20話
さて、そろそろか。
【生命感知】によればだいぶ近づいて来ている。【魔力感知】には全く反応していない。この世界の人間のように魔力が無いのか、それとも隠しているか。どっちだ?
「……」
来た。
先ずは挨拶しておいた方がいいかな?なんて思っていたら矢が飛んで来た。ってちょっとお!?なんで!?もちろん簡単に避けるが。
「うそ!?」
声がした方を向くと驚いている女性がいた。暗いため、顔や服装などは全くわからないが。使うか【夜目】
途端に視界が明るくなる。いや、暗いというのはわかるが見えるようになった。ほんと便利だよな【夜目】
なんて思ってたらさらに矢が飛んで来た。今度はかなり勢いがあり、さらには三本連続だった。
一本目。肩を狙って来ていたので半身になって躱す。2本目は剣を一振りしてガードし、三本目は手でつかんだ。
ん?何だこれ。
矢をつかんで、見たところ、なんか変な文字が書かれておりそこから何かひものようなものが出てきた。これは、魔力に似ている。それが僕の体にまとわりつき拘束した。見たことのない魔法だ。そもそも魔法なのか?これは。
「ふう。矢を掴まれた時には驚きましたけど。なんとかなりました」
そう言って女が屋根から飛び降り近づいてくる。
「さて、あなたは何者ですか?」
少し驚いた。何が驚いたって美少女で巨乳だということもある。それもある、だが服装がこうコスプレみたいな格好してるんだ。
「それはこっちのセリフなんですけど。気がついたらこんなところにいるし、急に矢が飛んでくるしビックリしましたよ」
とりあえず冷静に振る舞う。
「それについては謝ります。ですが質問に答えてください。その後、私についても話しましょう」
「人に名乗らせる時は自分からだと思うんですけど」
「…わかりました。私の名前は暁 茜言います」
「僕の名前は天野タツキ。よろしく」
「それであなたは何者なのですか?」
「………」
なんて説明しよう?本当のことを言えるはずもないし。いや、こんなコスプレみたいなことをしているんだから信じてもらえるか?それとも適当な嘘をついてしまおうか。
「なるほど。話す気は無いと」
僕が黙っていたのを良からぬふうに捉えてしまったのだろうか。
茜は懐から液体の入った瓶を取り出した。
「ま、まさかこれを使う日が来るなんて思いませんでした…!」
お、おいなんだそれは。見るからに危ないだろう、変な色してるもん!
茜は瓶のふたを開けていっきに口に含んだ。ってお前が使うのかよ。てっきり毒かと思った。毒だったら毒無効のスキルがあるから問題なかったんだけど。
パリン!と音がした。どうやらカラになった瓶を落としてしまったようだ。
「ど、どうした?大丈夫か?」
心配になって声をかける。それでも動かないので、ぴょんぴょんと飛んで近くに行く。しょうがないだろう縛られてるんだから。
茜のすぐ側に来ると茜が急に振り返り、両手で僕の顔を掴んだ。しまった罠か!そう気がつき、急いで拘束を外そうとする。
「ん!」
「んむう!?」
しかしそれは叶わなかった。なんと茜が口づけをしてきた。パニックになる僕。整った顔が僕のすぐ目の前にあり、口には柔らかい感触。
しかも、それだけでは終わらず、何かが僕の口の中に入ってきた。これは茜の舌!?え?なんで急に!?出会って5分と経たないうちにディープキスされるなんて生まれてな初めてだ。
頭が混乱する。おい【混乱無効】仕事してください。そんなことを思っていると口に液体が入ってきた。思わず飲み込んでしまう。
やばい!と思った時にはもう遅かった。茜が離れて行く。ほっとする反面、ほんの少し名残惜しい。
「な、何を?」
「あ、あなたに惚れ薬を飲ませました。これで初めて見た人を好きになってしまいます。そ、それで私のことをすすす、好きになってもらい、情報を喋ってもらいます!」
ほ、惚れ薬ぃ?そんなものがあるのか?しかし、茜の顔を見ると真剣そのものだった。…顔は真っ赤だけど。
「……」
「……」
……え、と、どうしよう。一向に何も起きないんだけど。【毒無効】が働いたのかな?
ふむ、ひとまずかかったフリをして、少しでも相手の情報を盗もう。
「ナ、ナンテウツクシイヒトナンダー。け、ケッコンシテクダサイ」
しまったー!棒読みだ!こんなに演技の才能がないのか!何かないか!?スキル!【交渉術】【偽装】違う!【演技術】なんてスキル、邪神討伐に使うわけないだろう!
「ほ、本当に効いてる。!や、やったー!」
マジで!?これでいけるのか!?天然かこの子!?




