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ダンジョンマスターは神様です  作者: ひつじかい
番外編:アケビア半島
75/191

プチサブダンジョンコア

2018.02.15 投稿

2020.04.11 第75部分に変更

◇アケビア半島・某所◇


 ダンジョンマスターになった日。

 俺は、途方に暮れて佇んでいた。



 

 意識が覚醒した後、体に違和感を感じて見下ろしてみれば、明らかに人間では無い体になっていた。

 鳥の足・鳥の翼が目に入ったのだ。

 視界の高さからしても、獣人ではなさそうだった。


 恐らく鳥になった事に呆然としていると、アナウンスが入った。


<ダンジョンコアが仮起動中です。数日以内にダンジョンを作成して本起動させないと、貴方は命を落とすでしょう>


 我に返り、慌ててメニューを開いた。

 ええ?! 如何すれば良いんだ?




 四苦八苦しながらも、音声操作で『地下迷宮遺跡セット』とやらを選択して作成した俺は、ホッと一息を吐いた。


「お前がこのダンジョンのマスターか」


 突然聞こえたその声に、驚いた俺は飛び上がった。


「私は、マリク。人の姿に【変身】し、私とダンジョンバトルをしろ」


 え、何? 道場破り? 何なのか知らないけど、嫌だよ!


 因みに、マリクと言う男は、灰褐色の髪をして同じ色の長い髭を生やした褐色の肌の老人だ。

 しかし、外国人(白人?)は老けて見えると言うし、紫外線を多く浴びると老け易いとも聞くし、髭も老けて見えるらしいし、実際老人なのかは判らない。


「聞こえないのか?! 鈍間(のろま)め!」


 いい年して、初対面で失礼な奴だな!


「ダンジョンバトルするのか?」


 マリクとは別の男の声に驚き、俺はまた飛び上がった。

 だ、誰だ?!


「我が名はロードアーク。ローディーとも呼ばれる。アディアの創造神にして、ダンジョンマスターの神祖なり」


 マリクとは違って、髭を生やしていない若い男だった。

 髪と目の色は……紫色だろうか? はっきり言えないのは、赤紫になったり、紫に戻って青紫になったり、流れる様に変化するからだ。それでいて、目に煩いと感じないのだから、不思議なものだ。


「私は、貴様を神とは認めない!」

「左様か。事実は変わらぬが」


 そうだよな。神話や宗教・その他人間の主張がどうあれ、この世界が存在する限り、この世界の創造神が変わる事は無いよな。



「さて、ダンジョンバトルを行うにあたり、勝利の暁に望む物を上げよ」

「やるって言ってないんですけど!」

「ならば、お前がその気になるまで、このダンジョンに居座ってくれる!」


 俺が力一杯主張すると、マリクは駄々を捏ねた。


「ロードアーク様。如何すれば良いんですか、これ?」

「ダンジョンバトルを受けるか、自力で追い返すかだな」


 え~。


「じゃあ、受けます」


 俺は、軽率にもダンジョンバトルを受けてしまった。




 結果は敗北である。素人が玄人に勝つのは難しい。

 負けた俺は、ダンジョンを追い出されてしまった。

 その上、眷属召喚リストと武具リストを空にされ、飲食物も水以外リストから削除されてしまった。

 そう言う訳で、途方に暮れているのだ。


 さっさとおっさんに帰って貰いたかったからって、何で俺は、こんな賭けを呑んでしまったのか……。

 ハンデ足りなかったと思うんだよね。

 だって、俺、ダンマスになったばかりだよ? 右も左も判らない素人だよ? ノウハウ有る人に勝てる訳無いじゃん!


「一理ある」


 突然聞こえた声に、俺は、吃驚して飛び上がった。

 因みに、ダンジョンバトル中は人間に変身していたが、今は鳥の姿に戻っている。

 此方の方が落ち着くからだ。


「ロードアーク様。帰ったんじゃなかったんですか?」


 鳥のままでも喋れるのは、ダンジョンマスターだからなのか、それとも、喋る鳥型モンスターなのか?


「うむ。再訪した」


 何の用だろう?


