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ダンジョンマスターは神様です  作者: ひつじかい
番外編:ライラック諸島
95/191

【ホラーハウス】

2018.11.27 投稿

2020.04.11 第95部分に変更

◇テロス王国◇


 幸せって、安全な恐怖で(せい)の実感を得る事だよ。

 幸せってどんな事なのかと聞かれたら、俺はそう答えるだろう。




 新たに発見されたダンジョンで、男が女を無理矢理抱いていた。

 しかも、首を締めながら。

 男が満足した頃には、女の命は絶えていた。

 しかし、男にはどうでも良い事だったので、その隣で就寝した。



 暫くして、男は寝苦しさに目を覚ました。

 すると、男の上に女が座っている。

 最初に、生きていたのかと思い、次に、仕返しなのか自分の上に座っている事に腹を立てて、どかそうとして動かした手が女をすり抜けた。


「うわア!」


 アンデッド化した!

 男はやられて堪るかと飛び起き、剣を手にする。

 しかし、ファントムは姿を消していた。


 男は警戒しつつも服装を整え、荷物を持ってダンジョンの外を目指した。

 寝ている間に明かりが消えて真っ暗になっていた部屋を出て、寝る前と違い薄暗い通路を歩く。


 暫くして、男は気付いた。

 自分の足音以外に、もう一つ足音が聞こえる事に。


 それは、四足の獣のものではない様だった。

 自分より体重の軽い人間の足音。

 そう判断した男は、足を止めて振り返った。


「誰だ!?」


 しかし、誰もいない。

 足音も止んでいた。


 近くには曲がり角も部屋も無い。

 男は、これもアンデッドかと警戒しながらも、再び歩き始めた。



 足音に振り返っても何も居ないと言う事を何度か繰り返したある時、振り返った男の背後で声が聞こえた。


『オイテイカナイデ~』

「ヒイッ!」


 突然耳元で聞こえた声に驚いて振り向くと、ファントムが居た。


「驚かせやがって!」


 そう怒鳴り剣を振るったものの、何のダメージも与えられない。


『ヒヒヒ』


 ファントムは笑って消えた。


「クソッ!」



 苛々しながら他のモンスターが出ないダンジョンを歩き続けると、角を曲がった所に巨大な男の顔が在った。

 予想外の事に驚くと、顔はギロリと男を睨んで消えた。

 その向こうの通路は、真っ暗闇。


 男は闇に怯んだが、松明を出して火を付けると慎重に進んだ。

 此処を通らなければ、外に出られないからだ。



 幾つかの角を曲がり、前方に明かりが見えた。

 出口である。

 男は逸る気持ちを抑えて、ファントムの襲撃を警戒しつつ其処へ向かう。


 太陽に照らされた外の光景に、男の緊張が緩んだ。

 出口まで、最後の一歩。


 ガシッ。


「オワア!」


 油断した所で片足を掴まれ、男は悲鳴を上げた。

 振り向けば、床から生えた女の手が足首を掴んでいた。




 俺は昏中(くらなか)黄昏(たそがれ)

 ライラック島の南にあるテロス王国にダンジョンを構える新米ダンジョンマスターだ。


 初日、取り敢えず間に合わせのダンジョンを造った俺は、それを少しずつお化け屋敷風に改装していた。

 そこへ、二人組の冒険者がやって来た。

 

 彼等は普通に仲良く探索していたのに、俺が風呂に入っている間に、男が女をレイプして殺していた。


 良い気分が台無しだよ。この野郎!


 なので、ファントムメーカーで殺された女にそっくりのファントムを作った。

 男の上に正座させ、起きるのを待つ。

 起きた男はファントムの腕を掴もうとしたが、すり抜けたので驚いていた。


 部屋を出てダンジョンの外へと向かう男が、自分の物とは違う足音に何度も振り向く。


 踏むと音が出る罠だ。

 デフォルトでは、警報が鳴る。それによって、モンスターが集まって来るのだ。

 俺は、音の種類を靴音(ブーツ・女性・後、身長や体重なども設定)にした。

 勿論、他の場所に設置した罠からは、他の音がする様にしておいた。裸足の足音や不気味な笑い声などだ。



 足音にも慣れたであろう所に、『大かむろ』を配置してある。

 それを見て驚いた男は、後ろに転びそうになって留まった。

 ちょっと面白かったので笑い、大かむろを鼠に変身させて退かす。



 真っ暗闇を松明で照らして出口へ到達した男は、最後の最後でファントムに足を掴まれた。

 ファントムと目が合い、ファントムに覚えさせたスキル【恐怖の瞳】にかかった男は、強い恐怖により気を失い・失禁した。


 さて、これ、どうするか?

 放っておいたら、モンスターに殺されるかもしれないな。

 でも、強姦殺人犯だと突き出しても、信じて貰えないだろう。証拠は録画した物が有るが、説明するのが面倒臭い。

 仕方が無い。

 普通に帰すか。




 街と外を隔てる城壁から外を警戒していた衛兵達が、街に近付くゴーレムを発見した。

 ゴーレムは一体で、荷車を曳いていた。

 ゴーレムは、発見された事を知ってか知らずか、門に辿り着く前に足を止めると、荷車を置いて戻って行った。


 警戒しながら荷車に近付き確認する。


「女の死体と……。生きているようだな。男が下敷きになっている」

「絞殺か。ゴーレムじゃないな」


 荷車を曳いて来た大きなゴーレムの手で絞めたならば、女の首は原形を留めていないだろう。


「人間、若しくは、それに類するものの仕業か」


 それは分かっても、下敷きになっている男が殺したかまでは判らない。



 その後、男は意識を取り戻したが、アンデッドか何かに精神攻撃を受けたのか、正気を失っていた。

 一応、彼等の身形から冒険者だろうと知り合いを探し、二人の身元は判ったのだが。

 結局、誰が犯人なのかは判らず、居るのかどうかも判らないゴーレムの主人が犯人とされた。



 その翌日。

 依頼を受けてゴーレムが去った方角を当て()も無く捜索していた冒険者達は、新たなダンジョンを発見した。


「何か書いてあっぞ。読んでくれ」


 入り口側の看板を目にした字が読めない男が、仲間にそう頼んだ。

 六人組の彼等の中で、字が読めるのは一人だけだった。


「えっと……。『心臓が悪い人・気が弱い人の入場は、ご遠慮ください』と書かれている」

「は? そんなヤツらは冒険者にならねーだろ?」

「まあな」

「例のゴーレムは、ここのヤツか?」

「そうかもな。アンデッドがいるかもって言ってたし、気をつけろよ」

「おう!」



 

『ヒギャアアアア!』

『こっち、来んじゃね~!』


 ふふふ。恐がってる。恐がってる。

 アンデッドを倒せる世界でも、恐怖心はあるからな。

 まあ、安心してくれ。

 地下六階からは倒せるようになっているからな。倒して、スッキリ出来るぞ。

 まあ、裏を返せば、自分達も殺されるようになるって事だけどな。


『もう、かえる!』

『二度と来ねーぞ! チクショウ!』




 しかし、彼等はその後、『恐怖を克服する』とか言って数ヶ月毎にやって来るようになったのだった。

 彼等に限らず、地下六階以下に進むダンジョン討伐ガチ勢は少数派だ。

 命の危険無く冒険している感が得られるからか? 金にはならないだろうに。

 まあ、その方が俺としては嬉しいけどな。

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