ラビリス
2018.12.11 投稿
2020.04.11 第97部分に変更
◇ダンジョン【ボレアス温泉ダイス屋】◇
或る夜の事。
侵入者に気付いた俺は、目を覚ました。
「こんな時間に来るなんて、非常識な」
着替えた所で、ラウンジに転移させられた。
其処には、鎧を身に着けた美少女とソファに座ってコーヒーを飲んでいる美青年が居た。
「私はダンジョンマスターのラビリス。此処に居る人間達の命を賭けたダンジョンバトルを望む」
先に口を開いたのは、鎧少女だった。
銀の髪に青い目をした黒い肌の美少女だ。
「俺は大好だ。で、其方は?」
「我が名はロードアーク。【アディア】の創造神にして、ダンジョンマスターの神也。この地では、邪神アルカと呼ばれておる」
そう名乗った青年は、美女へと変身した。
何で変身した?!
「邪神アルカが創造神と言う事は、ナラ教の神は?」
「実在せぬ」
「……そうなんですか」
ナラ教は、創造神を邪神扱いして、想像上の神様を崇めているのか。
しょっぱい真実を知ってしまった。
「それで、何で、このダンジョンの人間達を殺したいんだ?」
気を取り直して、俺はラビリスに尋ねた。
「貴方に言う必要は無い」
「じゃあ、受けない。帰れ」
「帰らない」
我儘な女だな。
「じゃあ、一生此処に居れば良いさ」
そう言うと、俺はロードアーク様に向き直った。
「此処って仮想空間ですか?」
ダンジョンバトルの事は、マニュアルを読んだので知っていた。
「左様」
「此処から現実空間に干渉出来ますか?」
「可能だ」
じゃあ、問題無いな。
「仮想空間に俺の部屋は在りますか?」
「其方のダンジョンを再現している」
「ありがとうございます。それでは、寝ますのでお休みなさい」
ロードアーク様が頷いたので、俺は部屋に向かおうとした。
「待ちなさい。理由を話すわ」
一生此処から出られないのは、やはり嫌なのだろう。
ラビリスは漸く譲歩した。
「私は、ホーラー王国で生まれ育った。何処にでもいる普通の人間だった。でも、今から五十年ほど前、ケイモーン王国のナラ教徒共が、ホーラー王国を滅ぼした」
戦争かな?
「死んだ私は、アルカによってダンジョンマスターに転生した。そして、DPと引き換えにホーラー王国の復活が出来る事を知った」
「え?! 死んだ人を生き返せるんですか?!」
驚いてロードアーク様に尋ねる。
「然り」
「だから、私は、ホーラー王国復活の為にケイモーン王国人を殺して必要なDPを得た。そして、ホーラー王国を復活させた。私も含めて」
「え? どう言う事? お前は、今もダンジョンマスターなんだろう?」
「そう。人間だった私のコピーと言う事になる。魂がどうなっているかは分からない」
生き返った他の人達もコピーだったりするのだろうか?
「どうして、自分のコピーを?」
「アルカに頼んで私を元に戻して貰う事も考えた。でも、ナラ教徒共がまたホーラー王国を滅ぼそうとしたらと思うと、ダンジョンマスターのままで居るべきだと思った。元通りにしたいと言う願いと両立するには、私のコピーを造るしかなかった」
「なるほど」
でも、それって、『元通り』か?
「そうして、三十年程が経った。今から二十年位前。或る公爵家の三女が、ケイモーン王国の貴族に嫁ぐ事になった。奴等に滅ぼされた記憶は誰にも無かったから、そんな話が出ても不思議じゃ無かった」
「イヴェットの母親の事か」
「知っているの。ならば、解るでしょう? ケイモーン王家は彼女の娘イヴェットを謀殺した」
「でも、イヴェットはホーラー王国人じゃないだろう?」
「私は、三世代目まではホーラー王国人だと思っている」
ああ。江戸っ子とかね。言うよな。「三代住まないと(略)」って。
「イヴェットは、ケイモーン王国を滅ぼそうとしている。後は、此処に居る奴等だけ」
そうか。やっぱり、他の連中は皆死んだのか。
「理由は解った。でも、俺にメリットが無い」
「貴方は、貴方が欲しいものを要求して勝てば良い」
「俺が欲しいもの……?」
はて? 欲しいものなどあっただろうか?
