猛獣との遭遇
2020.02.17 投稿
2020.04.11 第76部分に変更
◇アケビア半島・???(続き)◇
馬車の問題は、ディバイドの街で金を稼いで馬車に乗れば良いという事で解決した。
後の問題は、プチサブダンジョンコアを何に付けるかだ。
滞在させるにしろ、死体を吸収するにしろ、人が入る大きさでなければならない。
それでいて、持ち運びが出来る物……。馬車以外に何が?
あ、自動車がある。……運転出来ないから駄目だな。
まあ、メインコアと違って、起動させなくても死なないから今直ぐ決める必要は無いけれど。
街に行く為に、人の姿に変身する。
服込みで変身すると、変身直後裸でない・服を用意する手間が無い等の利点があるが、風呂に入ったり・用を足す際は、元に戻るか・脱いだ姿に変身し直さなければならないという欠点がある。
これって、服も体の一部なのだろうか? 切られたりすると、ダメージを受けるのだろうか?
試しに服を捩ってみたが、痛く無かった。
と言う事は……、何だろう? 魔力?
メニューで自分の姿を確認出来るようだったので、開いてみる。
マリクの服を参考にしたのだが、おかしくないだろうか?
つーか、あっつい! もう夏なのか?!
俺は日差しを遮るべく、マントをDPと交換した。
あ! これ、良いんじゃないか? 人が入るし、持ち運べる。駄目なら、設置し直せば良いし。
俺は、プチサブダンジョンコアをマントの内側に設置した。
さて、出発だ。
俺のダンジョンは高地に在り、現在地からも街を見下ろす事が出来る。
街の向こうに見えるのは、もしかしなくとも砂漠だろうか? あっちだよなあ、東?
砂漠横断は嫌だぞ。
街に向かって降りて行くと、壊れた馬車と倒れた人々が……生きていなさそうだ。
見るも無残な遺体の中には鎧を着た者もあったので、馬車の護衛だろうか?
一応確認したが、生存者はいなかった。
何に襲われたのか判らないが、所々食べられたようだったので、十中八九、人以外だろう。
グロ耐性は無かった筈なのに平気なのは、ダンジョンマスターになったからだろうな。
彼等と彼等の遺族には悪いが、ダンジョンに吸収させて貰う。
何か食料は無いかと馬車の中を見たが、中も荒らされており、残されていなかった。
唯一、トウモロコシが一本だけ物陰に落ちていた。
それをダンジョンに吸収していると、外に何か嫌なものが居る気がした。
気の所為だろうと思って外に出ると、猿がいた。
只の猿では無いだろう。角が有るし。チンパンジーに似ていた。
たかが猿と侮るなかれ。チンパンジーは猛獣である。人間が襲われて食われる事もあるのだ。
そんなチンパンジーに似ているモンスター。チンパンジーより弱い訳がない。
どうしたら良い?! どうしたら?!
逃げようと辺りに目を走らせ、俺は愕然とした。
囲まれている!
直後、モンスター共が一斉に俺に向かって来る。
どうしようもなくて、地面に蹲った。
あれ?
衝撃は感じるが、痛みが無い。
俺は、苛立つ猿共の咆哮を聞きながら、何故なのかを考える。
そう言えば、このマント、ダンジョンだった。
だから、なのだろうか?
どれだけ時が経ったのか。攻撃が止んだ。
しかし、モンスター共が去ったとは限らない。
去ったと思わせて、俺が顔を出した所を攻撃するつもりでいるかもしれない。
どうすれば良いのか分からないので、俺は夏芽にコールした。
『どうしたの? 何か、近いし! 暗いし!』
蹲っているので、顔を離せないので仕方ない。
「実は……」
俺は今の状況を説明した。
『なるほどね~。其処って、あんたのダンジョンエリア?』
「ああ」
『じゃあ、敵が近くに居たら判る筈だよ』
「え?」
じゃあ、さっき感じた嫌な気配はそれだったのか?
