資料庫 ゴースト
今日も今日とて、朝から資料庫で独り作業を進める。
『灯』に照らされた室内で、書棚の中からゴッソリと資料本を抜き出して、一つずつ『保存』を掛けていく。
(おっ、これは領内の収穫物の推移か)
時々興味を引く資料が目に入るが、サボっていると思われたくも無いので、軽くパラパラとめくるだけに留める。
「治水がしっかりとしてるのか、収穫物はずっと安定か、やや上昇なのか、、」
資料を信じるのならば、伯爵領はかなり上手くまわしているのだろう。
「お疲れ様です、、」
不意に声を掛けられて、焦って振り向く。
扉の傍にメイドが立っていた。
「ルーナさん、、驚かさないで下さいよ」
不満気に言うが、ルーナさんはにこやかに笑っているばかりだ。
「お仕事、ご苦労様です♡」
ルーナさんは俺付きのメイドさんだそうだ。
(何故使用人にメイドが付くのか、そういうものなのか?)
もしかしたら資料庫で悪さをしたり、サボったりしていないかを見張るための役割なのかもしれないと思い直して、姿勢を正す。
「?、、アオ様、お茶です」
「あ、ありがとうございます、イタダキマス、、」
意識しだすとどうもおかしな応答になってしまい、ルーナさんはそんな俺を見てクスクスと笑っている。
気恥ずかしくなってしまい、俺はお茶を飲む事で誤魔化した。
※※
「へー、領都までの旅ってそんな感じでしたのねー」
「行商が言うには大分と楽だったそうですけどね。荷物も軽いし、馬も機嫌が良くて」
ルーナさんにこの間までの旅の話をねだられて、茶請け代わりに話をした。
「大変、、なのかは分かりませんが、夜中の番くらいでしょうかね。そんなに多くは無かったんですけど、、」
2人旅なので、夜中の番も2人で交代で行うしか無かったのだ。
基本的に村々を渡り歩いたが、どうしても野営しなければならない日はあった。
「こう、、長い縄に鳴子代わりに板を付けて、、で、『警報』の付与魔術をしたんですけど」
夜番に使えるだろうと、即席の警報装置を村に居る間に考えていたのだ。
「でも、いざ使ってみたら何が悪かったのか、何も無いのに鳴子が鳴り出して、森中に警報音が鳴り響いたもんで寝ていた行商は怒るし、散々でしたよ」
トホホとポーズを取りながら旅の思い出を語ると、ルーナさんが難しい顔で口元に手をやっている。
「あれ?ルーナさん?」
「、、あの、それってもしかして、霊的なものに警報が反応したんじゃないですかね?」
確かに周囲には何も見えなかった、居なかったが、それが霊なら、、?
「えーっと、霊って居るんですか?」
「、、居ないんですか?」
見た事が無いものを、居るとは言えないと思うのだけど。
ルーナさんが書棚の中から一冊の本を取り出す。
「魔物全集?」
「はい、大陸に伝わる魔物を記録してまとめた本なんです。、、で、ここ、これ」
☓◯さんが慣れた様子でページをめくると、そこにはゴーストの絵が書かれていた。
「あー、、こんなん居るんだぁ」
「見える人には見えるそうですよ」
俺は初めて見る魔物全集から目が離せなかった。




