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第7話 「ふわふわ雲のブランケット」

 ホタルくんの光が、ふわりと強く輝きました。

 くらやみぐもは、その光を嫌がるようにゆらりと揺れます。

「……まぶしい」

 低い声が、夜の池に響きました。

 ホタルくんは震えながらも、一歩前へ出ます。

「ぼく……もう泣かない!」

 おしりの光が、ぴかあっと明るくなりました。

 すると周りのホタルたちも、次々に光り始めます。

 池のまわりは、まるで星空みたいにきらきらしました。

 くらやみぐもは、ぐぐぐ、と黒い体を縮めます。

「ちっ……」

 そして、風に溶けるように消えていきました。

 しばらくして、静かな夜が戻ります。

 おもちくんは大きく息を吐きました。

「た、助かったぁ……」

 月うさぎもほっとしたように耳を下げます。

「ホタルくん、がんばったね」

 ホタルくんは照れくさそうに光りました。

「えへへ……」

 するとホタルのおかあさんが、深々と頭を下げます。

「ありがとうございました。あなたたちのおかげです」

「そんなそんな!」

 おもちくんはぶんぶん首を振りました。

「ぼく、ちょっとしか役に立ってないし……」

「そんなことないよ」

 月うさぎが優しく言います。

「おもちくんがいたから、ホタルくんは勇気を出せたんだ」

 そう言われて、おもちくんは少しだけ胸がぽかぽかしました。

 でもそのとき。

 ぴゅううう。

 強い風が吹き抜けたのです。

「ぶるっ!」

 おもちくんは肩をすくめました。

 月を見ると、少し雲が増えてきています。

 夜風も、さっきよりずっと冷たくなっていました。

「さむい……」

 ホタルくんも羽をふるわせます。

 すると月うさぎが空を見上げました。

「ちょうど近くにいるかもしれない」

「誰が?」

「雲の職人さん」

「くもの……しょくにんさん?」

 おもちくんが首をかしげた、そのときです。

 ぽわん。

 空から、小さな白い雲が降りてきました。

「うわっ!」

 雲はふわふわ浮かびながら、おもちくんたちの前で止まります。

 よく見ると、雲の上に誰か乗っていました。

 丸い眼鏡。

   もこもこの帽子。

   長いマフラー。

 白ひげのおじいさんです。

「ふぉっふぉっふぉ」

 おじいさんは笑いながら、雲のふちをぽんぽん叩きました。

「寒そうじゃのう」

「あなたが雲の職人さん?」

 月うさぎが聞くと、おじいさんは得意そうに胸を張ります。

「いかにも! わしは“モークじいさん”!」

 雲が、ぷかぷか揺れました。

「夜空の雲を集めて、特別なものを作っておるんじゃ」

 おもちくんの目がきらりと光ります。

「特別なもの?」

「ほれ」

 モークじいさんは、大きな袋をごそごそ探りました。

 すると――。

 ふわぁっ。

 白くて大きな毛布が広がったのです。

「わああっ!」

 それは、まるで本物の雲みたいでした。

 ふかふかで、やわらかそうで、ほんのり月の光を浴びて輝いています。

「これは“雲のブランケット”じゃ」

 モークじいさんはにっこり笑いました。

「夜風をやさしく包み込む、とっておきの毛布じゃよ」

 おもちくんがそっと触ると――。

「ふわっ!」

 指が沈み込みました。

 まるで綿あめみたいにやわらかいのです。

 しかも、ぽかぽかあたたかい!

「すごーい!」

 ホタルくんも嬉しそうに羽をぱたぱたさせます。

「これなら寒くないね!」

 モークじいさんは、みんなにブランケットをかけてくれました。

 すると、不思議なことが起きました。

 さっきまで冷たかった風が、急に優しく感じたのです。

 草のにおい。

   夜露の香り。

   遠くの星の光。

 全部がふわっと近くなった気がしました。

「どうじゃ?」

 モークじいさんが聞きます。

 おもちくんは目を細めました。

「なんだか……安心する」

「それが雲の力じゃよ」

 モークじいさんは静かに言います。

「雲は、空のさみしさをやわらかく包むんじゃ」

 その言葉に、おもちくんは少しだけ考え込みました。

 夜って、怖いだけじゃない。

 やさしいものも、たくさんあるんだ。

 すると突然、月うさぎの耳がぴくりと動きました。

「……また来る」

「え?」

 次の瞬間。

 空の雲が、ぐにゃりと黒く染まったのです。

 冷たい風が吹き荒れ、池の水がざわざわ揺れます。

 そして、空の上から声が響きました。

 ――見つけた。

 くらやみぐもです。

 しかも今度は、一つではありません。

 黒いもやが、夜空いっぱいに広がっていたのです。

 ホタルたちが悲鳴をあげました。

「きゃああっ!」

 モークじいさんは、ぎゅっと杖を握ります。

「まずいのう……」

 月うさぎがおもちくんの前へ出ました。

「おもちくん、ブランケットを離さないで」

「え?」

「それが、みんなを守る鍵になる」

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