錬金釜
「助手君、これを見てくれないか?」
「博士、何ですかこれは?」
「見て分からないかね?新規格の炉心計画図だ」
「炉心…ですか?」
「そう、今の原子炉や太陽炉ではどうしても限界があるからな。この炉が完成すれば、相当なエネルギー量を賄えるはずだ」
「あの、それは素晴らしいと思うのですが…なぜ、2ヶ所、それも北極と南極の極地なんですか?もっとましな建設地はないんですか!?氷が融解したりしたら、大惨事どころじゃないですよ!!!しかも何ですかこの規模は!?でかっ。でかすぎですよ!装置の大きさだけで東京都ぐらいはあるじゃないですか!」
「むぅ、これでもだいぶ絞ったのだがな………。もう少し検討してみるかな」
「あの、建設地に関しては何も無いのですか?」
「ああ、そこに関しては他に候補地が無い。と言うか、そこにしか建設できない…が正直なところだな」
「できないって………あの、博士は一体何を作るつもりで?」
「ほら、あるだろうSF小説とかに。『重力炉』ってやつが。それを利用した、分子構造を自由自在に組み替え可能な錬金釜を建ててみようと思う」
「れ、錬金釜───ですか?ちょ、ちょっと待って下さい!という事は、博士はすでに『重力炉』は完成させているという事ですか!?」
「何を言っている、当然のことだろう?これ位の事、理論上だけでも完成させなければ実用試験に耐えられないではないか」
「はやっ───ぁ、いやいやいや博士、まずは予算を通すだけでも難しいですよ。この規模になると。まず不可能に近いのではないかと。それに、何故この建設地でなければいけないのですか?ソコさえ何とかなるのであれば少しは費用を抑えられるかとも思うのですが………」
「ああ、ソコはさっきも述べたように動かせない。言っただろう、『重力炉』だと。下手な場所に作って万が一が起こった場合、地球の自転に影響が生じ、最悪、人類絶滅だ」
「な、なんてものを考えるんですか!あんたは!!!」
「ぬを───み、耳が、耳がキーンとしたぞ助手君」
「はぁぁぁぁぁ、もう良いです。博士に何を言っても無駄なことはこの数年で理解したつもりですから」
「何気に失礼なことをサラッと言ってくれるな助手君。私だって人の話に耳を傾けることはあるぞ。ただ、それが検討に値するかどうかと言う話だ。それにこれが完成すれば様々な資源問題もサラッと解決だ」
「分かりました、とりあえず今は危険度を無視して話を進めます。続けてください」
「うむ、重要なのは『炉心』ではない。それを利用した周りの装置、分子構造の組み換えを可能にした錬金釜だ」
「あ、そういえばそんな事も言ってましたね」
「分子構造の操作によって大部分の資源は作成可能になる。さらに、加重操作を組み合わせる事で、石油やダイヤのような希少資源も、だ」
「おお、確かにそれは凄いですね」
「ただ、一つだけ問題があってな…」
「一つだけではないと思いますがとりあえず伺いましょう」
「君も知ってのとおり希少資源の大半は加圧による構造変化の結果、多重層構造になっている。つまり…」
「あ………」
「そう、1t近い物資が圧縮された結果、g単位の何かしか残っていない、そんな事もあるという事だ」
「うわぁ。穴ぼこだらけの地表しかイメージできないですね。と、いうか質量保存の法則とかは何処いったんですか?」
「大部分は熱量に変換されるはずだから、それを利用した発電システムに回して施設の自己運営に当てようかと考えている」
「なるほど………。ところで博士、地球の自転に関しての危惧は解ったんですが他の天体への影響に関してはどうするんですか?」
「………………」
「忘れてたんですね?忘れていたんですね、博士?あ、ちょっと待ちなさい!」
そして誰もいなくなった どっとはらい
博士のターン!!!
失敗!? 助手に100のダメージ!
天才と馬鹿は何とやら………実際こんなもんです。本当に。




