↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
畫界アルカディア  作者: 三島 唯奈
第8章 緑の侵食
65/70

第3話 迷いの森

北門に着いたとき、空はまだ薄暗かった。

門の脇には、すでにリリカがいた。大きな鞄に弓と矢筒を付け、腰にはナイフを下げている。手には長い杖を持っていた。


「ちゃんと揃えてきた?」

「言われたものは一通り」


セレンが答えると、リリカは三人の荷物を順に確かめる。


「雨具、テント、火打石、食料……うん、揃ってるね」


確認を終えると、四人で北門を出た。


門の外には畑が広がり、その間を一本の道が北へ伸びている。道の先には大森林があり、灰色の木々が遠くまで続いていた。


昨日は丘の上から大森林を見渡すことができたが、世界樹そのものは見えなかった。今いる場所から見えるのは手前の木々だけで、何重にも重なった木々の向こうまでは見通せない。


しばらく歩いたところで、ロアがリリカの大きな鞄に目をやった。


「ずいぶん持ってきてるんだな」

「うん。でも半分くらいは仕事道具だよ。食料はそんなに持ってきてない」


「それで足りるのか?」

「獲物を見つければ狩るし、食べられる野草や木の実があれば採るよ。持ってきた食料は、何も取れない日のための分だから」


リリカは森の方を見た。


「森に入ったら、あたしの後ろについてきてね。分かれ道が多いから、遅れないように」


畑を抜けると、道はそのまま大森林の中へ続いていた。

入口付近は幅が広く、地面には荷車の車輪跡も残っている。


しばらくは一本道が続いた。

昼前、道が二つに分かれた。


リリカは右へ進む。

その先では道が三本に分かれ、今度は中央の道を選んだ。その次の分かれ道では左へ進む。


奥へ進むにつれて、道幅も少しずつ狭くなっていった。さらに進むと、荷車が通れそうな道から、人が一人通れる程度の細い道まで、いくつもの道が枝分かれしている。


ロアが後ろを振り返る。


「最初に曲がったところは、もう見えないな」


私も後ろを見た。

ここから見えるのは、さっき通った分かれ道までだ。その先は木々に遮られ、来た道を目でたどることはできない。


次の分かれ道では、木の幹に小さな札がくくりつけてあった。札には、進む方向を示す記号が刻まれている。

リリカは木札を確かめ、右へ曲がった。


「本当は全部の分かれ道に札を付けたいんだけど、数が多くて、まだ手が回ってないところもあるんだよ」


昨日見た地図には、ミレヴァの町から世界樹までの道が一本の線で描かれていた。

その一本の道をたどれば世界樹の近くまで行けるように見えた。


だが実際には、リリカは木札や周囲の様子を確かめながら、分かれ道ごとに進む方向を決めている。ガイドがいなければ本当に迷いそうだ。


セレンが口を開いた。


「エルディンは、どうやってここを通ったんだろうね」

「ガイドを雇ったのかもしれないな」


ロアが答えた。


一年前、左手首に変わった紋様のある男が、ミレヴァの店で世界樹への行き方を尋ねていた。


私たちはリリカの後について、さらに森の奥へ進んだ。


     ◇


三日目の午後。


森へ入ったばかりの頃は荷車も通れるほど広かった道も、ここまで来ると一人ずつ歩くのがやっとだった。

リリカ、私、セレン、ロアの順で進む。


前日の雨で、道はところどころぬかるんでいる。足を取られそうな場所では、道の脇にある木の根や草の生えたところを選んで進む。


疲労もあってか初日ほど速くは歩けない。

昼を過ぎた頃、リリカが立ち止まった。


「待って」


左側の木の根元が、周囲とは違う色になっている。

木の根と、その周りまで緑に侵食されていた。


だが木の上半分と、周囲の地面の大部分は灰色のままだ。


挿絵(By みてみん)


「この辺、前はこんなんじゃなかったよ」

「そうなのか?最後に来たのは?」

「半年くらい前だったかな」


私も緑に侵食された地面を見る。

緑になっているのは、木の根元から数歩離れたところまでだった。


「近づかない方がいいね」


リリカは緑の地面を避けて進んだ。

私たちもその後に続く。


次に見つけた場所では、緑が道にまで広がっていた。

周りの草や、木も緑に侵食されている。


まだ灰色の地面が残っていたため、そこを通って先へ進んだ。

ただ、先へ進むほど、緑に侵食された場所を目にすることが増えていった。


やがてリリカも、緑を見つけるたびに足を止めることはなくなった。

道を選びながら歩き、ときどき立ち止まって、進む先に緑が広がっていないか確かめる。


その日の休憩所が近づいた頃、リリカが再び立ち止まった。

数歩先で、緑が道を遮るように広がっている。


飛んで越えられそうな幅ではない。それに両側にある木や、その周りの地面まで緑になっている。

その先には、また灰色の地面が見える。


リリカは右手の方を見る。

木々の間には、まだ灰色の地面が残っている。


「右に迂回しよう」


リリカは道から外れ、緑になっていない地面を選びながら木々の間を進んだ。

私たちも後を追う。


元の道へ戻ったあとも、緑に侵食された場所が何度かあった。

半年前にはなかった緑の侵食は、休憩所へ向かう道のあちこちに広がっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。