表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たくさんのサヨナラと愛に笑おう  作者: 横ヤン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
17/23

閑話 杏子の気持ち ― 友希恵への恩返し ―

 あいつは、昔からそういうやつだった。

 自分のことは、後回し。

 人のことばっかり、気にする。

 それが当たり前みたいに。

 高校のとき。

 私は、クラスに馴染めてなかった。

 理由なんて、大したことじゃない。

 ちょっとしたきっかけ。

 ちょっとしたズレ。

 それだけで、人は簡単に一人になる。

 --昼休み。

 教室の端で、一人で弁当を食べていた。

 周りの笑い声が、やけに遠く感じる。

 ——まあ、いっか。

 そう思っていた。

 強がりじゃなくて、本気で。

 でも。

 「ねえ」

 横から声がした。

 顔を上げると、あいつが立っていた。

 友希恵。

 「ここ、いい?」

 そう言って、返事も待たずに隣に座る。

 「……なんで?」

 思わず聞いた。

 「なんでって?」

 きょとんとした顔。

 「一人で食べてるから」

 その答えが、あまりにも普通で。

 少しだけ、笑ってしまった。

 「変なやつ」

 「よく言われる」

 あいつは、そう言って笑った。

 それが、始まりだった。

 それから、少しずつ。

 あいつは当たり前みたいに隣にいた。

 無理に話しかけるわけでもない。

 でも、離れない。

 その距離が、ちょうどよかった。

 気づいたら、私はまた笑うようになっていた。

 ——助けられた。

 そう思ってる。

 今でも。

 同窓会の日。

 久しぶりに見たあいつは、少しだけ違っていた。

 笑ってるのに。

 ちゃんと笑えてない。

 “何か隠してる”

 そんな違和感を感じた。

 太一に聞いた。

 あいつは、何かを隠すとき、ああいう顔をするから。

 でも、教えてくれなかった。

 そりゃそうだ。

 簡単に言えることじゃない。

 だから、咲夜さんに連絡した。

 最初は教えてくれなかった。

 けど、根気強く聞き、粘り勝ちした。

 隠してることを全部聞いたとき、頭が真っ白になった。

 なんで、あいつが。

 なんで、今。

 そんな言葉ばっかり浮かんで。

 何も整理できなかった。

 でも。

 ——あのときの自分を思い出した。

 私は、あいつに全部聞いたことを伝えた。

 嘘なんかつかない。親友だから

 「バレちゃったか(笑)」

 「なんで言ってくれなかったの?私ら親友じゃん」

 「うーん、気つかって欲しくないし、普通のままでいたかったからかな」

 「バカ……」

 「太一にも言われた」

 「当たり前だ、ふざけんな!」

 「ごめん、でも、限られた時間の中で最後まで自分らしく生きたいから、変に気つかって欲しくないんだ!」

 「でも、私、あんたの病気のこと知らなかったら一生後悔してた。だから、私も最後まで一緒にいるから!」

 「何いってんの?」

 私とあいつは、言い合いになった。

 言いたいことを言い合った。

 病気のこと。

 あいつの気持ち。

 私の気持ち。

 全てぶちまけた。

 電話越しの二人の目から涙が止めどなく流れる。

 少しだけ気持ちが前へ向く。

 「ねえ、週一皆でグループLINE通話しない?」

 そう言ったのは、ほとんど反射だった。

 特別なことじゃなくていい。

 ただ、そこにいるだけでいい。

 あいつがやってくれたことを、そのまま返すだけ。

 最初の通話。

 画面の中に、あいつがいた。

 少しやつれてる。

 でも、ちゃんと笑ってる。

 「久しぶり」

 その声を聞いた瞬間、喉の奥が熱くなる。

 でも、泣かない。

 泣いたら、あいつが困るから。

 「元気そうじゃん」

 わざと軽く言う。

 「まあね」

 あいつも、軽く返す。

 ——変わんないな。

 それが、嬉しかった。

 回数を重ねるごとに、変化は見えた。

 声が弱くなる。

 話す時間が短くなる。

 でも、来る。

 必ず、画面の前に座る。

 それが、あいつだった。

 旅行のとき。

 一緒に見た海。

 「ちゃんと来たよ」

 その一言に、胸がいっぱいになる。

 ——ほんと、無茶するよな。

 でも。

 「いいじゃん」

 思わず言った。

 「最高じゃん」

 その言葉に、あいつが笑う。

 それで、よかった。

 旅行から帰った後、ふと思い出し笑い。

 「……ほんとさ」

 小さく呟く。

 「最後まで、かっこいいじゃん」

 あいつはきっと、最後まであいつのままだ。

 だったら。

 こっちも、ちゃんとやらないと。

 ——あの日の昼休みみたいに。

 ただ、隣にいる。

 それだけでいい。

 それが、あいつへの恩返しだから。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