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湖畔の館

ダークエルフが島を賜ったのは100年も前だと言う。

長い戦争の中で国の暗部として活躍・暗躍した我々には、平和になった王国では居場所が無かった。


島を賜ったのは厄介払いだったのだろう。

そして私が産まれ、島で育てられ技を磨いた。


王都に呼ばれたのは役目があったからだが、それもすぐに済んだ。

また島に帰るのか迷っていた所、何かと気に掛けていてくれていた伯爵から『自領の領都へ遊びに来ないか?』と誘われたのだ。


どうせ行き先なんか無かったし目立つ風体で、行く先々で珍獣扱いの奇異な目で見られるのも気に入らなかったので、

狩猟森を自由にして良いならと伯爵領に移り住んだのだ。


館に妙な若者が暮らし始めたのを知ったのは大分と遅かった。

珍しい飯が献立にのり始め、誰のレシピだとメイド達が話題にしていたのを耳にしたのだ。


(そう、耳)

『素敵な耳だったんで』顔を真っ赤にして慌てたように狼狽えるこの若者を思い出すと、今でも笑いがこみ上げてくる。


『何だその口説き文句は』そんな事を思ったが、余りにも突然の言葉に何も言う事が出来無かった。

忌まわしき闇の種族にそんなクチを聞く者が居るなんて思いもしなかった。

恐れられ、避けられる者なのに。


軽く吐かれた嘘か何かかと、試しに肌を近づける度にこの若者は赤面し、呼吸を荒くする。

必死に手首の数珠に手を当て、平静を取り戻そうとする。


歳に似合わない普段の泰然とした振る舞いと、その差が面白くてつい余計なちょっかいを出したくなる。

今も2人で馬に乗っているが、馬の揺れに合わせてからだを寄せる度に息を飲み込む音がする。


(コイツはダークエルフの耳の良さを分かって無いんだろうなぁ)

そんな事を思いながら、目の前にある背中にからだを預けると、また彼が息を飲む音がした。


※※


「先生、、せんせい」

「んぁ?」

リズミカルな馬の揺れに後ろに乗るエルヴァナさんが寝落ちしたように思えたので、急いで『固着』して彼女が馬から落ちないように処置をしたが、

いい加減目的地に着きそうなので起きてもらう事にした。


「スマン、、寝ていた」

「いいんですよ、ほらっ、あそこでしょ?」

街道から外れた先に大き目の湖が広がっていた。


「おー、あれだ、伯爵様の保養地だな」

湖のほとりに少し小さ目(それでも大きいが)の館が建ち、湖畔を見下ろせる作りになっている。

館には常駐の管理者と使用人、そして警備の者が居るらしい。


「凄いですねぇ、、まるで絵に描いたようなってこの事ですね」

(そんな言い回しがあったかな?)

とアオの言葉を不思議に思うが、成る程良い言い回しだなと思った。


「館の脇にハーブ園があるそうだ、荷を下ろしたら行ってみよう」

エルヴァナさんに『ハーブソルト』の話をしたら、とても食いついて来て、

エルヴァナさんはすぐに奥様に保養地のハーブを分けて貰う約束を取り付けたのだ。


「先触れは既に飛ばしてある、急ぐ事は無いからゆっくり行こう」

『軽量化』に『快癒』まで付与した馬は休憩も無しに俺達を運んでくれた。

休む必要は無さそうだけど、せっかくなのだ馬様にも良い気分になって貰おう。

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