第6話 重心を暴く
レグルスが繰り出す重い斬撃を、ロアは短剣で受け流し続けていた。
ロアはレグルスが長剣を引き戻す隙を狙い、何度もその懐へ踏み込もうとする。ロアが一歩踏み込めば、レグルスは的確に半歩下がる。さらに踏み込もうとするロアに、すぐに長剣の切っ先が向けられた。
私は少し離れた場所で、ガラスペンを構え直した。
レグルス自身の加護を砕くには、セレンの解析が絶対に欠かせない。しかし、ロアがレグルスの近くで剣を受け流しているため、緑を撃てる角度が見つからない。下手に緑を撃ち込めば、ロアの動きを制限してしまう危険すらある。
「ロア、少し距離をとれる!?」
「ああ。だが、俺が下がれば、あいつはお前を狙ってくるぞ!」
「だったら、私が横へ回って注意を引きます! レグルスが私を警戒している間に、セレンが近づけるかもしれません!」
セレンが私の隣から一歩前へ出る。
「やってみよう。でもユイナ、腕を怪我してるんだから、無理はしないでね」
「分かりました!」
私はうなずき、剣を交えている二人の右側へ回り込むように走った。
レグルスはロアの短剣を長剣でいなしながら、ちらりとこちらを見る。
私は走りながら、レグルスの足元へ緑を放った。
レグルスは後ろへ下がって緑をかわすと、さらに横へ移動し、ロアを挟んで私の反対側へ回り込んだ。これでは、レグルスを狙おうにもロアが邪魔になってしまう。
ロアはレグルスの移動に合わせて位置を変え、再び距離を詰める。
レグルスはロアに向けて剣を振り、剣を引き戻す途中で私の方へ身体を向けた。
その隙に、セレンがレグルスとの距離を詰める。
しかし、レグルスはセレンの接近に気づき、そちらへ身体を向けた。
「セレン、危ない!」
レグルスはロアの短剣を長剣で弾き、そのままセレンに向けて横薙ぎに剣を振るう。セレンはとっさに後ろへ跳んだが、長剣の切っ先が顔のすぐ前を通り過ぎた。
踏み込ませまいと、私はレグルスの足元へ立て続けに緑を撃ち込む。
レグルスが足を止めて長剣を引き戻した瞬間、ロアが踏み込み、喉元へ短剣を突き出した。しかし、レグルスは上体を反らし、ロアの短剣をかわした。レグルスは上体を戻しながら、ロアへ剣を斜めに振り下ろす。
ロアは短剣で長剣を受け流したが、斬撃の勢いを殺しきれなかった。そのまま数歩後退し、レグルスとの距離が再び開く。
「セレン、怪我はありませんか!?」
「問題ない。……もっと近くで調べたいんだが、さすがに一筋縄じゃいかないね」
セレンは長剣を避けて後退したものの、まだレグルスに近づく機会をうかがっていた。私が緑でレグルスを牽制する間、セレンは二人の攻防を見ながら、再び少しずつ距離を詰めていく。
レグルスはロアの短剣をいなしながら、セレンが近づこうとするたびに長剣を振り、その接近を阻んだ。
「セレン、今の位置からじゃ駄目なのか?」
ロアは身を引いて、レグルスの長剣をかわした。
「まだ分からない。もう少しだけ近づきたい」
「なら、次にあいつが俺を斬りに来たタイミングに合わせろ。剣を引き戻すまでは、お前を狙いにくいはずだ」
「分かった。でも、重心が見つかったらすぐに下がるよ」
ロアが短剣を低く構え直す。今度は自ら間合いを詰めず、レグルスが動くのを待っている。
レグルスが一歩、前へ出た。
長剣が振り下ろされる。ロアは半身になって斬撃をかわしながら、短剣で長剣の軌道を外側へ逸らした。長剣がロアの身体の脇を通り過ぎ、レグルスの懐に踏み込める隙ができた。
「今だ!」
ロアが踏み込む。
その動きに合わせ、セレンも前へ出る。
レグルスはロアの接近を防ごうと長剣を引き戻したが、そのときにはセレンがすぐ近くまで来ていた。
セレンはレグルスを覆う黄の加護を解析し、重心を探る。
レグルスは接近したセレンに気づき、すぐに長剣をセレンの方へ向けた。
「セレン、下がれ!」
ロアが叫ぶ。
私はセレンへの攻撃を阻もうと、レグルスの足元へ緑を撃った。
レグルスは横へ動いて緑をかわす。レグルスがセレンへ長剣を振ったが、ロアが短剣で受け流し、その間にセレンは後ろへ退いた。
「見つけたよ!」
セレンが声を上げた。
「左胸の上の方だ! マントの留め具のすぐ下に重心がある!」




