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神様に『万が一の救済者だ』と言われてますが、実質出番は無いはずですよね?  作者: 杜槻 二花
第一章

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人には言えない、私の心うち。

 どんなに好きだな、と思っていたとしても、年齢が離れているとそれだけで大きな壁になる、というのは幼い頃の自分が常々感じていたことだ。

 ライナスと私の年齢差は七つ半。自分がまだまだ子どもと言われている頃に、結婚を考える歳になるライナスへの恋心は、諦める以外の選択肢がほぼなかった。

 この世界では十五歳くらいから男女とも結婚相手を考え始める。貴族ならば親が相手を見繕って早々に婚約、早くて十六歳、通常は二十歳前後で婚姻を済ませる。一般庶民はこの例に当てはまらないことも多いが、上流階級、つまり騎士爵を持つライナスや裕福層に当たる我が家は、貴族に近い分、貴族の習慣を真似る傾向にあった。

 ライナスが十五歳の頃には、私はまだ七歳か八歳。

 ライナスの周りに同世代の少女たちが群がるのを、私は横目で見ているしか無かった。

 

 三、四歳の頃を言えば、それが恋愛感情かどうかなんて理解してはいなかった。ただライナスの傍にいたかっただけだし、それが許されていた。

 自分の足でしっかり歩けるようになった頃には、ライナスの視線が自分よりも姉へと向けられることが多くなったことに気がついた。

 だがしかし、当時の私には姉との差が許せるものではなかったし、ライナスの目に一番良く映るのは自分でいたかった。

 だから兄が剣術を習い始めた時は、随分とムキになって自分も剣術を習うと言い張り、ライナスの傍にいられるようにと努力した。

 そのうち騎士団に入団してしまったライナスは、我が家に足を運ぶ機会が減っていき、剣術を習ったところでライナスに会えることはなくなった。

 それで剣術をやめてしまってはライナスへの思いがバレバレになってしまうと気がついた私は、一層剣術に力を入れ――、まあそれが治癒師として地方に行った時には随分と役に立ったのだけれど。


 元々街の子ども達に人気があったライナスは、騎士団に入った途端、沢山の少女達に取り囲まれるようになった。

 更に月日が経って、聖騎士団に所属が決まり騎士爵を貰った頃には、下位貴族のご令嬢からも熱い目線を送られるようになっていた。

 この頃になると、私は自分の恋心をはっきりと自覚していた。姉と一緒にいる姿も、他の少女たちと一緒にいる姿も、見てしまえばきゅっと胸が締め付けられる。

 しかし、二次性徴も始まりスラリと伸びた手足に出るところが出始めた少女たちに囲まれているというのに、彼女たちより頭ひとつ半程低くて手足も短い寸胴な子どもスタイルの私を、わざわざ選ぶ理由はどこにもない。そもそも十重二十重になっている少女たちの囲みの中に入っていくには、身長が低すぎて物理的にも無理だった。

 そんな中で優先順位が高い相手は決まって姉で、他の少女たちに囲まれていても、外側から姉に呼ばれればあっさりと囲みを抜けて姉の傍へと駆けて行く。

 偶然見かけたその様子を見て羨ましく思ったものの、だからといって囲いの外からライナスを呼ぶ真似を、私は試したいとは思わなかった。

 

 私が前世の記憶をはっきりと思い出したのは、この頃だったと思う。

 きっかけは「ライナスは私の恋人なのに」と言う思考からだ。この思考がそれまでぼんやりとしていた前世の記憶をはっきりとしたものに変えていった。

 そう、前世でライナスと私は恋人同士だったのだ。

 ただし、私が死んでしまった為に、最後まで結ばれることが無かった恋人。

 それなのに、今世では歳が離れていたため恋愛対象にはなれず、彼は私に似ていて全く違う姉に恋をした。

 相手には記憶が無いのだからしょうがない。しょうがないけれど、自分に記憶がある分切なかった。

 だから、私は自分の恋心に蓋をすることにした。

 何故なら、自分がやっと結婚適齢期になった頃には、ライナスが独り身である可能性は限りなくゼロに近いのだ。

 七つ半の年齢差は、当時の私にとって本当に大きな壁でしかなかった。


 自分が十一歳になった頃、姉は何故かライナスの同僚と恋愛結婚をしてしまい、ライナスはその後、彼を囲んでいた女性のひとりと付き合うようになった。

 最初の女性とは半年程で別れ、それからマーサと付き合い始めた。

 十二歳になった頃、世界に神の託宣が告げられた。その頃のライナスは、マーサとの婚姻が近いのでは、などと言う噂が出ていたものだ。

 けれど結局勇者チームへの参加候補になったライナスはマーサと破局、今に至る。


 七つ半ほどの年齢差は、十六歳になった今であれば、それほど気にしなくて良い年齢差になってしまった。

 存外それくらいの年の差夫婦は、街中を少し歩けば見つかるものだ。

 ライナスが魔王討伐に参加したお陰で無くなった壁であり、チャンスでもあった。

 ただ、そのチャンスに私は乗れるとは思っていなかった。


 二百六十年と言う長いスパンではあるものの、定期的に行われる魔王討伐の際、異界から召喚される聖女の伴侶は、九割を超えて勇者チームから選ばれている。

 その中で特に伴侶として選ばれやすいのが、聖騎士なのだ。

 恐らく、聖騎士が旅の序盤で護衛のような立ち位置になりやすから、と言うのが大きいだろう。召喚されたばかりで不安な中、危険から守ってくれる相手に心を許したくなるのは当然のことだと思う。

 二代前の聖女様は魔術師を選んだそうだが、三代前と四代前の聖女様は聖騎士を選んだそうだ。そして、一代前の聖女も聖騎士を選んだ。……結ばれる前に亡くなってしまったが。

 ただの確率の話ではある。だけどライナスが戻ってきた時、聖女様に選ばれていないとは思えなかった。


 だから魔王討伐終了後に、自分に釣り書を送ってくるなんて、本気で求婚してくるなんて思いもしなかったのだ。

 だって、彼には記憶が無いはずだから。

ここまでお読みくださいまして、ありがとうございます。

次回は来週木曜日の18時予定です。来週も二本UPできたら良いな。

ブックマークをしてお待ちいただければ嬉しいです。

ーーー

活動報告に、Gemini(AI)ちゃんに描いてもらったイラストがあります。

私のイメージからはそれなりに離れていますが(笑)、面白かったのでUPしてみました。

興味のある方は御覧ください。

出来上がった時、私はめっちゃ笑いました。

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