25話
さてとこれからどうしようか。今は2時間だけど、まだ授業が何時から始まって何時に終わるか覚えてないからなぁ。とりあえずチャイムが鳴るまで逃げてみるか。
今更だけど他クラスから絶対に苦情が来るぞ。どういうつもりなんだあの先生と生徒は。迷惑極まりないぞ全く。
「はあはあ、待って…待って下さい!」
声のした方を振り向くと息を切らせた茜がいた。まあ、誰か来たのはわかってたけど何の用だ?
「ん?何だよ」
率直に聞いてみる。
「え?あ、えと…その、さっきは助けてくれてありがとうございました」
「あー別に気にしなくてもいいが、どういたしまして」
意外と素直だな。
「それで、これからどうするつもりですか?」
「とりあえずどこかに隠れて落ち着きたいな」
「そうですね」
しかし、どこに隠れようか。この学校のことを何も知らないからどこに行けばいいかわからん。【マップ】も大体の事しかわからないので、隠れる場所を探すのは難しい。
「じゃあ一緒に行きませんか?私はこの学校のことをあなたより知っているので役に立てるはずですが」
…この提案は僕にとって渡りに船だろう。
「だが断る」
「ええぇ!?ど、どうしてですか?」
「いや当然だろう。さっきのやり取りをもう忘れたのか?犠牲にされるビジョンしか見えないだけど」
「ギクッ」
…リアルで『ギクッ』なんていう奴初めて見た。
「ならば交渉です。私はあなたの事がもっと知りたい。代わりに私は私のことを話しましょう」
直球できたな。
「何だよいきなり告白か?」
「ち、違いますよ!ふざけないでください!聞きたいことはわかっているでしょう!」
「…何のことかわからないな」
「誤魔化したってもう遅いですよ。私はあの時ロッカーの周囲に人避けの結界を張っておきました。なのにあなたは私を見つけられた。明らかに何かあります」
「……」
なんだと?そんな気配はなかったはずだが?あっちの世界とは全く違うものだから感知できなかったとか?
厄介だな。
『あ!おい、いたぞ!こっちだ!』
「とりあえず話すかどうかは別として逃げよう!」
「っ!わかりました!こっちです!」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「おい!こっちにも人がいるぞ!」
「はあはあはあ!」
茜が息を切らせながら走っている。さっきから行く先行く先追っ手がいて休まる時がない。
「おかしくないか!?明らかに一クラス分の人数じゃないだろう!」
「はあはあ!さっき、から、他の、クラスの人が、交じって、います!」
茜が息を切らしながら、教えてくれる。
「何でだよ!?」
『茜さんと付き合ってるだと!?許せん!』
『宿題がなくなるって本当!?』
『あの人たち捕まえたら景品もらえるの?』
「ほとんど誰も状況わかってないじゃないか!?」
「何で、でしょう」
というか噂とかが広まるにしても授業中だぞ!?
「お前ら!校長からもレクリエーションという形で許可を取っている!構わず彼らを捕まえて事情をはかせろ!俺の感が面白いことだと言っている!捕まえたやつには後で俺が個人的に焼肉を奢ってやろう!」
『『『うおおおおぉぉぉ!!!!』』』
バカだ!この学校はバカだ!
「僕もう転校したいんだけど!?」
「はあはあはあ」
くそ!茜の体力が限界だ!
「茜!こっちだ!」
「っ!?」
そう言って茜の手を取り、適当な教室に入りロッカーの中に無理やり入る。
そして【念力】で窓を開け、【幻影魔法・ファントム】を作り出しあたかも窓から外に逃げ出したように見せかける。完璧だ。
しかし、茜の息が荒い。
「はあはあ!」
「静かに!」
「んむう!?」
無理やり茜の口を手でふさぐ。
『おい!あっちに行ったぞ!』
『おう!向こうからも回れ!』
………
行ったか。
「ふう、悪いな茜」
「はあ、はあ、はあ」
落ち着いて茜を見てみると走った後に密室の中に閉じ込められたせいか汗をかいており、下着が若干透けている。しかも、息づかいも荒いし、疲れたせいかくたっとしている。しかもロッカーの中という狭い空間の中なので、茜の体温が直で伝わってくる。
「………」
まずいな。この状況は非常にまずい。なんだかいけないことをしている気分になってくる。ここは早く出た方がいいだろう。うん。
「うん?」
無理矢理入ったのでうまく扉が開かない。棒みたいなのが引っかかっている。
「茜、ちょっと足どけて」
「はあ、ふぇ?ん、すいません。少しずれてもらえませんか」
「ああ、ごめん」
足をどかそうにも僕が邪魔なようで動かないらしい。うーん、僕もあまり動かないが少し強引に動いてみよう。
「あん、や、んん!ちょ、ん!待って!ストップです!」
「ん?何?」
「いえ、あのもう少しその優しくして欲しいと言いますか、足が私の…えと……」
後半小さすぎて全く聞こえなかったけど、優しく?こうか?
「…ふっ…ん…」
「……」
「あ…んん!」
「おい!やめろよ!なんか変なことしてるみたいだろう!」
「そ、そんなこと言っても…その……あなたこそわざとやってるんじゃないでしょうね!?」
「知らんわ!ならお前が動いてくれ!」
「わかりました」
さっきからなんか色っぽい声を出されて困ってたんだよ!ムラムラするより、僕の僕がアレになってしまった時の恐怖の方が大きかったのでアレにはならなかったけど。
だけど茜は茜でちょっとアレなんだよなー。
「よっ、んしょ」
「……」
さっきから向かい合ってるせいで大きな柔らかいものが僕の胸に当たってるんだよな。
「ふっ、ん!」
「……」
しかも声は無くならないし!
ダメだ!集中しろ!いや、感触じゃなくて!【万能感知】!【明鏡止水】!
ふう、落ち着いた。思考がクリアになったな。周りに人はいないな。よし、ならばもう【念力】を使ってしまおう。よくよく考えたらお互いに秘密を共有することができるし、僕は別になんとしてでも隠し通したいというわけではないしな。もう、秘密を打ち明けてもいいか。
ガタン
「あっ、開きましたよ!」
「そうだな」
もちろん僕がやったことだが。
「なんですか?悔しいんですか?ふふふ」
「とりあえずもっと隠れやすいところに移動しよう。僕についてきてくれ」
「え?意外と冷静なんですね。というかここの構造わかるんですか?」
「問題ない。あと、僕についても話す」
「!!わかりました。行きましょう」
そうして僕たちは移動を始めた。




