ケイモーン王国滅亡
2018.12.18 投稿
2020.04.11 第98部分に変更
◇ダンジョン【ボレアス温泉ダイス屋】◇
「『スタート地点に戻れ』とか、こんな卑怯なダンジョンを良く造れたものだわ」
「狙って『6』だけ出したのか? そう来ると思って、6の倍数の所にだけ、『スタート地点に戻れ』とか『15分休憩』とか配置しておいたんだ」
俺がそう言うと、ラビリスは苦々しい表情を浮かべた。
「では、ラビリスよ。イヴェットを殺害せよ」
少年に変身していたロードアーク様がそう言うと、ラビリスの姿が消えた。
「王都に転移させたんですか?」
「然り」
心の準備をさせないとか、容赦無いな。
「観戦するか?」
「是非」
◇王都ボレアス◇
ラビリスの心は、珍しく乱れていた。
凡そ五十年振り位だろう。
イヴェットは、半分とは言えホーラー王国人の血を引いている。
だから、討伐するつもりなんて欠片も無かった。
ホーラー王国人を手にかけたくなかったのだ。例え、アンデッドであろうとも。
イヴェットが誰かに討伐されれば、生き返らせるつもりだった。
討伐した人物に報復した後で。
しかし、大好に言われて気付かされた。
アンデッドのままで居させる残酷さに。
下手をすれば、何百年も。
誰だって、死体のままで居たい訳が無い。
死んで数秒の無傷の死体なら未だしも。
だが、ラビリスは自分の手で殺したくなかった。
「アーマル。頼んだよ」
リビングアーマーを脱いで、ラビリスは代わりに殺してくれるよう頼んだ。
「何? モンスター?」
獣型では無いモンスターの出現に、イヴェットは疑問に思いながらも魔導具で増幅させた氷結攻撃をする。
因みに、疑問に思った理由は、獣型のモンスターがダンジョンの外に出没する話は良く聞くが、動く鎧が現れた話を聞いた事が無かったからだ。
イヴェットが放った氷結魔法は、ラビリスがアーマルに装備させていた【氷結無効】のタリスマンによって防がれた。
魔法が通用しない以上、イヴェットに勝ち目は無い。
対アンデッド用武器ホーリーソードに首を飛ばされ、イヴェットは今度こそ天に召された。
◇ダンジョン【ボレアス温泉ダイス屋】◇
俺は、夕飯の席でイヴェットが討伐された映像を見せた。
『じゃあ、雪は止んだんだね?!』
『良かった!』
喜び合う人々を眺める。
『うちにかえるの?』
『ええ。そうよ』
子供の問いかけに、母親がそう答えた。
『え~! ここのごはん、たべられなくなるの~?!』
『う……。そう、なるな……』
『ちょっと、待て。……帰る必要……あるか?』
ふっふっふ。そう言う意見が出ると思ってた!
『いや。あるだろ。このまま此処に居たら、邪神の眷属の家畜だぞ』
『だが、飢える事は無い!』
働かずに衣食住保証の誘惑に勝てるかな?
『帰りたい人は帰れば!』
『既に心まで穢れたか! 所詮は、下賤の者よな』
司教が忌々しそうに吐き捨てた。
結局、ダンジョンに残ったのは三分の一だけだった。
雪が溶けるまで待って、三分の二は王都に帰って行った。
大丈夫? 野菜の種とか全滅してない?
王都に戻った彼等は、直ぐに戻って来た。
何故なら、ケイモーン王国の生き残りは彼等だけだったからだ。
王族は全滅。
貴族も殆どが死亡。
農民もゼロ。
兵士も極僅か。
そして、食料が無い。
野生の植物も殆どが雪と寒さにやられ、隣国に仕入れに行く事すら出来なかったのだ。
間もなく、ケイモーン王国の異変に気付いた隣国エアル王国とメトポーロン王国は、領土拡大の為にケイモーン王国に侵攻。
こうして、ケイモーン王国は、その歴史に幕を閉じたのだった。
今の所、俺のダンジョンは見付かっていない。
『此処に居るのも飽きたね~』
『その内人が増えたら、旅人の振りして混ざれば良いさ』
その手があったか。
この世界、パスポート無いもんな。
まあ、全員が出て行く事は無いだろう。
数年後。
元王都に大分人が増えたので、半数ほどが出て行った。
そして、一ヶ月に一度・数ヶ月に一度・半年に一度・一年に一度等の頻度で、たまの贅沢をしにやって来る。
中には、全然来ない者もいる。
ナラ教の聖職者は来たくても来れないよな。
後は、遠くに引っ越したか、病気か何かで来れないか、死んだかだろうか?
此処で生まれ、此処の生活しか知らない子供達もいる。
彼等は、大人になっても出て行かないだろう。
生まれてから一度も働いた事の無い者が、外の世界でやって行くのは難しいだろうから。
後は、討伐されないよう頑張るだけだな。
◇ホーラー王国・ダンジョン【恵みの草原】◇
ホーラー王国の王都近くに在る【恵みの草原】は、ラビリスのダンジョンである。
此処では様々な薬草が採取出来る為、ホーラー王国民はとても助かっている。
「アルカ。確認したい事がある」
「うむ」
草原で薬草スライムと戯れていたロードアーク(少女に変身している)は、ラビリスに顔を向けた。
因みに、生き返らせたイヴェットは、母親の実家で暮らしている。
母親の死後、彼女の遺言で其方に引き取られたとロードアークが記憶操作してくれたのだ。
「アンドリとララは生きているの?」
「否。二人は凍死した」
「……そう。死んでいるなら、良い」
生き返らせる為とは言え、イヴェットを討伐させたラビリスは、落ち込んでいた。
そんな彼女が気になるのか、それとも、ただの気紛れか、ロードアークはずっと此処に居る。
「アルカ。もう、帰って」
ラビリスは他人と必要以上に関わりたくないので、ロードアークを帰そうとする。
「断る」
だが、ロードアークにはラビリスの性質への配慮など知った事では無い。
ラビリスはイラっとしたが、ロードアークは其処に居ても気にならない存在感なので、気にするだけ損だと思い直した。
暫くして、ラビリスはロードアークが居なくなっている事に気付いた。
「気紛れね」
何故だか少し寂しかった。




