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第10話 「流れ星におねがい」

ハムくん→おもちくん に名前を変更しました

 カチ、カチ、カチ。

 夜の時計台は、 静かに動き始めました。

 止まっていた星たちは夜空を流れ、風もやさしく吹いています。

 ねぼすけフクロウは、大きな羽で汗をふきました。

「ほんとうにありがとう〜!」

 ホタルくんも嬉しそうにくるくる飛び回ります。

「時計、ちゃんと動いてるね!」

 おもちくんはへとへとでしたが、胸の中はぽかぽかしていました。

「よかったぁ……」

 そのときです。

 ゴーン……。

 時計台の鐘が、やさしく鳴りました。

 すると塔のてっぺんが、ふわっと光り始めたのです。

「わあっ!」

 おもちくんは目を丸くしました。

 光は空へ向かってのび、夜空いっぱいに広がっていきます。

 すると――。

 ひゅるるるっ!

 一筋の光が空を横切りました。

「流れ星!」

 ホタルくんが叫びます。

 ひとつだけではありません。

 次々に、星たちが流れ始めたのです。

 青い星。

   金色の星。

   ピンク色の小さな星。

 夜空はきらきら輝き、まるで星の川みたいでした。

「すごい……!」

 おもちくんはうっとり空を見上げます。

 月うさぎは静かに笑いました。

「時計台が元に戻ると、“願いの夜”が始まるんだ」

「願いの夜?」

「流れ星にお願いを届けられる、特別な時間さ」

 モークじいさんもうなずきます。

「一年に一度だけなんじゃよ」

 おもちくんの耳がぴくりと動きました。

「お願い……」

 すると、ねぼすけフクロウが小さな箱を持ってきました。

 箱の中には、透明な星のかけらが入っています。

「これを持ってお願いすると、流れ星に届きやすいんだよぉ」

「へえー!」

 おもちくんはそっと受け取りました。

 星のかけらは、ひんやり冷たくて、でもほんのりあたたかい不思議な感触でした。

「おもちくんは、何をお願いするの?」

 ホタルくんが聞きます。

「うーん……」

 おもちくんは少し考え込みました。

 おもちゃがいっぱいほしい?

 毎日おやつ食べ放題?

 大きなチーズ……じゃなくて、とうもろこし?

 いろんな願いが頭に浮かびます。

 でも、どれもなんだか違う気がしました。

「ほんとうにほしいもの……」

 おもちくんは夜空を見上げます。

 これまでのことを思い出しました。

 泣いていたホタルくん。

   星くずクッキーのあたたかい気持ち。

   こもりうたの森の歌。

   みんなで力を合わせた時計台。

 そのとき。

 ひゅるるっ。

 大きな流れ星が空を横切りました。

 おもちくんは胸に手を当てます。

「ぼく……」

 月うさぎたちは、静かに待っていました。

 おもちくんは小さく息を吸い込みます。

「みんなが、ずっと笑っていられますように」

 その言葉が、夜空へふわりと溶けていきました。

 すると――。

 ぱあっ!

 おもちくんの持っていた星のかけらが、まぶしく光ったのです。

「わあっ!?」

 光は空へ飛び上がり、流れ星の群れへ混ざっていきます。

 そして夜空いっぱいに、金色の光が広がりました。

 風がやさしく吹き、草がさらさら揺れます。

 その瞬間。

 遠くから、たくさんの笑い声が聞こえた気がしました。

 ホタルたちの声。

   森の動物たちの声。

   こもりうたの鳥たちの歌。

 みんなが、うれしそうに笑っているのです。

 月うさぎは目を細めました。

「いいお願いだね」

 おもちくんは少し照れくさくなります。

「えへへ……」

 すると突然。

 ぞわっ。

 冷たい風が吹きました。

 夜空の端に、黒い雲が現れたのです。

 赤い目が、ぎらりと光っています。

「くらやみぐも……!」

 ホタルくんが震えました。

 でも不思議なことに、くらやみぐもは前へ来られません。

 流れ星の光が、夜空を守るみたいに輝いていたからです。

 ――まぶしい……。

 くらやみぐもの声は、どこか弱々しく聞こえました。

 月うさぎは静かに言います。

「願いの光は、くらやみより強いんだ」

 おもちくんはぎゅっと星のかけらを握りました。

 胸の中が、あたたかくなります。

 すると空から、一番大きな流れ星が落ちてきました。

 それはまっすぐ、おもちくんたちの前へ降りてきます。

 ふわり。

 地面に落ちた光は、小さな扉の形になりました。

「……え?」

 おもちくんが目を丸くすると、月うさぎが静かにつぶやきます。

「どうやら、次の扉が開いたみたいだね」

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