強盗とファントム
2018.06.05 投稿
2020.04.11 第86部分に変更
◇神聖マユミ王国・ダンジョン【ヒトリ島】◇
ユティ神国の正月である八月の中頃、ユティ神国は国名を神聖マユミ王国へと名を改めた。
でも、浸透していないのか、未だに誰もがユティ神国と言っている。
私達も、『神国』の方が言い易いので、新たな国名の方で呼ぶ事は無い。
そんなある日の事、強盗がやって来た。
その男は、『魔物使い』がファントムをユティ神と偽り、金儲けをしている事が許せなかった。
だから、その金を頂こうとヒトリ島へとやって来た。
しかし、手に入れた金をユティ教の為に使う……そんな考えは毛頭無い。
現在ヒトリ島には入島制限がかけられており、一日百人までとなっている。
そして、島の宿に宿泊出来るのは、最大三十名だった。
だが、幸いにもこの日は巡礼者が少なく、男は島の宿を取る事が出来た。
宿は清潔で、従業員は身綺麗で態度も良く、食事も美味かった。
男は同じ位の値段の他の宿に泊まった事があったが、それとは比べ物にならなかった。
何故、質の割には宿代を安くしているのかと、男は訝しんだ。
それに、昼間に見たお守りの値段も安かった。
ユティ教では、もっと高値を付けている。
金儲けの為にやっているのだろうに、何故安い値を付けているのか、男にはサッパリ解らなかった。
深夜。皆が寝静まったであろう頃。
男は、宿の経営者の部屋を探してフロントに向かった。
すると、フロントに一人の女性従業員がいた。
こんな時間に起きて仕事をしているのかと、男は驚いた。
しかし、直ぐに気を取り直して、その女に案内させる事にした。
「お客様。どうされましたか?」
「大人しくしろ」
男は、オークの女の首にナイフを突き付けた。
「金は何処に在る?」
「あ」
ふと、女が入口の方に目を遣り、何かに気付いたのか声を上げた。
誰か来たのかと男も其方を見ると、ユティ神が居た。
「何だ。ファントムかよ」
男は、興味を失った様に女に向き直った。
「ほら。さっさと、出すか案内しろよ」
「え、でも……」
ファントムは、モンスターである。
決して、無害だと安心出来る存在では無い。対処出来る力が有るのなら兎も角。
「命が惜しくねえのか!?」
ファントムが、男に手を伸ばした。
「心不全と言う事で」
寝ていた所を『コール』で起こされた私は、事態を報告して対処を窺うコナラにそう答えた。
コナラは、七月末日に召喚した眷属の内の一人で、茶色い髪のオーク女性だ。
『解った』
「それにしても、ファントムだと判っていて、何で逃げなかったんだろう?」
『不思議だよね』
何で私の眷属は、私に丁寧語を使わないのだろうか?
まあ、良いけどね。
後で、メインダンジョン以外を『非殺傷エリア指定』しよう。




