食材ゲット!
2018.03.05 投稿
2020.04.11 第80部分に変更
◇アケビア半島南部・港町(続き)◇
俺達は、船に乗る為に海辺に移動した。
浜には、海藻が打ち上げられていた。
「ワカメと昆布だ~。美味そう~」
「え? そんなの食べるの?」
俺の言葉に、ウィニクさんが驚いた様に尋ねた。
どうやら、この国ではワカメや昆布を食べないようだ。
「俺がダンマスになる前、人間だった頃住んでいた国では、普通に食べられていましたよ」
「え~。消化出来ない物、良く食べるね」
「え?! 出来ないんですか?!」
「え?! 出来るの?!」
驚き合う俺達。
異世界人だから消化出来ないのか? それとも、消化出来ない品種なのか? まさか、地球でも消化出来ない体質の人が珍しくないのか?
小さな船で出港すると、直ぐにクラーケンが出て来た。
巨大なイカの触腕が船に巻き付き、メキメキと破壊される。
クラーケンの出現は本当に直ぐだったので桟橋からそれほど離れておらず、ウィニクさんが俺と操縦士を抱えて桟橋へ飛び移った。
獲物が逃げたので、クラーケンは追って来る。
百万ボルトの電圧が、クラーケンを直撃した。
「流石ですね、ウィニクさん」
「ちょっとやり過ぎたかな」
ウィニクさんの視線を辿ると、街の住民達が平伏していた。
「お、おおお、お許しを……!」
何をこんなに恐れているのだろうか?
「ウィニクさん。あの魔法、Bランクなら普通なんですよね?」
「多分。Bランクの雷魔法を見た事無いけれど」
「偉大なる神とは知らず、とんだ御無礼を……」
俺達が小声で話していると、そんな事を言われた。
「あ~……。俺が名前呼んだの、聞かれたんですね。済みません」
「それは別に良いけど。よく、神の名を騙る不届き者だと思わなかったねと思う」
「偽者じゃないと判断される様な心当たりは?」
そう問うと、ウィニクさんは考え込んだ。
「そう言えば、ウィニク教の聖書に、僕が雷魔法で街二つ滅ぼした話が載っていたね」
街を滅ぼした?!
「それは、事実なんですか?」
「ううん。滅ぼしたのは一つだよ」
其処かよ。
「何で滅ぼしたんですか?」
「……口にするのも憚られる様な忌々しい行為を、神の名の元に行っていたからだよ。まるで、悪魔崇拝者の様だった」
乱交とか人肉食とかだろうか?
「顔を上げなさい。滅ぼすつもりならば、クラーケンを倒したりはしない」
「お、お許しくださるのですか? 感謝致します!」
「感謝致します」の大合唱。
ウィニクさんが神だとばれた事だし、食料を大量に与える。
その後、トウモロコシのパンを作ったのを分けて貰い、ダンジョンへ吸収。
問題は、これからの食料調達だが、クラーケンが居なくなったので漁が出来る。
船で他の街まで行く事も可能だろう。
そう思っている視界に、クラーケンが入っている。
俺は、ふと疑問に思った事をウィニクさんに尋ねた。
「クラーケンって、食べられますか?」
「毒とかは無いけれど、見た目が悪いから食べたがる人はいないよ。臭いし、特に美味しい訳でもないしね」
「美味しくないんですか……」
残念だな。
「あ。でも、不味いって訳では無いんですよね?」
「まあ……。食べさせる気?!」
何としてでも止めなければと思ったのか、ウィニクさんは真剣な表情になった。
「別に、宗教的なタブーじゃないんでしょう?」
「まあ、そうだけれど」
「食べたくないかどうか、聞いてみないと判らないですよね?」
「まあ、そうだね」
「でも」とウィニクさんは続けた。
「僕等が食べるか聞いたら、食べたくなくても無理して食べるよね?」
「ああ。そっか。そうですよね」
神様とその従者だもんな。
「じゃあ、俺だけ食べようかな」
「好きにすると良いよ」
俺は、クラーケンの焦げていない部分の身を薄く削ぎ取ろうとしたが硬くて歯が立たなかったので、ウィニクさんに切って貰った。
クラーケンの身が硬いのは魔力の所為だそうで、死後暫くして魔力が抜けると人間でも咬める硬さになるらしい。
小さくカットされた物を【鑑定】し、寄生虫を取り除く。
確か、酒で臭い消し出来るんだったよな?
