第1話:亡霊の再臨、絶望のレジスタンス
「動かないで! それ以上近づいたら……撃つわ!」
引き金にかかった指が震えている。美希の瞳にあるのは、かつての優しさではなく、死線を越えてきた者特有の鋭さと、深い悲しみだった。
「美希……。俺だ、豊だ。信じられないかもしれないが……」
「黙れ! 豊兄さんは三年前、OMEGAの要塞を叩くために自爆して死んだわ! あなたは……組織が送り込んできた『偽物』ね!?」
その時、瓦礫の陰から数人の男たちが現れた。ボロボロのプロテクターを身に纏い、改造された銃を構える男たち――彼らはこの世界のレジスタンス。そして、その中心にいたのは、左目に深い傷を負った、かつての親友だった。
「……秋月、なのか?」
豊がその名を呼んだ瞬間、男――秋月玄が、嘲笑うようにナイフを抜いた。
「俺の名を気安く呼ぶな、サイボーグ野郎。OMEGAの変装技術も落ちたものだな。豊なら、その赤いエンブレムのバイクではなく、もっと『泥臭い』マシンに乗っていたはずだ」
秋月の背後には、彼らの拠点と思われる地下へと続くハッチがあった。彼らにとって、死んだ英雄の顔をして、見たこともない高性能な「零式」に跨る豊は、警戒すべき「敵」以外の何者でもなかったのだ。
【OMEGAの強襲】
その時、空を裂くような電子音が響いた。
「見つけたぞ……レジスタンスの鼠ども、そして……次元のイレギュラーを」
上空に現れたのは、OMEGAの戦闘中隊。幾何学的な立方体が組み合わさったような、不気味な飛行兵器だ。
「美希、隠れろ! 秋月、応戦だ!」
秋月が叫ぶが、OMEGAの放つ「重力弾」がレジスタンスの陣地を次々と押し潰していく。
「くそっ、出力が足りねえ……! ここまでか!」
「諦めるな、秋月! ……美希、見ていろ。これが俺の、ザボーガーの力だ!」
豊は再び**ザボーガー零式(ZERO)**に跨り、アクセルを叩きつけた。
並行世界の仲間たちが呆然と見守る中、豊の怒りに呼応して、零式のボディから純白の蒸気――次元転移の余剰エネルギーが噴き出す。
「転身――ッ! ZEROォォォーッ!!」
零式と一体化した豊が、一閃の光となって空へ跳ねた。
一撃。電磁波を纏った拳が、OMEGAの飛行兵器を紙細工のように粉砕する。
「なっ……なんだ、あの動きは……!? 豊兄さんより、速い……」
美希の声が震える。
空中で次元の壁を蹴り、豊は着地した。その姿は、この世界のレジスタンスが知る「電人ザボーガー」よりも洗練され、どこか神々しささえ感じさせた。
「……信じるか信じないかは後だ。今は、生き残ることを考えろ!」
豊の背中越しに見える「ZERO」の文字。
絶望に染まった並行世界に、死んだはずの「希望」が、より強大な力を持って帰還した瞬間だった。




