急瓦を運んでやるぜ、任せな。」


「ああ、頼んだぜ!」


 煙突からは、雨漏りがひどいらしい。隙間ができているからだが、埋める手立てはあったのだろうか。



 石工の小屋からは煉瓦が大量に無くなっていた。


「ここの煉瓦を、お前どうした、知らないかい?」



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