料理酒を交換して、クラーケンの一部を漬ける。
そして、茹でたり・干したりして、ダンジョンに吸収。
余った物を食べた。
うん。ウィニクさんの言う通り、不味くは無い。
「どうだい? そんなに美味しいものじゃないだろう?」
「そうですね。でも、トウモロコシばっかりじゃ飽きるので」
「ああ。そうだね。でも、僕はクラーケンはいらない」
苦手ならば、無理に食べさせはしないよ。
「ああ。そうだ。次の街への同行者がいるけれど、良いかな?」
「買い物に行くんですか?」
「ううん。新しい領主だよ。代替わりしたから、制裁を解いて欲しいって訴えに行くんだって」
「ああ。それは連れて行ってあげないと、ですね」
そんな訳で翌日。
領主と従者を連れて砂漠を行く。
領主も従者も髭を生やしていた。
そう言えば、この国で髭を生やしていない男を見た事が無い。
「ところで、ウィニクさん。この国は髭を生やしている人ばかりですが、何か理由でもあるんですか?」
「ん? 理由って言うか、大人の男には普通に生えるものだからね。全部剃っている人は、大人である事を拒絶しているか・男である事を拒絶していると思われるんだよ」
え? 俺、そんな風に見られてたのか?
「俺も生やした姿に変身し直した方が良いですかね?」
「子供は生やさなくても問題無いよ」
子供? 誰が? 俺が?!
「……俺って、何歳に見えているんですか?」
「13・4歳位?」
「18歳位に変身したつもりなんですが」
「え? そうなのかい? 14歳と言う事にしておいたら?」
「……そうします」
髭を蓄えておきたい願望は無いので、年を誤魔化す事にした。
あれ? 今の俺の年って、もしかして、転生してからの年数? 0歳なのか?
「指導者様」
休憩中、そう領主に話しかけられた。
「指導者って?」
「神に選ばれ、神の教えを人々に広めるお方ですが……。貴方は、指導者様ですよね?」
「いや、俺は……」
とっさに否定しかけたが、何と説明しよう?
「彼は指導者では無いよ。神の眷属だ」
ウィニクさんが代わりに訂正してくれたけれど、眷属?
ウィニクさんの言う神って、ウィニクさんが信仰している神様だよな?
「天使様でしたか。これは、ご無礼を……」
「いや、良いけど。それより、俺に何か?」
「は、はい。この度の感謝の供物を用意出来ませんでしたので、何方にお届けすればと……」
俺に聞かれてもな~。
そう思って、俺はウィニクさんに視線を向けた。
「供物はいらない。神に恥じない生き方をしてくれれば良いよ」
悪い事しない様にって事かな?
「は……。肝に銘じます」
次の街で領主達と別れ、俺達はマルティプライへ向かった。
到着前日に夏芽にコールし、翌日到着する事を伝えた。
『ところで、ウィニクさんって信用出来るの?』
「多分」
俺のダンジョンエリアに居た時、ウィニクさんに嫌な感じは無かった。それを信じたい。
今までの言動で信じろ?
いや、まあ、良い人だろうとは思っている。でも、俺、演技を見抜く自信は無いんで。
『そう。まあ、私は、念の為ダンジョンから出ないからね』
「良いと思うよ」
『じゃあ、マルティプライの街の近くに【ナツメヤシ園】があるから、其処ね。直ぐ分ると思う』
「解った。じゃあ、また明日」
『うん。お休み』




