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神様に『万が一の救済者だ』と言われてますが、実質出番は無いはずですよね?  作者: 杜槻 二花
第一章

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それでも三年で終わらないと思うのですが。

「まあ、それが聖女の動き出した理由だとして……やっぱり三年で終わらないですよね?私達が敷いた補給経路は魔王の遺構には全く繋がってないわけですし。補給経路から外れた途端に行き詰まってもおかしくない。でも結局誰一人脱落せずにクリア出来たのは不思議ですよね」

 そう聞くと、父と兄は同意するように頷くと、首を捻った。

「それについては不思議という他ないんだが、貰った情報では、聖女様が進む道中に突然強い魔獣が出なくなったって話がある」

「……それは道を整備したから、ではないですよね?」

「ではないだろうね。道の周辺に魔獣を寄せ付けない様な仕掛けはしたが、範囲はそれ程広くない。……まあ、計算しきれていない部分で共鳴して魔獣が出にくくなっている可能性はあっても、魔王の遺構にまで届くことはないだろうねぇ。なのに遺構付近にいるはずの強力な魔獣が殆ど姿を見せなくなっていたらしいんだ。勿論、彼女たちが遺構に一番近い村へ早々に辿り着けた理由は、我々が敷いた補給経路のお陰だろうが」


「……それが今代の聖女様につけられた加護、ということあり得ますか」

 例えば聖女よりも強い魔獣が彼女に近寄れない加護。例えば彼女よりも強い魔獣が彼女の存在に気が付けない加護。そんな加護が彼女を中心に広範囲で展開されているのだとしたら、寄ってこなかった理由になるかもしれない。

「可能性はゼロじゃないが、どうかなぁ。自主的に進み始めてからは、同行している騎士団や傭兵部隊どころか道中の滞在地でも殆ど見かけなかったらしい。そんな広範囲に加護が展開されていたなら、討伐序盤に滞在していた場所が、魔獣に襲われなどしなかったんじゃないかな。アンナの言うような加護だったとしたらまあ……序盤の魔獣が聖女より弱かった、と言う可能性もなくはないが。または、神が後から加護を追加した可能性。これもゼロじゃないが、そういう場合も託宣があるはずだしね。それに『託宣がありました』と言ったならともかく『時が来きました』という言葉には繋がらないからねぇ。どちらかと言うと、『時』が、強力な魔獣が出てこなくなるタイミング、という解釈の方が自然な気がするね」

「でもそれだと、さっき言った、予知や遠見の加護になりそうですね……」

「そうだねぇ。ただ、彼女にそんな加護があったとしたら、やっぱり周囲に伝えていない理由がわからないし、他でその加護を使っている話も聞かない。予知や遠見の可能性も少ないかなぁ。もしも強力な魔獣が出てこなくなるタイミングや周期があると知ることが出来る加護だとしても……今まで随分と討伐がなされているけど、そんな周期があるなんてデータはないんだよね。勿論、魔獣の生態を全て知っているわけではないから、絶対とは言えないが」

 父は顎を右手でさすりながら目を半分伏せ、思考を纏めながら話しているようだった。


「つまり……ウチで敷いた流通経路のお陰で時短したのは確かだけれど、それ以降速度が上昇した理由は不可解なことばかり、ということですね」

「遺構にたどり着くまでに乗り越えなきゃいけない山や崖は、他の聖女様方の記録にもある。一代前と二代前以外の聖女様は、殆ど浮遊と飛行で繋いで移動していたらしいね。とは言え、魔獣が殆ど出てこない分、前例より速度は早まっただろう。ただ、遺構についた後は、勇者チーム以外入れない区域がある。……そこからは特に危険も多い。まともに訓練を(こな)していない彼等が、順当に進めたとは正直思えないんだよね……。けど、そこから討伐までの時間は更に最速だったらしいよ。それが一番不思議なんだよね、本当に。何しろ噂ではその区域を、ライナスを欠いたメンバーで進んだらしいから」

「えっ……。そこからって、確か人数制限、あるって聞いたことあるんですけど」

 驚いて声をあげると、父はそうなんだよね、と頷いた。

「勇者チームの人数には意味がある。魔王の遺構の中でも、棲み処と呼ばれる部分に入ろうと思うと必ず決まった人数でないと入れない、そう言われているよね」

 どうやら私の記憶違いではないらしい。多くても少なくても行けない。だからこそ、最終地点に辿り着くまでの精鋭として、勇者チームは選抜されているのだ。人数制限がなければ、ぶっちゃけ勇者チームなんて作らず全員で討伐に臨んだって良いのだから。

「足りない人数での通過。その上、勇者チーム最大の戦闘力を置いて行って、最速での魔王討伐が完了出来たとは正直思えないんだけどねぇ」

「……でも、討伐完了の兆しはちゃんと発現してましたよね?」

「出ていたねぇ」

 魔王の討伐が完了すると、空には美しいオーロラが発現する。昼だろうが夜だろうがかなりの広範囲で発現してくれるので、見逃すことは殆ど無い。例え空を見上げていなかったとしても、発現中は空気中の魔力が人肌を撫でるようにゆっくりと動くので、魔力があれば大なり小なり異変に気がつく。その時に空を見上げれば、必ずオーロラが見えるらしい。……まあ深夜ぐっすり眠っている最中に発現したら、気が付かない、かもしれないけど。

「……じゃあ、ライナスを置いていったっていう噂が、嘘?」

「だと良いんだけどね。いや、既に討伐が完了しているならば良いも悪いもないが……。それか誰か別の人間が付いていったのか。それを含めてもライナスに直接聞いてみたいところだね。どうにも会えないのがもどかしいよ」

 そう言うと、父は大きなため息をついて眉間をつまんでマッサージしながら、ソファの背に深くもたれかかった。


 話し終えた様子の父を見た兄は、私の方を向いて言った。

「まあ、魔王討伐が終わったのは間違いないんだ。問題はもう別のところに移動してる。討伐の報奨、今の焦点はそこだ。大衆紙の内容を鑑みるなら、多少なりともアンナに直接問題行動を起こす輩は出てくるだろうと予測出来るんだから、外出とかは自重しろよ。届け物なんかは、バートンと中身の精査をしてから開けろ。できればその前に親父を通せ。知らない奴にはついていくな。物を貰うな。知り合いでも例外なく疑え。あと、自分の腕っぷしに自信があるからってひとりで出歩くな。お前の場合、善良な民衆に絡まれた方が、野盗と敵対するより怪我する羽目になるだろ」

 善良な市民は殴れないだろ?と兄に言われ、確かにそのとおりだな、と思う。野盗ならば心置きなく殴るんだけど……。

「肝に命じます……」

「本当かなぁ」

「マジで勝手に動くなよ」

 そう言って、父と兄は半眼で私を見てきた。

 ……なんだろう、このくだり、さっきもやった気がするなぁ。

ここまでお読みいただきましてありがとうございます。

続きは20時に。

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