外の気配を感じ取ろうとしてみる。
何も感じない。
モンスター共は去ったのか、それとも、俺が未熟で感じ取れないのか?
そうだ!
俺は閃いて、手鏡を交換した。
「ふ~」
マントの隙間から出した手鏡に外の様子を映して、モンスター共が居ない事を確信した俺は、背を伸ばして息を吐いた。
「夏芽、ありがとな」
『どう致しまして』
日が暮れ始めた頃、洞窟を見付けたので、其処で休む事にした。
奥行き数メートルの洞窟の入り口にマント(ダンジョン)を敷き、入口を塞ぐように壁を設置する。
調味料や調理器具はリストから消されていないので、トウモロコシを料理する事にした。
先ず、トウモロコシを交換し、皮を剥いてヒゲを取り、吸収。
これで、一々剥いたりする手間が省ける。
次に、皮付きの物を茹でて、吸収。
芯から粒を取って、吸収。
焼きトウモロコシを作って、吸収。
そう言う感じで色々作って、夕食を取った。
「風呂入りて~な~」
DPで交換出来るようだったが、節約した方が良いだろう。
今の所まだ沢山あるが、油断して気が付いたら有りませんじゃ困る。
お湯で濡らしたタオルで体を拭いて、ふと思った。
変身した体を拭いて、本来の姿は綺麗になるのだろうか?
……まあ、今日は良いか。
まだ眠くないので、メニューを眺める。
『ヘルプ』タブを選択して、検索バーに『アケビア半島』と入力してみた。
アケビア半島
ハッサク大陸の数ある半島の一つ。アイリス大陸の北東に位置する。
中央に広大な砂漠が在る。
アケビア王国の領地。ウィニク教が信仰されている。(ヘルプより)
え? 広大な砂漠が在る?
昼に見たあの砂漠だよな? そんなに広いのか?
地図を表示して縮尺を変えてみると、アケビア半島全体が表示された。
砂色の部分が砂漠だろうか? 中央と言うか、殆ど砂漠だ。
夏芽のダンジョンには、砂漠を迂回して向かった方が良いだろう。
次は、『ウィニク教』と入力する。
ウィニク教
ウィニクという神を崇める宗教。
開祖マリクが、ウィニク神から天啓を受けてその教えを広めたとされている。
アケビア半島のプラス砂漠の中央を聖地としている。
聖獣は猫。猪と豚を穢れた存在としている。(ヘルプより)
開祖のマリクって、あの男か? それとも、同名の別人?
今度は、『ウィニク神』と入力した。
ウィニク神
ウィニク教の神。
アケビア半島のプラス砂漠の中央に位置するダンジョン【豊作の森】のダンジョンマスター。
旧ウィニク教の開祖。
旧ウィニク教?
検索してみる。
旧ウィニク教
かつて、アケビア半島の一部で信仰されていた宗教。
マリクが広めたウィニク教に取って代わられた。
開祖は、ウィニク。聖獣は、猪と豚。(ヘルプより)
え? 元々のウィニク教で猪と豚が聖獣なのに、今のウィニク教では穢れた存在になっている?
どう言う事だ? 開祖マリクは、ウィニク神を信仰している訳じゃないのか? 何の目的で、ウィニク教を変えたんだ?
しかし、俺には関係無いな。多分。
さあ、寝よう。
翌日。
壁を撤去し、マントを身に着けた俺は、街へ向かって出発した。
だが、数分も経たない内に、足を止める。
猪が倒れているのを目にしたからだ。
猪は、猛獣だ。
倒れている理由が判らない。寝ているだけかもしれない。
俺は、起こさない様ゆっくりと後退った。
「お腹減った……」
喋った?!
俺は驚いて、変身が解け・飛び上がった。
こんなにビビりでは無かった筈なのに。鶏になったからだろうか?
そして、こいつは何なんだ? モンスターか? それとも、ダンジョンマスターか?




