三男
「どうだ?やっぱり違うものか?」
「ぶるる」
湖のほとりで鞍を外した馬に、湖の水と『出水』で出した水の飲み比べをしてもらったのだが、
答えは『ぶるる』らしい。
どっちだ?
湖面に昼の日差しが反射して少し眩しい。
山から降りてくる清流と、気候が寒いせいで水が澄んでいるのだろう。
(キャンプしても楽しそうだなあ)
実際に湖畔で火なんか焚いたら、館の警備が飛んで来るんだろうけども。
旅をしていたのはついこの間の事なのに、随分と変わってしまった今の生活を思う。
「アオ、出来たぞ」
後ろの平らになっている所で簡易コンロで湯を沸かしていたエルヴァナさんが俺を呼ぶ。
キャンプ用付与魔術の見せ所と思っていたのだが、エルヴァナさんがたまにはやらせろとお茶の準備をかってくれたのだ。
「すいません、、何か嬉しいですね、人にしてもらうのって」
そう言ってエルヴァナさんの隣に座ると、エルヴァナさんが少し微笑んでみせた。
※※
「コレ、良いな」
エルヴァナさんが鍋に固形スープの元を溶かしたものを味見しながら言う。
村で雑多な野菜クズを煮出したものでは無く、料理長と一緒に作り直したものだ。
コンソメの作り方を伝えたついでに作って貰った。
「塩気は人によって好みがあるから、やっぱり別に塩をした方が良いですね」
「ポタージュって言ったか?アレも良かった」
そう言ってエルヴァナさんがスープを注いだカップを渡してくれる。
「うーん、美味い。流石本職の料理人ですよね」
「私の温め方が良かったのかもしれないだろ?」
「美人に注いで貰ったスープは格別ですからねえ」
「、、、」
馬が湖畔の草をはみだした、あれの違いも後で聞いてみよう。
※※
「そもそも馬ってのは意思疎通が出来るものだろ?」
「そう聞きますね、でもせっかくの魔術なんだから何か違いがあるのかもって思って」
俺がたびたび、馬に質問を繰り返すのを見かねてエルヴァナさんが言う。
馬が顔を寄せて「ぶるる」と鳴くが、やはり何を言ってるのか分から無い。
「ラキネルはどうなんだ?あいつとはカードでやり取りしてるんだろ?」
「そうですね、彼は三男らしいです」
「三男?」
「3人目の子供って意味ですね。俺と一緒でした」
「、、そうか」




