ダンジョンバトル2
◇パラダイ王国・ダンジョン【理想郷】◇
敵を視認した天音は、一瞬で間合いを詰める。
重い蹴りがブルチンを襲った。
しかし、ブルチンは高レベルである。
それを躱すと、逆に蹴り飛ばした。
床を転がった天音が顔を起こす。
その額に現れた角をブルチンが認識した直後、角が光った。
電撃を食らったブルチンは、仰向けに倒れ、暫く動けずにいた。
型落ち品でもこの威力。
『ユニコーン』は、天国が思っているより、性能も価格も高いのだった。
ブルチンのレベルがもう20程低かったならば、黒焦げ死体になっていた事だろう。
ブルチンには、強敵と戦った経験など無い。
初めての重傷に混乱し、回復魔法を使えずにいるブルチンに、天音が肉薄した。
ロボットである天音は、壊れて動けなくなる事はあっても、痛みで動けなくなる事は無い。
容赦無く首を蹴り折り、再び電撃を食らわせた。
『そこまで! 勝者、天国!』
ブルチンは、天音に勝てなかったらしい。
エラルよりレベルが高いのに、情けないな。
「馬鹿な……!」
愕然とするブルチンに、ロードアーク様が剣を振り翳す。
「待て! この勝負は無効だ! わしを女にするなど、釣り合わぬ!」
喚いたブルチンは、ロードアーク様が言葉では止まらない事を悟ると、避けて反撃を行おうとした。
しかし、ブルチンが何かするより早く、格子状に切れ目が現れ、体がバラバラに崩れ落ちた。
どうやら、剣を振り翳した時点で斬られていたようだ。
「吸収して良いですか?」
「好きにするが良い」
俺は、ブルチンの残骸をダンジョンに吸収する。
凄いレベルアップした。
「ブルチンは、記憶が有るままに、無力な女としてユニ教徒の元に転生する。これより、永遠に」
それってつまり、人類が存続する限りユニ教は無くならないって事だよな?
まあ、そうだよな。
ユニ教を無くすなんて、ユニ教徒全員殺す位しないと無理だろうしな。
ふと気付くと、子ユニコーンが来ていた。
それが、少女の姿へと変身する。
「ありがとう。天国」
「あんたが、ユニ?」
「そう」
柔らかそうな白い髪に夜空の様な紺色の目・透き通るような白い肌の絶世の美少女だ。
ブルチンはブサメンだったので、母親に似たのだろう。
「聞きたい事が有るの」
「ん?」
「貴方は、どうして、少女に興味を示さないの?」
「天女達か? いや、誰もが少女を好むって訳じゃないからな。俺は、同じ位か少し年上が好みだ」
「処女じゃなくても良いの?」
「ああ。俺には、処女に拘る理由が無い」
子孫に残したい財産が有る訳でもないし(そもそも、ダンマスに寿命は無いらしい)、潔癖症でも無い(潔癖症ならば、セックスも嫌がれば良いのに)。
嫉妬深い訳でもないし、ダンマスは病気にならないので性病感染リスクを考える必要も無い。
「貞操を守らない様な人で良いの?」
「俺も守らないから、お互い様さ」
「……貴方は、女を劣っていると思っていないの?」
ユニは、男が女相手にお互い様と思う事を驚いた様子で、そう尋ねた。
「ああ」
「女は弱くて何も出来ないと言われているのに?」
「確かに、女は男より力が弱い。それは、性別の特徴だ。しかし、何も出来ないと言うのは、何も出来ないようにされているからじゃないのか?」
モラハラとかパワハラとか、そういう類の常套句だよな。
「女性器切除も隷属の首輪も、女が何も出来ない様にする為だろう?」
「……やっぱり、そうなんだ」
ユニは、憎しみの表情を浮かべた。
「あいつの所為で、女が不幸になった……。あんな奴と、血が繋がっているなんて……!」
「ダンジョンマスターになった時点で、繋がって居らぬが」
今まで黙っていたロードアーク様が、口を挟んだ。
「繋がっていた事実は消えないから嫌なんですよ。ロードアーク様」
「左様か」
「ローディー様! どうして、あんな奴をダンジョンマスターにしたんですか?!」
「勘違いしておるようだが、ブルチンは、女に隷属の首輪を着けるよう勧めた事は無い。女性器切除も少しで良いとしておる」
禁じてはいない、と。
「抑、女性器切除はブルチンが誕生する以前より行われており、【帰らずの森】から距離が有るほど、切除の度合いは多くなっておった」
【帰らずの森】は、昔、アイリス大陸で信仰されていたローディー教の聖地だ。
ローディー教は、女性を大切にと説く宗教だったようなので、聖地から離れた地の信仰心が薄かったり・無かったりする男達が反発して、女性器切除を始めたのだろうか?
あれ? そう言えば、ロードアーク様、『ローディー』と呼ばれていたな。
そうか。ローディーとは、ロードアーク様の事だったのか。
「で、効果のほどは?」
「変わらぬ。信仰心が篤い者は従い、そうではない者は、自身に都合良く解釈する。また、無知なる者は、宗教儀礼と誤解しておる」
宗教儀礼では無いと知っていながら嘘吐いている奴も、いるんだろうな。
「因みに、女性器切除を行う理由の一つに、陰核をそのままにしておくと男性器に成長すると言う考えがある」
「切除しない地域の女性のものが、成長していないのに?!」
「別大陸の女性に会わずに一生を終える者が、大多数だからな」
確かに、飛行機も無いし、そう気軽に大陸間移動は出来ないな。
それに、出来たとしても、男性器に成長した人がいるかどうか判る訳も無いか。
「ああ。なるほど。しかし、何故そんな考えに?」
「両性具有を見ての事」
「凄い発想力!」
あ、でも、何も知らなければ、そう見える……か?
「どちらにしろ、あいつがユニ教を創らなかったら、不幸になった女はもっと少なかった筈」
「それは否定せぬ。しかし、遠からず同様の宗教が現れたであろう」
詰んでたんだな。アイリス大陸の女性は。
「ところで、何でユニは、紅みたいに、ダンジョンに女性を保護しなかったんだ?」
「……え?」
俺の問いに、ユニはポカンとした表情を晒した。
「仕方有るまい。ユニは、女は何も出来ぬと思い込まされておったのだから」
ああ。そう言えば、さっき、初めて気付いたみたいな反応していたな。
「わたしが……悪いの?」
ユニは、泣きそうに表情を歪めた。
余計な質問だったか。
「悪いなんて言ってない」
「でも、くれないって言う人は、保護しているんだよね?」
「紅はユニと違って、『女は何も出来ない』なんて洗脳はされていない。それに、ユニコーンはヒトでも亜人でもないから、それの影響もあるだろう」
俺がそう言っても、罪悪感は拭えない様だった。
「ただいま」
「お帰りなさい。マスター」
「勝ったんですね! 良かったです~!」
サブダンジョンに戻った俺は、天女達に迎えられた。
「どんな奴だったんだ?」
エラルが聞いて来たので、俺は正直に答える。
「ユニ教の神。俺と同じダンマス」
「嘘を吐くな! 侮辱するにも程が有る!」
想像通り、エラルは激昂した。
「本当なんだけどな~」
まあ、証拠が無いし、仕方ないか。
いや。証拠が有っても、信じないか。
「さて。日付も変わったが、寝るか」
「そうですね」
「お休みなさい」




