表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンマスターは神様です  作者: ひつじかい
番外編:アケビア半島
82/191

マリク

2018.03.13 投稿

2020.04.11 第82部分に変更

◇アケビア半島東部・ダンジョン【ナツメヤシ園】◇


 翌日、夕方。

 俺達は、漸くマルティプライの街近くまで辿り着いた。

 街道から外れた所に、何かの建物と柵に囲まれた土地が見える。


「止まれ。この先ダンジョンが在る為、Dランク未満の立ち入りを禁じている」


 柵に囲まれた土地に近付くと、兵士にそう声をかけられた。

 ウィニクさんが、冒険者カードの裏に表示されたランクを見せる。


「これは!? Bランクの方でしたか! どうぞ、お通りください!」


 兵士達は、カードが本物かどうかも確かめずにそう言った。

 Bランクが嘘でモンスターに殺されたとしても、自己責任と言う事か?



 柵の中には、人っ子一人いない。

 もう夕方だからだろう。

 ウィニクさんが地下への階段を調べる振りをしている間、念の為に「ちょっと用足しに」と口に出してから階段の裏へ回った。


「久し振り」


 既に其処で待っていた夏芽(なつめ)から、声をかけられた。


「ああ。直に会うのは久し振りだな」


 以前直に会ったのは、前世の俺達が死ぬ前だ。覚えていないが。

 きっと、その頃とはお互い顔も違う。

 それでも、懐かしい。

 そして、この世界に独りではない事が嬉しい。


「じゃあ、時間は短い方が良いだろうし、さっさと進めようか」

「あ、ああ。ありがとう」


 夏芽(なつめ)は、側に積んであった箱を手に取った。


「これは、カップ麺」


 俺は受け取った箱を開けて、マント(ダンジョン)へ吸収していく。


「これは、レトルトカレーとかね」


 一々確認している暇は無い。


「次は、缶詰」


 俺はマントを地面に置いて、箱をひっくり返して中身を出した。


「後は、ペットボトル飲料」


 350mlばかりだった。


「お菓子もどうぞ」


 これは一応ひっくり返さずに、一つ一つ出して吸収した。

 煎餅などの袋菓子の他、ゼリーやプリンなども入っていた。


「他に何か欲しいのある?」

「いや。充分だよ」


 ついさっきまで、リストにはトウモロコシとクラーケンしか無かったのに、凄い充実したな~。


「それで、幾らかかった? 払うよ」

「え? 良いよ」

「そうはいかないだろう。お前だって、何時、全面立ち入り禁止になるか分からないんだから」

「まあ、そうだけれど」


 遠慮する夏芽にDPを受け取って貰おうと説得している所に、誰かの大声が聞こえた。


「ウィニク様?! 何故、このような場所に?!」



 急いで表に回ると、マリクが居た。

 何の用で来たのかは知らないが、ウィニクさんを見て驚いた様子だ。


「お前は、鶏の小僧!? ……ウィニク様、まさか、このような鶏如きと行動を共に?!」


 俺に気付いたマリクは、血相を変えてウィニクさんに詰め寄った。


明豆(めいず)くんを鶏如きと言うけれど、僕は穢れた猪なんじゃなかったのかい?」

「何を言うのです! 貴方様は、ヒトに変身する猪ではなく、猪に変身するヒトでしょう!」

「僕は、ヒトに変身する猪だよ。事実を受け入れなさい」


 受け入れたら、ウィニクさんと同じ(?)猪を穢れた存在にした取り返しのつかないミスを認めないといけなくなるから、嫌なのだろうか?


