異常気象?
2018.10.23 投稿
2020.04.11 第90部分に変更
◇ライラック諸島・???◇
幸せって、暖かい事だよ。
幸せってどんなものかと聞かれたら、俺はそう答えるだろう。
「さっぶ~!!!」
ダンジョンマスターに転生した俺は、猛吹雪の中に居た。
「おおおおおお!!!」
寒さに震えながら大慌てでダンジョンを造り、入る。が、寒い。
「設定! 温度! 何度?! 21!」
外よりはマシだったが暖かくは無かったので設定温度を変更すると、漸く暖かくなった。
因みに、21℃にした理由は、何処かで21℃以上が良いと聞いた様な気がするからだ。
「まったく、冬なら冬の服装にして欲しいよ!」
そう愚痴りながら、現在地の確認をする。
「ライラック島北部『ケイモーン王国』ね」
ヘルプで検索をした。
ライラック島
アイリス大陸から東に位置する島。南半球に在る。
ケイモーン王国
ライラック島北部に位置する王国。
王都はボレアス。
最高気温は、年間を通して30℃以上。最低気温は、冬は20℃を下回る。
「ん?」
見間違えたかと思って目を凝らした。
「20℃って事は、冬も暖かい? 南半球だから、今初冬か? え? 吹雪いているけど?」
俺は、モニターに外の景色を映して確認した。
今もまだ吹雪いている。
「い、異常気象……」
どうすんの、これ? 誰もダンジョンに来ないじゃん!
って、待てよ?! 冬でも暖かい所に防寒服や暖炉なんて無いよな?
大丈夫?! 皆、死んでない?!
その時、モニターに映し出された景色の中に、人影が見えた。
「ん? 人?」
此方に近付くにつれて、それが二人である事が判った。
一人は小柄でロングスカートを穿いているから、女だろう。
『大丈夫か。ララ?』
『はい。アンドリ様と一緒なら、寒くありません』
大丈夫? それ低体温症になったからじゃない?
『此処で休もう』
二人は、大樹の陰に腰を下ろした。
暫くして、二人は何故か服を脱いで裸になると愛し合い始めた。
……何やってんだ~??!
死にそうだから自棄になっているのか?
あ! もしかして、体温調節おかしくなってる?
ヤバい。助けなきゃ! 防寒具、防寒具!
だが、時既に遅かった。
軽度では無い低体温症時に運動してはいけない。冷えた血液などが心臓に負担をかけてしまう。
後、下手に温めるのも良く無いそうだ。
二人共、幸せそうな顔をしている。
俺は、二人の遺体をダンジョンに吸収した。
◇ケイモーン王国・???◇
一番近い街に向かって、地表をダンジョン化していく。
平原などをそのまま使用したダンジョンを、【アディア】ではオープンダンジョンと呼んでいるらしい。
魔物が居るだけの普通の森や平原だと思っていたら、実はダンジョンだったと言う事も珍しくないとか。
ただの街が実はダンジョンだという事も、気付かれる事が少ないだけで良くあるそうだ。
だから、近くの街をダンジョン化してこの天気をどうにかしたら、滞在DPが手に入ると思ったのだ。
しかし、それだとダンジョンだとばれてしまうか……。
ん?
前方から、大勢の人影がやって来るのが見えた。
天気の良い地方が在ると信じて、避難しようとしているのだろうか?
俺は、急いでダンジョンを造った。
「何だ、あれは?! こんな所に建物など在ったか?!」
先頭を歩いていた冒険者の男が、吹雪の向こうに建物の影を見付けて声を上げた。
「無かった筈だよ! 道を間違えていない限りはね!」
仲間の女がそう答える。
雪が積もり街道など見えないし、吹雪の所為で視界も利かない。
道を間違えてもおかしくは無かった。
この寒さと歩き辛い足元で、子供や老人は体力を消耗している。
あれが本当に何らかの建物ならば、休めないだろうか?
そう思って近付くと、この国とは違う建築様式の建物が見えた。
隣国の物とも違う。
「外国人が建てたのか?」
更に近付くと、看板とそれに書かれた字が見えた。
「『ボレアス温泉ダイス屋』?」
ボレアスはこの国の王都であり、今朝まで彼等が住んでいた所である。
しかし、周辺に温泉地など無かった筈だ。
「アベル、どうする?」
「夜になる前に何処かで野営の準備をしなければならない。だが、建物の中で休めるなら、その方が良い」
「そうね」
アベルと呼ばれた男は、人々を振り返って声を張り上げた。
「皆! 今日はこの中で休むぞ!」
それを聞いた人々は、多くが安堵した。
「こんな立派な宿で休む金なんて……」
しかし、貧しい暮らしをしていた者達は喜べなかった。
「こんな所に温泉だなんて、怪しい! ダンジョンじゃねーのか!?」
そんな中、一人の六十がらみの男が怒鳴り声を上げた。
「ダンジョン?!」
「そんな……」
人々の間に、動揺と不安が広がる。
「そうとは限らない。仮にダンジョンだったとしても、こんな天気と気温の中で野宿するよりはマシだろう」
「おめー等は、五十年前の事件を知らねーから!」
「五十年前の事件?」
誰かが疑問の声を上げた。
「五十年前、ヒト型のモンスターが、安全なダンジョンだと言う嘘を吐いて、何千人と言う人間をダンジョンに誘き寄せて殺した事件だ! その所為で幾つもの街が滅んだんだよ!」
知らなかった者達が、予想以上の被害に息を呑んだ。
「でも、まだ彼処がダンジョンとは決まって無いよね?」
「そうだよな。入ってみよう」
アベル達は横開きの扉を開けた。
暖かい空気が流れて来る。
「ようこそ、いらっしゃいました。私はダイス屋の女将ピップでございます」
入って直ぐ、見た事も無い服を着た女性が彼等を出迎えた。
足首までの長さの前開きの服を、硬そうな帯で留めている。
海の向こうの国(ミサンドル王国)の遥か北に在ると言う国の服とも違う。
また、肌の色も、よく見る黒や褐色でもなければ、偶に見かける白でも無かった。
年は三十路前位だろうか?
「おい! 此処はダンジョンだろう!?」
「はい」
直球で尋ねる男に、ピップはあっさりと認めた。
「討伐のお客様でしたら、彼方の『危険! 立ち入り禁止!』と書かれた扉の奥へどうぞ。マスターと眷属と罠と寒さが、挑戦者をお待ちしております」
ピップが指を揃えて示した方を見ると、確かにそう書かれた扉が在った。
「やっぱりダンジョンじゃねーか! こんな所に居られるか! 行くぞ、おめー等!」
男がそう怒鳴って出て行こうとすると、彼の子供と孫はそれに従おうとする。
「待て! 幼い子供がこれ以上耐えられると思うのか!?」
アベルが止めるが、男は聞き入れなかった。
「モンスターに殺されるより、凍死の方がマシだ!」
孫達の母親は不安そうにしていたが、結局は従って去って行った。
「俺達はどうする?」
他の人々が、どっちがマシかを考え始める。
「もう、さむいのいや~!」
ダンジョンの危険性が解らない子供達は、先程まで晒されていた寒さの方が嫌だった。
そんな中、好奇心が強い人達が、警戒心無くラウンジに向かった。
程なくして、ラウンジから悲鳴が聞こえた。




