新年
明けましておめでとうございます。
2018.12.03 猫神社が在る国と皇国の新年が同じ日なのはおかしいかと思って、「うん」を「ううん。違うけれど」に変えました。
◇ユティ神国・ダンジョン【ヒトリ島】◇
「明けましておめでとうございます」
ある日。
和服を着た水海達がやって来てそう挨拶され、私は「ああ。正月か」と気が付いた。
因みに、ユティ神国は、まだ正月では無い。
これは、日付が変わっていないと言う意味では無く、ユティ神国の正月は、ユティが建国した日だからなのだ。
ユティ神国の暦では、今は六月である。
冬なのに六月って、凄く違和感ある。
「おめでとう。随分カラフルだね~」
皆、髪と同じ色の袴を穿いている。
あれ? 何か違和感がある……?
「ねえ? それ、普通の着物だよね?」
「ううん。ボタンで留めるタイプのベビー服よ」
飾が、違和感の正体を教えてくれた。
「ウエストゴムタイプの袴もどきや、背中ファスナーの着物ドレス、袴風のスカートもあるわ」
「そうなんだ」
ベビー服を着る事に抵抗が無いんだね。大人に変身すれば良いのに。
「コドクの着物も持って来たのよ」
私は、飾が差し出した着物を受け取った。
「聖獣コドクの柄にしてみたわ」
「……ありがとう。でも、着付けが解らないんだけれど」
「大丈夫。着付けが出来る眷属を連れて来たから」
う~ん。着物って、姿勢良くしないといけないから、苦手なんだよね。
着付けと化粧とヘアセットをして貰って、姿見を見た。
ちょっと尖った耳の背の低い少女が、緑色の着物を着て映っている。
普段着ない服を着て、普段しない化粧までしているから、自分じゃないみたい。
「お待たせ」
「似合ってるよ~」
水海達が褒めてくれる。
「ありがとう。で、これから、どうするの?」
「う~ん……。王子と姫から、お年玉を貰いたいんだけど」
「あの二人、被害者や被害者遺族に虐待されているから、お金無いよ」
「うん。解っている」
「お年玉が欲しいなら、ロードアーク様から貰ったら?」
「断られたの~」
既にお強請り済み?!
「まあ、俺達DP多いからな~。上げる方だよな~」
遊夜が物解り良くそう言うが、水海は納得しなかった。
「え~。ロードアーク様よりは少ないよ~」
それはそうだけれど。
「諦めろ。じゃあ、初詣に行こうか」
水海の兄だった天地がそう言った。
「皇国に?」
「いや。其処の神殿に」
「ご利益無いよ」
ファントムだからね。
「解っているよ」
「【猫神社】に行こうよ」
遊子が別の提案をした。
「【猫神社】?」
「巫女のダンジョンだよ」
「へ~。それって、現地の猫の神様を祀っている訳じゃないんだよね?」
「うん。ただ猫が一杯居るだけだよ」
猫好きを集める為のダンジョンかな?
「じゃあ、巫女に『コール』するぞ」
『はい。巫女です。天地、何の用?』
映し出された巫女は、猫耳の様なお団子ヘアをしていた。
「これから、初詣行って良い?」
『良いけれど、ご利益無いよ』
「解っている」
『そう。でも、どうやって来るの?』
「転移魔法で」
『へ~。凄いね。エルフみたい』
「まあ、エルフ種だし」
そんなやり取りの後、私達は【猫神社】を訪れた。
◇???・ダンジョン【猫神社】◇
「ようこそ。【猫神社】へ。あけましておめでとう」
「「「「「「「「「おめでと~」」」」」」」」」
巫女服を着た巫女(巫女では無い。ややこしいな!)に、声を揃えて返事をする良い子達。
息ぴったりだな~。
「明けましておめでとう。こっちも新年?」
「ううん。違うけれど。甘酒どうぞ」
甘酒を飲みながら、辺りを見回す。
そこかしこに猫がいた。
「何か、違和感」
「野生の猫が混じっているからかな?」
ボソッと呟くと、巫女が疑問を解消してくれた。
「野生の猫なんているんだ~」
「……うん」
何か、生温かい目で見られている気がする。
「ヤマネコとか知らないの?」
私は、水海の質問でその存在を思い出した。
「あ! そうか! 忘れてた!」
恥ずかしい! って、言うか、私の記憶力、大丈夫?!