「何故!? これまでヒトとして生きて来たのでしょう?! それなのに、何故、未だに自分が猪だなどと言うのですか!?」

「残念だけれど、ウィニクさんはヒトとして生きる事を思い付かずに、ずっと猪の姿で生きて来たそうだよ」

「……馬鹿な!」


 ウィニクさんが言い辛そうだったので俺が代わりに言うと、マリクはとてもショックを受けた様で、呆然とした。




「それにしても、マリクって未だウィニクさんを崇めているのか?」

「未だとは何だ! 私は、ウィニク様に助けられて以来、ずっとウィニク様一筋だ!」

「へ~。つまり、ウィニク教の信者が、ウィニクさんを住処から追い出したら、『信仰(あつ)い素晴らしい信者だ』って褒めるんだな。お前は?」

「そんな訳は無いだろう! ふざけるな!」


 俺の言葉に、マリクは激怒した。


「何で? お前がやった事だろう?」


 そう言うと、マリクは焦ったようにウィニクさんを見た。


「いや、違うのです! 私は、貴方様がより良くなるようにと」

「恐れ多いと思わないのか?」

「煩い! 黙れ! 私は、ウィニク様と話しているのだ!」


 ウィニクさんが口を開く。


「マリク。君が信仰しているのは、僕じゃないよね?」

「私が、貴方様以外の何を信仰すると言うのです!?」

「君は、自らの『理想の神』に、僕の名を付けただけ。僕を信仰している訳じゃない」

「違う!」

「でも、僕を君の『理想の神』と同一だと思いたい君は、同じ名前なのに『君の理想の神』との相違点がある僕を受け入れられなくて、変えたいんだね。けれど、僕を『君の理想の神』だと思い込むのは、ウィニク教が禁じている偶像崇拝だよ」


 偶像崇拝禁止って、『神の形を造ってはならない・神以外を崇拝してはならない』だっけ?


「貴方がっ! 貴方が、私の信仰を否定するのか!」

「でも、お前の『理想の神』は、猪のウィニクさんじゃなくて、ヒト型の神なんだろう?」

「それは……」


 良い言い訳が見付からなかったのか、マリクは頭を抱えて叫ぶ。


「あいつが! ローディーが悪いのだ! あいつが、ウィニク様を猪になどするから!」


 ロードアーク様を神だと認めちゃってるよ。


「そう言えば、何でロードアーク様を信仰しないんだ? ヒト型だぞ?」

「あいつは、亜人共の神だから駄目だ! 劣等種共と同じ神を信仰など出来るか!」」

「そうなんですか?」


 俺は、隣でナツメヤシの実を食べているロードアーク様に尋ねた。



「って、ロードアーク様?! 何時から居たんですか?!」

「マリクがこのダンジョンに足を踏み入れた頃なり」


 そんな頃から?!


「来たなら来たと言ってくださいよ」

「前向きに考慮する」


 あ。これ、次も黙って隣とかに居るな。


「それで、ロードアーク様は亜人達の神なんですか?」

「我は、亜人限定の神に在らず」

「ですよね。つまり、マリクは、人間だけを偏愛する神が欲しい訳か」

「当然だろう! 劣等種共と平等などありえん!」


 劣等種ねえ?


「亜人って、ヒトより劣っているんですか?」

「異なる種族間で優劣など付けるものではない」

「ですよね」

「ヒトの体が一番美しく、完成されている! 獣人や竜人など、まるで、モンスターではないか!」


 マリクの主張に、俺は首を傾げる。

 劣等って、能力の事じゃなかったっけ?


「ロードアーク様は、どう思います?」

「我にとっては、『取っ手の無いカップ』と『取っ手が一つのカップ』と『取っ手が二つのカップ』位の違いでしか無い」

「だから、ローディーでは駄目なのだ!」

「ウィニクさんは、どう思います?」


 俺は、ウィニクさんにも聞いてみた。


「顔が一番美しいのは、エルフ種だよね」

「大人になれない未熟者ではありませんか!」


 お前の信仰する神様の審美眼を、否定するのかよ。


「ウィニクさんも人間偏愛していないみたいだし、他の神様信仰したら?」

「私は、ウィニク教から改宗などしない!」


 そんなに、ウィニクさんが『理想の正しい神』じゃない事を認めたくないのか?


「そうだ!」


 マリクは、何か良いアイディアを思い付いたのか、顔を輝かせた。


「ローディー! ウィニク様をヒトに転生させるのだ!」


 自分が信仰する神を殺してくれってか。引くわ~。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