第256部 農村へ……魔女を探す旅
1300年1月9日 トチェフ村
*)南に続く道……
「俺の、今度の女房はつつしまやかでいいな、」
「オレグ、慎ましやかだぜ、また間違っている。」
「そうだな、この女、魔女だけあって餌代が掛かりそうだ。」
「はいオレグさま。丸太で済ませます。」
俺は昨日の事を思い出しながら南に延びる道を考えていた。世が暗くなる中世のヨーロッパ、魔女裁判で火刑送りの女たちの逸話が残る農村部。エピソード・裏話実話と言ってもいい。現代にも魔女裁判が行われる東ヨーロッパ……だ。
「あの家の女女将が騒ぐから俺の人生が送れない、魔女だ! 裁判長……あの女を裁いて貰いたい。」
「男よ、あれが魔女だとどうして言えようか。今の都会は騒がしいのだ。よってあの女将は無罪……!」
「月を見ては夜な夜な騒ぐのですよ、魔女に決まっています。」
「お前の被害妄想だ、お前こそ前科一犯になりたいのか!」
「いいえ……取り下げます。」
ま、こんな感じの魔女裁判だからどうでもいいのだが、真面目に魔女裁判の依頼を受けた裁判所は偉いのだと思う。
「?……。」
「まだ気にしているのかよオレグ、嫁さんは寝て暮らすそうだぜ。」
「あぁ、あの女こそ魔女裁判で飯抜きの刑に処すべきだった、後悔しているよ。」
「オレグ、それってまさか?」
「あぁこれな、逆さ十字架だ。これが俺たちが進む道を示してくれる。」
「ケッ……バカか、キリストの教えみたいで気にいらね~な。」
「聖ペテロ十字……別に意味は無いが、吊るされた男の絵図と同じさ。」
「それってタロットのことか!」
「まぁそうだな。どことなく似ていて非なるものかな。」
別の視点で試練や苦難それに自己犠牲、奉仕精神を意味するというが、吊されても死にはしないことか。
俺の生前の記憶がそうさせたのか、ゾフィが教えてくれた。
「なぁオレグ。この先「トチェフ」と標識があるぜ。お前……行きたいのか?」
「あ?……そうだな。今のトチェフも見てみたい。俺の財産を貰ってくるか。」
「誰が今のオレグを信用するか、それこそ魔女がいたら気に入られるかもしれね~な~……?」
「沢山の魔女を残しておいた村だからその子孫も魔女だろう。いい女が居るさ。」
「いい女の意味は判らないが、皆、嫁さんにしちまうのか。」
「それもいいな、ハーレム……何と響きがいい言葉か!」
「それ、女の修羅場で痩せ細るだけだぜ。止める事を箴言するよ。」
「忠告、有り難く聞いておく。メイドにする。」
「オレグが貴族ならないいけど、今はタダのおっさんだろう。女衒に成り下がるのだけは止めておけ。」
「金で教会で買う時点で既に女衒だ。村で買うのと何処が違う。」
「ちげ~ね~。神父も女衒だな。なぁオレグ。女の神父はどうして居ないんだよ。」
「あ~そうだな、俺もしらね~な~。どうしてだろう。マリアとして象徴されたからじゃね~のか?」
「マリア……ねぇ。生きていないよ。処女受胎、あれこそ悪魔崇拝だろう。」
「アハハ……そうとも言えるな、これは面白い、面白いぞ、ゾフィよ。」
俺はどちらかと言うとサタニズムの方が性に合っている。サタンとは悪魔ではないのだ。このサタニズムが教会に浸透していたら、あのローマ教会のような騒動は起こりえないのだから。男の子が異様にもてはやされなくなる。
「オレグもつくづくスケベ親父だな。子供を作ってもHしたいのか。」
「当たり前だろう。お前には無理だがな。」
「魔力……腐った卵をオレグに召喚!」
「うぎゃ~、、、やいゾフィ。俺に何の恨みがある。」
「俺の気にしている事をヌケヌケと言うからだ。妖精こそ処女受胎だ!」
