第9話:パラディン・覚醒!友よ、その命を燃やせ
精神世界の深淵、赤く濁ったノイズの渦中で、豊は父の「真実」に触れた。
父が研究していたのは兵器ではない。不慮の事故で命を落とした者の魂を救い、もう一度「生」を与えるための技術だった。
『豊……ザボーガーの核にあるのは、お前の母さんの形見のペンダントだ。愛こそが、死の淵から魂を呼び戻す唯一の電流なのだよ』
父の意識がウイルスを振り払い、豊の魂と完全に共鳴した。
その瞬間、現実世界で沈黙していたザボーガーが、かつてない清浄な蒼い光を放ち、その姿を変貌させていく。
「これが……父さんの、本当の願い……! 転身――パラディン・モード!!」
重厚な装甲は白銀へと輝き、背中には蒼い光の翼のようなマントがたなびく。
精神世界から帰還した豊は、圧倒的な神々しさを纏い、ガレージに侵入した秋月の前に降り立った。
だが、対峙する秋月の姿は無惨だった。
度重なる無理な改造と、ネオΣによる精神汚染。彼のバイザーからはオイルが涙のように溢れ、制御を失ったメガキャノンが暴走を始めている。
「ア……ア……ユタ……カ……」
パラディン・モードが放つ聖なる波動が、秋月の洗脳プログラムを一時的に中和した。
一瞬だけ戻った親友の瞳。だが、その背後には、彼を遠隔操作する悪之宮の冷酷な声が響く。
『フハハ! 秋月、そのまま自爆しろ! 豊もろともガレージごと消し去ってくれるわ!』
秋月の身体が赤く発光し、臨界点を超えたエネルギーが逆流し始める。
ガレージにはまだ、意識の戻らない父と、美希、そして松江がいる。
「やめろ、秋月! 止まれ!!」
豊が叫び、手を伸ばす。しかし、秋月はそれを拒むように首を振った。
彼は残された最後の自由な力で、自分のバイク「ダーク・ジャック」に飛び乗ると、豊を、そしてガレージを背にして、猛然と走り出した。
「……豊、お前は……生きろ。親父さんと、美希を……守ってやれ」
「秋月、何をするつもりだ!?」
「俺の……負けだ。……最高の、レースだったぜ」
秋月は暴走する自爆エネルギーを、自らのマシンのブースターへと無理やり転換した。
漆黒の弾丸と化した秋月は、追撃に来ていたネオΣの飛行艦隊へと突っ込んでいく。
――夜空に、一際大きな、そして悲しい光の花が咲いた。
「秋月ィィィィィーーーッ!!」
豊の絶叫が、静まり返ったガレージに虚しく響く。
親友の最期の献身によって、豊たちは守られた。しかし、その代償はあまりにも大きかった。