「まあ、善哉でも食べて~」
「ありがとう」
「食べ物で慰めるなよ。もっと太るから」
「太らないよ! 失礼な!」
私は、失礼な事を言った天地に怒鳴った。
◇クリサンセマム皇国・ダンジョン【住宅展示場】◇
その後は皇国に移動し、厄払いだと羽根突きをしたり、願いを込めて凧揚げをしたり、百人一首などのカルタ・福笑い・双六・独楽回し等をした。
「あ。そうだ。正月と言えば初売りの福袋だけど、やるの?」
「そうね。皇国でも似たような事はやっていたから、同じような金額でやるわ」
「うちも。お土産の福袋~」
「ああ。うちも」
飾と水海と天地が福袋を売るらしい。
「因みに、大晦日と正月三が日は、基本的に、皆休みにした。転移陣も、緊急の用事が無ければ使わせない様にして」
「まあ、うちはやってるんですけどね!」
療のダンジョン【病院】だけは、年中無休らしい。
「お疲れ様です」
◇ユティ神国・ダンジョン【ヒトリ島】◇
時は経ち、七月(神国では十二月)の末日。
「マスター! 大変だ! 対岸の街に、かつて無い程の信者が集まっている!」
カシがそんな事を伝えに来た。
「は?! 何で?!」
「明日、新年だから!」
忘れてた!
「どうしよう!? 眷属増やさなきゃ!」
「そうだな」
「入島制限した方が良いんじゃねえか?」
「それ!」
私は、カシのアイディアを採用する。
「え~っと、船着き場にマツと補助一人。神殿に二人。授与所に私と補助一人。土産物屋にカシと補助一人。宿に一人。聖獣牧場に一人。合計七人必要か」
「交代要員は?」
寝る前に朝食を食べていたカヤが、そう聞いた。
「いる! 其々一人ずつで交代して貰うとして、……六人。合計十三人か。……名前、どうしよう!?」
「適当で良いだろう」
そうだね。マツもマッチョからとったものね。
「あ。種族は何が良いかな?」
「「ドワーフトロル以外で」」
マツとカシの意見がハモった。
「そうだね。夜行性だもんね」
悩んだが、神国に居ない種族だと不自然かと思ったので、ローグオーガを五人・ローグオークを五人・ローグゴブリンを三人召喚した。
名前を付け、仕事を教え、夜になった。
『ねえ。神国って、二年参りするの?』
私は水海に尋ねられ、慌てて外を確認した。
普段、夜はやって来ない筈の船の明かりが、海上に見える。
「来る! 全員持ち場へ!」
来るなら前もって連絡してよ!
「うふふ。朝日がキレイ~」
「マスター。大丈夫か?」
徹夜明けでテンションがちょっとおかしいかな?
因みに、昨夜やって来た船長さん達に、マツがそれとなくチクリと言った所、「集まった信者が多過ぎるので街に収容出来ないから」と言い訳されたらしい。
後、上陸制限に文句を言われたそうだけれど、群衆雪崩が起きても困るしね。対応も出来ないし。
どの船にも、転覆するんじゃないかと思うほど乗っていたらしい。
命あっての物種だと思うけれどね。
私達は、三時間毎に交代する事にしていた。
現在は、午前六時頃である。
ちょっと早いけれど、朝食にする。
あ、そうそう。夜間はカヤも手伝おうとしてくれたんだけれど、見た目が幼児だから遠慮して貰った。外聞悪いかと思って。
「お疲れ様」
「うん」
テーブルに御節料理を出して、食べ始める。
「頂きます。今年もよろしく~」