大抵の物は、DPで手に入る。
恋人や配偶者は、ダンジョンバトルで得るものではない。
「じゃあ、俺が勝ったら、お前がイヴェットを殺せよ」
そう言うと、初めてラビリスの無表情が崩れた。
「私が?」
「当り前だろう。ホーラー王国人だと思っていながら、イヴェットは生き返さないつもりだったのか?」
だとしたら、軽蔑するわ。
「そんな事は……」
「生き返せるのにアンデッドのままで居させるなんて、可哀想だ」
恐らく死後数時間でアンデッド化したのだろうから、それ以上腐りはしないだろうけれど。
「大好。それでは、釣り合わぬ。何方が勝利しようとも、ラビリスは其れを為すだろう」
「ああ。そうですね。じゃあ、俺のDP入手用家畜を二度と要求しない事」
「……良いわ。負けるつもりは無いから」
ダンジョンバトルが始まり、ラビリスは大好が造ったダンジョンの中に居た。
何の変哲もない正方形の部屋だった。
閉ざされた扉に近付こうとすると、上から何かが落ちて来た。
ラビリスはトラップかと思ったが、違った。
それは、人間の頭位の大きさの正方形のサイコロだった。
『サイコロを振って出た目の数だけ進めます』
女性の声でアナウンスがあった。
そう。これは、人間双六だ。
「運任せの時間稼ぎタイプか……。ふざけてる」
戦闘で負けるなら兎も角、時間稼ぎで負けたら納得がいかない。
それでも、やるしかなかった。
サイコロを振ると、出た目の数だけ扉が開いた小部屋を通って行く。
目的の部屋に入ると赤く光った。
『この部屋ではモンスターが出ます。倒してください』
一本角が額に生えた兎型モンスターが転移して来た。
「行くよ。アーマル」
身に着けているリビングアーマーの名を呼び、ラビリスはモンスターに向かって行った。
「初っ端からオイルトラップと鉄球トラップか~!」
ラビリスの造ったダンジョンに入り、下り坂を降りている途中でオイルが流れて来た。
それに滑って転んだ所に上から鉄球が転がって来たのだ。
「殺意が高過ぎる!」
俺は虫に変身して隙間に避難した。
鉄球がギリギリ通る筒状の通路でなくて良かったよ。
「はあ~……。寿命が縮みそうだよ。ダンマスに寿命無いけど」
ダンジョンバトルで死んでも終われば生き返るが、だからと言って平気で死ねる訳じゃない。
この後も殺意高いトラップ構成なんだろうと思うと、先に進む気が削がれてしまう。
でも、行かなければならない。
むざむざと、DP収入源を失ってなるものか!
部屋が黄色く光る。
『サイコロを振って出た数戻ってください』
赤く光る部屋が敵の出現・黄色く光る部屋は戻らなければならない。緑色の部屋では何も無い。
次にサイコロを振れるのは、部屋を移動して一分後だった。
部屋が青く光る。
『十五分間の休憩です』
ラビリスは苛々としていたが、こういうダンジョンなのでどうしようもなかった。
殺意が高い罠を殆ど飛ぶ事で回避した俺は、先へ進む扉を守るリビングアーマーと戦っていた。
足の踏み場も無い程トラップだらけの部屋だったので、飛行魔法を使って戦わなければならなかった。
覚えておいて良かったよ。
でも、レベルが低く種族がサピエンスの俺の攻撃力は低い。
因みに、サピエンスは魔法が使えないが、ダンマスは別なのだ。
「アシッドレイン!」
酸を雨の様に降らせる魔法を使いダメージを与えているが、大して効いていない。
このリビングアーマー、レベルが高いのだろう。
疲労に限界を覚えた所で、俺達は動きを止められた。
「其処まで! 勝者、大好!」




