ディバイドの街
2018.02.22 投稿
2020.04.11 第78部分に変更
◇アケビア半島南西部・ディバイドの街◇
翌日。
俺達はディバイドの街に辿り着いた。
城壁に囲まれているのは、魔物対策だろう。
因みに、ウィニクさんが同行して以降、モンスターに襲われる事は無かった。
嫌な気配が近付いて来ても、去って行く。
理由をウィニクさんに聞いたら、大抵のモンスターは強過ぎる相手を襲う事は無いのだと教えてくれた。
ウィニクさんがLv72なので、襲って来ないと言う訳だ。
しかし、人間はモンスターより感覚が鈍いので、盗賊等は実力差が判らず襲って来るそうだ。
「この国では、街に入る時はお金を払わないといけないんだよ」
「へ~。そうなんですか」
盗賊団の根城で手に入れた金があるから、被害者には悪いが有り難く使わせて貰おう。
街の中は、石造りの建物ばかりに見えた。
大きくて立派な建物の屋根は丸い。ドーム状だ。
武装した人間が多く見受けられるが、鎧に統一感が無い。
何処かの組織に属している訳ではないのだろう。
「あんた等、盗賊に襲われなかったのかい?」
その内の一人に声をかけられた。
さて、どう答えよう?
「誰かが退治したんじゃないですかね~?」
「それが本当なら、こっちは商売上がったりだな!」
「懸賞金でもかけられているんですか?」
「ああ。そうだよ」
懸賞金か……。倒した証拠が無いから、貰えないな。残念!
宿屋を探して街の中を歩いていると、物乞いが至る所に居た。
「ウィニク教では、貧しい者に施しをすると天国へ行けるとされているんだよ」
「へ~。その割には、誰もお金上げませんね」
たった数分しかみていないが、大勢の人が行き交っているのに一人もお金を与えていない。
「まあ、回数が指定されている訳ではないからね」
年に一度とか、一生に一度とか?
「いらっしゃい。偉大なるウィニクを讃えん」
宿屋に入ると、そう挨拶された。
「二人部屋お願いします」
「二人部屋だと、同性愛者だと思われるよ」
「え?! そうなんですか?!」
ウィニクさんの言葉に、俺は驚いた。
何で、『二人部屋に泊まる=カップル』なんだよ!
「じゃあ、一人部屋を二つ」
「金はあるのか?」
失礼な従業員だな!
俺は、金が入っている革袋をカウンターに置き、奴から見える様に中を確認する。
勿論、宿に泊まるに十分な金はある。金貨も入っているし。
「無いので止めておきます」
「あ! ちょっと!」
俺は、従業員の制止の声に耳を貸さず、ウィニクさんを促して宿を出た。
二軒目。
「いらっしゃいませ。偉大なるウィニクを讃えん」
「一人部屋二つ」
「悪いが満室だ」
満室じゃしょうがないな。
そこへ、男性客が入って来た。
「いらっしゃいませ。偉大なるウィニクを讃えん」
「偉大なるウィニクを讃えん。……一部屋頼むよ」
「はい。空いてます」
うん?
「どうやら、異教徒差別の様だね」
「そのようですね。ウィニクさんは、あの挨拶は?」
「あれは、旧ウィニク教の挨拶じゃないよ。旧ウィニク教の神は、僕じゃないし」
「そうなんですか?」
「うん」
意外だった。
自分の名を冠しているから、てっきり、自分を神とする宗教を作ったのだと思っていた。
「どうする? ウィニク教徒の振りをする?」
「いえ。野宿します」
幸いマントのダンジョンがあるから、安全に野宿が出来る。
「ウィニクさんは?」
「僕も野宿で良いよ」
俺達は、野宿する場所を探して歩いていた。
「そろそろ夜市が開く筈だけれど、どうする?」
「そうですね。見てみますか」
活気のある市場を眺め、食料を買い漁るかと考えて、露店の一つに近付いた。
「いらっしゃい! 偉大なるウィニクを讃えん!」
またか。
「一つください」
「はい! 一つね!」
男はバナナらしき物の内、痛んでいる物を選んで寄越した。
「60銅貨だよ!」
さっき二本買った客と同じ値段だな。
「こっちの綺麗な物が良いな」
「……120銅貨」
更に倍になったな。
そう言えば、街に入る時もあの挨拶されたし、ぼったくられたんだろうな。
「高いので止めておきます」
俺達は市場を立ち去った。
あの時、トウモロコシを手に入れる事が出来て良かった。
ああいう奴等に金を払わずに済む。
裏路地の行き止まりに、ダンジョンであるマントを敷き壁を設置した。
茹でたトウモロコシとトウモロコシのスープを飲んで、さっさと寝る。
「そう言えば、マリクって、元は旧ウィニク教徒だったんですか?」
寝る前に、ふと、昨日の話を思い出して、ウィニクさんに尋ねた。
「そうだよ」
「え~。それなのに、豚食べたんですか。しかも、腹壊したのは神罰だとは思わなかったんですよね?」
「そうだね~」
「全然、敬虔な信者じゃないですね」
「そりゃあ、敬虔な信者だったら、他の神を唯一神とする宗教なんて作らないよ」
「確かに」
当然の事を気付かされて、納得する。
「でも、恩人が信仰する神を否定して、恩人の宗教を改変して、恩人を神にして、挙句の果てに恩人を家から追い出す心理が理解出来ないですね」
「僕も出来ない」
あいつを理解出来たら良いなとは思えないが。
「明日は馬車乗り場を探しましょう」
「そうだね」
「きっとぼったくり価格でしょうけれど、徒歩で行きたくないから仕方ないですね」
「うん」




