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畫界アルカディア  作者: 三島 唯奈
第11章 黄の使徒
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第6話 重心を暴く

 レグルスが繰り出す重い斬撃を、ロアは短剣で受け流し続けていた。

 ロアはレグルスが長剣を引き戻す隙を狙い、何度もその懐へ踏み込もうとする。ロアが一歩踏み込めば、レグルスは的確に半歩下がる。さらに踏み込もうとするロアに、すぐに長剣の切っ先が向けられた。


 私は少し離れた場所で、ガラスペンを構え直した。

 レグルス自身の加護を砕くには、セレンの解析が絶対に欠かせない。しかし、ロアがレグルスの近くで剣を受け流しているため、緑を撃てる角度が見つからない。下手に緑を撃ち込めば、ロアの動きを制限してしまう危険すらある。


「ロア、少し距離をとれる!?」

「ああ。だが、俺が下がれば、あいつはお前を狙ってくるぞ!」

「だったら、私が横へ回って注意を引きます! レグルスが私を警戒している間に、セレンが近づけるかもしれません!」


 セレンが私の隣から一歩前へ出る。


「やってみよう。でもユイナ、腕を怪我してるんだから、無理はしないでね」

「分かりました!」


 私はうなずき、剣を交えている二人の右側へ回り込むように走った。

 レグルスはロアの短剣を長剣でいなしながら、ちらりとこちらを見る。


 私は走りながら、レグルスの足元へ緑を放った。

 レグルスは後ろへ下がって緑をかわすと、さらに横へ移動し、ロアを挟んで私の反対側へ回り込んだ。これでは、レグルスを狙おうにもロアが邪魔になってしまう。


 ロアはレグルスの移動に合わせて位置を変え、再び距離を詰める。

 レグルスはロアに向けて剣を振り、剣を引き戻す途中で私の方へ身体を向けた。

 

 その隙に、セレンがレグルスとの距離を詰める。

 しかし、レグルスはセレンの接近に気づき、そちらへ身体を向けた。


「セレン、危ない!」


 レグルスはロアの短剣を長剣で弾き、そのままセレンに向けて横薙ぎに剣を振るう。セレンはとっさに後ろへ跳んだが、長剣の切っ先が顔のすぐ前を通り過ぎた。

 踏み込ませまいと、私はレグルスの足元へ立て続けに緑を撃ち込む。


 レグルスが足を止めて長剣を引き戻した瞬間、ロアが踏み込み、喉元へ短剣を突き出した。しかし、レグルスは上体を反らし、ロアの短剣をかわした。レグルスは上体を戻しながら、ロアへ剣を斜めに振り下ろす。

 ロアは短剣で長剣を受け流したが、斬撃の勢いを殺しきれなかった。そのまま数歩後退し、レグルスとの距離が再び開く。


「セレン、怪我はありませんか!?」

「問題ない。……もっと近くで調べたいんだが、さすがに一筋縄じゃいかないね」


 セレンは長剣を避けて後退したものの、まだレグルスに近づく機会をうかがっていた。私が緑でレグルスを牽制する間、セレンは二人の攻防を見ながら、再び少しずつ距離を詰めていく。

 レグルスはロアの短剣をいなしながら、セレンが近づこうとするたびに長剣を振り、その接近を阻んだ。


「セレン、今の位置からじゃ駄目なのか?」


 ロアは身を引いて、レグルスの長剣をかわした。


「まだ分からない。もう少しだけ近づきたい」

「なら、次にあいつが俺を斬りに来たタイミングに合わせろ。剣を引き戻すまでは、お前を狙いにくいはずだ」

「分かった。でも、重心が見つかったらすぐに下がるよ」


 ロアが短剣を低く構え直す。今度は自ら間合いを詰めず、レグルスが動くのを待っている。


 レグルスが一歩、前へ出た。


 長剣が振り下ろされる。ロアは半身になって斬撃をかわしながら、短剣で長剣の軌道を外側へ逸らした。長剣がロアの身体の脇を通り過ぎ、レグルスの懐に踏み込める隙ができた。


「今だ!」


 ロアが踏み込む。

 その動きに合わせ、セレンも前へ出る。


 レグルスはロアの接近を防ごうと長剣を引き戻したが、そのときにはセレンがすぐ近くまで来ていた。

 セレンはレグルスを覆う黄の加護を解析し、重心を探る。

 レグルスは接近したセレンに気づき、すぐに長剣をセレンの方へ向けた。


「セレン、下がれ!」


 ロアが叫ぶ。


 私はセレンへの攻撃を阻もうと、レグルスの足元へ緑を撃った。

 レグルスは横へ動いて緑をかわす。レグルスがセレンへ長剣を振ったが、ロアが短剣で受け流し、その間にセレンは後ろへ退いた。


挿絵(By みてみん)


「見つけたよ!」


 セレンが声を上げた。


「左胸の上の方だ! マントの留め具のすぐ下に重心がある!」

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