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突然の雨

峠を2つ越え、ダンジョン都市手前の伯爵領都に向かう途中、大河を渡る前に大雨にぶち当たった。

急いで荷台に雨避けの皮シートを張り、雨具を装着する。


「村までたどり着くのは無理だろう!たしかすぐそこに野営所があったはずだから!今晩はそこで泊まるんだろう!!」

雨粒が当たらないように深くフードを被ったオレインが言う。


「雨で、前が見えない!!前の馬車のケツに着いていくしか無いね!」

雨音に負けないように声を張り上げる。



道中で野生の狼の群れに一度襲われたが、護衛団パーティー『鉄血』が難なく蹴散らした。

「多少は働かないとな。仕事があった方が、雇い主も依頼した甲斐があるってもんだろ?」

そう言ってニッダは笑った。


最後尾の俺に仕事は回って来なかった、前の馬車の影で戦闘もロクに見ていない。

閉鎖的なダンジョンとは違い、四方を警戒しなければならない難しさはあるが、

普段から隊商の護衛に慣れている彼らは、馬車の高さなりを利用した防衛戦に慣れているそうだ。


「ダンジョンと違って、野生の獣は無駄な狩りはしないからな。半分も蹴散らせば分が悪いと思って引くもんさ」

ニッダとオレインが言うには、本当に怖いのは人間らしい。

しかし王国の治世は安定傾向にあり、盗賊・野盗の類も稀だそうだ。


「付与魔術が浸透してきたからな、、昔は何が何でも術を秘匿するってんで、使い手が育たなかったんだよ」

昨今の国の施策で基本の術を無料で学べる制度や、徒弟制への国の補助、街での仕事の専門化や委託が浸透した結果、

街での術者の暮らしが安定し、街が安定すれば地方の村も安定し、

結果野盗に身を落とす人間が減ったそうだ。


「ダンジョン探索がやりやすくなったってのもあるけどな(笑)付与魔術さまさまって奴だ」

ダンジョン都市ではダンジョン冒険者向けに、付与魔術のサービスも行われているらしい。

防具や荷物類への『軽量化』に、『硬化』。

武器への『鋭利』をギルドが冒険者向けに補助をする事で受けやすくなり、

また、教会から『治癒』や『快癒』を持つ人間が現場に派遣される事で、死亡者を減らす事に成功したらしい。



「すごいねー、色々あるんだねー」

話し上手なニッダが色々と教えてくれるのをニコニコと聞いていたのだが、

急な大雨で、話しは中途半端にそこまでで終わってしまった。


※※


野営所で馬車で囲いを作り、中央を覆うように皮シートを張り直す。

「全部覆うのは無理か、、」

『撥水』が効いた皮シートに雨粒が当たるのを見ながら呟く。

地面に円を描くように『乾燥』を掛けた長縄を張ったので、円を起点に地面が徐々に乾いて来ている。


「アオ、火をくれ」

円の中央で焚き火台を組んでいたオレインが俺を呼ぶ。

細い薪の一本を持ち、『着火』を付与して焚き火台に突き刺すと、しばらくして組まれた薪から小さな火が起こる。


(煙が溜まってしまうな、、)

煙で燻されるのが嫌なので、自分の荷物から頭のサイズの台に据え付けられた風車を取り出す。

「?」

不思議そうに見やる隊商の面々。

俺は風車の羽根に『回転』と『調湿』を付与して風車を回すと、

キャンプ内に溜まりそうになっていた煙が、風車により巻き起こった風に追いやられる。


「へぇー、、『回転』かあ」

護衛パーティーのリーダーのディーダが話し掛けてくる。

ディーダは隊商の前面に居たので、ディーダとは中々喋る機会がなかった。


「『回転』を知ってるんですか?」

お手製の風車に驚かないディーダを不思議に思い、訪ねる。

「王都には″トラム″があるね、地面に設置した軌道って、鉄のレールの上を『回転』を付与した大型の箱で人を運ぶんだ」

直進が主らしいが、広い王都の交通ではメイン道路を列車が走っているそうだ。


「″トラム″ですかぁ、どんなだろう?見たいなあ」

元の世界に似ているのだろうか、それとも全く違うものなのだろうか。

会話の説明だけでは判別出来ない、異世界技術が見られる事に胸が躍るのを感じた。


※※


「しかし、えらい気楽に術を使うもんだな。付与魔術ってのは、普通は『鋭利』とか、荒事に便利な術を使うもんだと思ってたぞ」

木箱に腰を下ろし、焚き火に当たっていたハドメが言う。


「田舎の村ではそんな危なっかしい術は使い所が無かったんですよ」

『鋭利』がどんな字だったか、すぐに思い出せないくらいに使い所が無かったのだ。


「だが、使える事は使えるんだ?」

「まあ、使えますね、、」

護衛団の面々が顔を見合わせる。

「?」

なんだろう、みんな何か言いたい事があるのだろうか。

それとも俺は変な事を言ったのか?


「ふーん、、俺は魔術には詳しく無いが、こんな便利なもんだとは知らなかったな。・・ボウズ、ウチの隊商の専属護衛にならんか?」

ニッダが小さく舌打ちし、ディーダが隠した手でニッダを止める。


「はぁ、、でもハドメさんの所は隊商でしょ?旅も楽しいけど、街を見てみたいんですよねぇ、、後、ダンジョンも」

旅は楽しいのだが、一日のほとんどが馬車上に拘束されるというのは、結構にキツいのだ。


「ハドメさーん、ちょっと見て欲しいんですけどぉ」

ソフィアがハドメを呼び、俺は焚き火台の前で早めの晩飯の準備に取り掛かる。

(河を渡れば領都はすぐだって言うし、保存食は使い切った方が良いだろうか、、)

そんな事を考えながら食料品を詰めた木箱を物色して、メニューを考える。

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