翔!
「成る程、、『共鳴』ですか」
ご長男であるエドヴァルド様が耳飾りを検分する。
「どうもずっと着けている事で慣れるようなの、人にもよるみたいだけど、酷い人は思考が垂れ流しになるわね」
そう言って奥方様は俺の方をチラりと見た。
「相手の持つ警戒心か、心の壁の問題かもな」
エルヴァナさんが言う。
残念ながら『共鳴』しても、俺にはエルヴァナさんの思考は読み取れ無かったのだ。
「条件付きとは言え、中々に危険な代物ですね」
「ねぇ?私も困ってしまって」
奥方様は『こまっちゃうわあ』のポーズをされる。
ラキネル、お前は真似しなくて良いから。
※※
「そう言えば出迎えのお礼を言っていませんでしたね。馬車と替え馬まで用意して頂いて、ありがとうございますお母様」
「いいのよ、ちょうど新型の馬車の試験も兼ねていたし。乗り心地はどうだったの?」
「新型?いえ、乗り心地は大変良く。いや、何か変でしたよ?アレは何で、、」
エドヴァルド様が「はっ!?」と俺を見る。
「空調完備の超リラックスシート付き、軽量化&サスペンションの特別仕様の新型ですね」
「っ、、!そうか、大変良い乗り心地だったよ」
「お褒めいただき光栄です」
「固いわねぇ、、アオ、もう少し普通で良いのよ?」
「そうですか?しかし次期領主様であられますし、、」
「いや、、楽にしてくれて構わないよ。色々と聞きたい事もあるし」
聞きたい事?馴れ初めとか?
「違うわよ、アオ」
※※
「そうか、色々と手を出しているんだね。で、今は馬車を?」
「馬車と気球ですね」
「?」
「お兄様、街中でご覧になられませんでしたか?」
「あー、、あの、球?」
エドヴァルド様が中空に手で戸惑いながら円を描くと、
クラリッサ様が『コクコク』と頷く。
気球は大変だったのだ、『温』『浮遊』『飛翔』『軽量化』で何とか浮き上がってくれた。
特に『翔』の漢字を思い出すのに苦労した。
「あれは、アレは何をしてたんだ?」
「浮くのですよ、お兄様」
「浮いてどうするのだ?」
「?」
※※
クラリッサお嬢様は気球の素晴らしさを懇々と説くのだが、エドヴァルド様には伝わらないらしい。
『じゃあ実際に試してみよう!』と奥方様からのご提案があり、庭に出て試験用の小型気球に乗って貰う事にした。
「こちらが順番に上昇、高度の維持、下降ですね。全てを切ってしまうと落下しますのでご注意を」
「いやいやいや、何をシレっと怖い事を言ってるの??何で僕が飛ぶ事になってるのさ!」
「?試験用なので一人しか乗れないのですよ」
「違うでしょ!僕が知りたいのは『気球』が何をするものか知りたいのであって!僕が飛ぶ必要なんて無いじゃない!」
「エドヴァルド、見苦しいわよ。さっさといってらっしゃいな」
「お兄様!頑張って!」
エドヴァルド様最後まで抵抗を諦めないおつもりらしい、流石次期領主様であられる。
「しかたありませんね、、こちらのラキネルを付けましょう」