「其方の言う通り、ハンデが足りなかった。故に、之を授けよう」


 ロードアーク様は、ダンジョンコアを小さくしたような光る玉を取り出した。


「プチサブダンジョンコアだ」

「何ですか、それ?」

「サブダンジョンコアは、ダンジョンエリアに隣接せぬ地にダンジョンエリアを得た場合、其処にダンジョンを建造する為の物」

「へ~」


 ダンジョンバトルで、ダンジョンエリアを賭けて勝った場合かな?


「プチサブダンジョンコアは、(ごく)小型のダンジョンしか造れぬが、代わりに持ち運び可能。他者のダンジョンエリアにも持ち運べる」

「え?! どうやって?!」

「例えば、馬車のダンジョン化」

「なるほど! ……あれ? そう言えば、プチサブダンジョンコアが無いと、俺、どうなるんですか?」


 俺は漸くその点に気付いて、質問した。


「ダンジョンマスターは、DP(ダンジョンポイント)を消費する事で、飲まず食わずでも活動出来るが、DPを入手せねば、やがて尽きて死ぬ」


 ダンマスって、不思議生物だな!?


「だが、ダンジョンコアが破壊されぬ限り、一年後に復活する」

「マジで?! DPって、どうやって入手するんですか?!」

「基本、ダンジョンに死体を吸収するか、ダンジョン内に生物が一定時間滞在するかだな」


 え? 死体吸収? 殺人? 完全犯罪?

 ちょっと、やりたくないな……。

 でも、小さいダンジョンで滞在と言っても……。


「では、健闘を祈る」

「え?!」


 質問が終わったと思ったのか、ロードアーク様は帰ってしまった。


「どうしよう?」




 取り敢えず、何にプチサブダンジョンコアを付けるか、交換リストを見て考える事にした。

 ふと、『コール』と言うタブに目が留まる。

 コールって、『呼ぶ』とか『電話』とかの意味だよな?

 表示してみる。


 クリサンセマム皇国エリア

 ・服衣(ふくい)(かざる) ファッションの街

 ・小鳥(おどり)歌音(かのん) 劇場

 ・彫石(ちょうこく)美絵(みえ) 美術館

 (後略)


 リストを流し見して行くと、俺の名前があった。


 アケビア半島エリア

 ・軽守(がるす)明豆(めいず) (ダンジョン名未定)

 (後略)


 知らない名前だ。でも、解る。これが、今の俺の名前だと。

 変わった名前だなあ。


 俺は、何気なくその下の名前に目を遣った。


 ・售笥(うるす)夏芽(なつめ) (ダンジョン名未定)


 幼馴染で、小・中・高と一緒だった友人。

 そうだ! マリクは、夏芽の所にも行くかもしれない!

 俺は、夏芽に教えようと『コール』した。




『はい。夏芽です。……あんた、鶏になったんだ~』

「お前は牛かよ」


 画面に映し出された夏芽の姿は、牛だった。

 因みに、ホルスタインでもジャージーでも和牛でも無い。


「何牛?」

『オーロックス』


 知らないな。


『それより、どうしたの? ダンジョンの造り方が解らないとか?』

「実は……」


 おれは、マリクの事等を話した。


『え~。どうしよ……? あ!』


 夏芽は少し考えて、何かを思い付いたらしい。


『男子禁制エリア指定。……これで、良し!』

「何をしたんだ?」

『私のダンジョンに、男が入れないようにしたの』

「へ~。俺には使えない手だな」


 俺も入れなくなってしまう。


『そう言えば、あんたのダンジョンのコアって、今、簡単に壊せる状態なんじゃ……?』

「『地下迷宮遺跡セット』にしたから、ダンジョンボスがやられない限りは大丈夫じゃないか?」

『ああ。なら、絶対じゃないけれど、大丈夫だろうね』


 ダンジョンボスを倒せる奴が来ませんように。

 俺は、気休めに祈っておく。


『ところで、食べ物のリスト、空にされたんだったよね?』

「ああ」

『じゃあ、うちに来なよ。この国に無い食べ物、譲って上げる』

「良いのか?! で、お前のダンジョン、何処?」


 持つべきものは、友達だな!


『えっと……。マルティプライの街近く』

「……それは、何処だ?」

『え~っと、あんたのダンジョンは?』


 俺は、メニューで地図を見た。


「ディバイドの街近く」

『じゃあ、そこから、東。アケビア半島を横断して』


 え? アケビア半島横断? え? 徒歩で?


「馬車出さないと……」

『御者は?』


 居ねえよ! うわ~ん!

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