「夢精受胎だろう?」
「無性と言え!……馬鹿野郎が、」
「ガハハハ、、、、ゾフィ、お前・・・何処から産まれたんだ?」
「人々の信仰からだよ。人が認知するから俺らが存在する。オレグ……呉々も俺の存在を真じぇておけ! 絶対にうたぎゃうなよ!」
「ゾフィ……口が消えかかっているぞ、どうした。」
「うぎゃ、ゾフィが消えて無くなる……。」
「そうか俺が信じないとこうなるのか。うんノアに戻ってくれ。ギャハ……、」
ゾフィが元の小さな妖精の姿に戻ったらオレグが笑う笑う。
「そんなに俺のパンツ姿が面白いのか。次は腐ったドラゴンを召喚してやる。笑気に当って死んじまえ!」
「……それは勘弁して欲しい。ゾフィ、腹が減っただけだろう。飯にしようか。」
そんなこんなでもうトチェフ村の入り口まで来てしまった。港……ビスワ川の港も大きくなっている。クレーンが数機ある。俺が造らせた石段の港は拡張されていてそれはもう見事だ。
「杭を打ち込んで木材で土留めだけのそれの何処が凄いのだ。」
「ゾフィ、そう捻くれるなよ。読者へのリップサービスだろうが、物語にケチをつけないでもらいたい。」
「ぺんぺん草が生えている……。」
「ゾフィ、そこまでにしてくれ。でも確かに活気がないな。」
「バカなオレグだぜ、今は何月だ。」
「一月だな……農閑期か。水も少ないから船は出せないな。」
「だろう……?」
少しと言えない程にバカにされた俺。これは俺がゾフィを小馬鹿にして笑った所為の報復か。これは確かに笑えるおれの脳みそだな。
「明日から女を捜しにいくぞ。」
「ケッ、旨い匂いにもう釣られている。」
「俺のパブは健在だ、行くぞ。」
「……らっしゃい。おや珍しい、ご主人さまかえ?」
「そうだが、俺が判るのか。」
「はい創始者さまのオレグさまですね、判りますとも。インチキ野郎とね!」
「なぜ、」
「おい、追い出して塩撒いて水も撒いておくれ!」
「女将、俺は正真正銘のオレグだ。間違えるなよ。」
「それも判るのもか、この肖像画に似てなさるが中身はどうだか。今自分は骸骨様になってなはる。」
確かに俺が死んでから四八年は過ぎている。生きておれば今頃はヨボヨボのジジィだな。それに引きかえ今の俺は当時のままで肖像画にソックリだ。
「おおかた魔女に頼んで顔かたちをそっくりに創って貰ったんだろう?」
「奥に部屋があるな使わせろ。」
「え”……?え”、え”え~~~~!! どうしてそれを知ってなさる。」
「このパブは俺の店だ、俺が造った。当然、奥の部屋も知っている。ここに居たら村人からも「俺が魔女だ!」と騒がれてしまう。」
「ケッケッケ~、オレグが魔女にされるとはおもしれ~!!」
「笑うなゾフィ。リリーがここに居たら明後日の方向に飛ばされるぞ!」
「呼んだ~~?」
「え”……今リリーの声が聞こえたが、ゾフィ聞こえたか!」
「うんにゃ、聞こえないよ。それよりもオレグ、早く銀貨を出して飯を作らせろよ。もう動けない。」
「ゾフィの境界の魔法が使えね~のが悪い。銀貨しか! なわせないからな。」
「なわせないって何処の方言だ。でも、いいだろう? 重いものを持たないで済むからよ、有り難く思え。」
「ゾフィ……ありがとう。さ、銀貨を出せ。」
「俺、港でむしられてから補充してない。オレグが出せよ。」
「俺もゾフィが持っていると思って、ステラから貰わなかったぞ。」
「あんたたち……無銭飲食かえ?」
俺は農村部へ魔女を探す旅に出た。初日から躓いている。
「月のご加護は……無いのかよ~~~、オ~オ~……。」
怒る女将から追い出される。
「ケッ、俺の店なのに、どうしてだ。よし家に帰るぞ!」




