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ダンジョンマスターは神様です  作者: ひつじかい
番外編:ライラック諸島
96/191

【お菓子の家】

2018.12.04 投稿

2020.04.11 第96部分に変更

◇メトポーロン王国◇


 幸せって、甘いお菓子を食べる事だよ。

 幸せってどんな事なのかと聞かれたら、私はそう答えるだろう。




 私は苗木(なえき)果子(かこ)

 ライラック島の西にあるメトポーロン王国にダンジョンを構える新米ダンジョンマスターだ。


 初日、取り敢えず間に合わせのダンジョンを造ろうと『ダンジョンセット』リストを流し見していると、『お菓子の家セット』と言う文字が目に留まった。


 お菓子の家か~。

 前世で子供の頃、憧れていた気がするな~。


 なので、それを選択してダンジョンを造った。


 ジンジャーブレッドの壁・レープクーヘンの屋根・チョコレートの扉・キャンディーの窓。

 美味しそう。


 ……今気付いたけれど、これって、虫とかが寄って来るよね?

 嫌過ぎる!


 って、これ、ガラスか何かに閉じ込めてある?!

 なんだ~。食べられないんだ~。がっかり。

 虫が寄って来ないのは良いけれど。



 誰か来る!


 私は視界の端に他人の姿を認め、慌ててダンジョンに駆け込んだ。


 強い冒険者じゃありませんように!




『近くで見ても、やっぱり変な建物だな』

『何だろう?』

『ダンジョンだろう。変な建物は大体ダンジョンだ』

『良し。入ってみるぞ』


 地下一階のモンスターは、スライムだった。

 但し、プリンスライム・ゼリースライム・ジャムスライム・羊羹スライムなど、食べられるのかと気になるラインナップだ。


『ヤバい! 顔に張り付いた!』


 仲間の顔にプリンスライムが張り付き、慌てる男達。


『剥がせ! 窒息するぞ!』

『何だ、これ?! 柔らかくて千切れる!』



 地下二階のモンスターは、ゴーレムだった。

 但し、チョコレートゴーレム・シュガーゴーレム・キャンディーゴーレム・マシュマロゴーレムなどである。


『何だ。こいつ等? ゴーレムにしては、柔らかいぞ?!』

『ああ! もう! 剣がベタベタだ!』



 地下三階にはモンスターは居らず、厨房が在った。

 そして、先へ進む扉が特殊な方法で閉じられていた。


『何なんだ。此処は?』

『壁に顔?!』

『いや。これ、扉じゃないか? 扉を顔の像で塞いでいるんだ』


 扉を塞いでいるのは、円形の石に彫刻された顔。四角い大きな口が開いている。


『プレートに何か書いてあるぞ』

『何々? 【甘い菓子を食わせろ】』


 男達は、厨房に用意されている材料を振り返った。


『作れってか?』

『誰か作れるか?』

『作れると思うか?』



 そして、男達は厨房の物を全部持って帰ってしまった。


 ちょっ?! せめて、調理器具は置いて行け~!




 冒険者って、皆、ああなの?

 まあ、私の危険は去ったから良いけどさ。あいつ等の滞在DPで補充も出来るし。


 さて、気を取り直して、地下四階の確認。

 此処には、ドラゴンが一種類だけ居た。

 スイーツドラゴンと言うらしい。

 お菓子で出来ているのかと思ったが、見た目は普通だ。

 違う所と言えば、お菓子で出来た壁を食べている所かな。


 ?!


 スイーツが好物って言う意味だったの?!

 って、そんな事より、食費が! エンゲル係数が!


 その後直ぐ気付いたが、壁や柱が無くなっても上層が落ちない仕組みなのは、幸いだった。

 そうでなければ、私は潰れていただろう。


 ああ……。自動DP消費で壁などが元通りになって行く。

 このドラゴン達をどうにかするか、DP収入を定期的に得なければ、遠からずDPが尽きてしまうかもしれない。




 翌日。

 皿に乗せたお菓子の家を食べながら人を集める方法を考えるが、良い案は浮かばない。

 紅茶を飲んで一息吐く。


 侵入者が来たようなのでモニターに映すと、昨日の冒険者達だった。

 彼等は地下三階の厨房まで辿り着くと、また全部持って帰った。

 昨日持ち帰った物が高く売れたらしい。

 理由はともあれ、今後も来るなら、最低一時間は必ず滞在するよう工夫しなければ。



 夕飯の時間になっても、未だ良い案が浮かばなかった。

 食事を取りながら、尚も考える。


 そうだ!

 『部屋に閉じ込められて、ホールケーキを完食しないと出られない』というのはどうかな?!

 お。良いんじゃない? 採用!


 そんな事を考えていたらケーキが食べたくなったので、三号(直径9cm)のホールケーキを出して食べた。

 勿論、閉じ込める部屋に置いておくケーキはもっと大きいサイズにする。


 ……もう一つ食べちゃおうかな?


 私はホールケーキをもう一つ出して、食べた。

 ダンジョンマスターは病気にならないようだけれど、太るのはどうなんだろうな~?




 数週間後。

 モンスターを倒せさえすれば、タダで上質な砂糖が手に入ると言う事で、多くの冒険者が訪れる様になっていた。

 それによって、街では砂糖を使用した料理やお菓子が増え始めているらしい。


『でも、此処の菓子の方が上手いよな~』

『これって、ダンジョンマスターとやらが作ってるのか?』

『まさか~。人間の菓子職人を攫ったか何かして作らせてるんだろ~』


 紅茶を飲みつつケーキを食べながら、食べ終わるまで閉じ込められている冒険者達が談笑している。


『でも、罠なんじゃねーかって話があるよな?』

『ああ。五十年前のケイモーン王国のヤツな』

『でも、この五十年何もねーんだから、そいつ死んだんじゃねーの?』


 ケイモーン王国で五十年前に何があったんだろう?


『だろうな』

『何て名前だっけ?』

『確か……。ラ……?』

『ラビット?』

『ランビリス?』


 ランビリスって、確か、ホタルだよね。ギリシャ語だっけ?


『ラビリンス?』

『それ! それっぽかった!』

『思い出した! ラビリスだ!』




 結局、その後、ラビリスとやらが何をしたのか話題に出る事は無かったので、サッパリ事情が分からない。

 後で、ケイモーン王国にダンジョンが在る大好(だいす)に聞いてみようかな?


 ペットのインコがケーキを啄ばむのを見ながら、私はそう考えた。

ご存知でしょうが、人間用に味付けされた物を食べさせてはいけません。

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