ダンジョンバトル1
2018.04.05 誤字修正など。
◇パラダイ王国・ダンジョン【理想郷】◇
俺がダンジョンマスターになって、二ヶ月が経った。
現在、南半球にあるアイリス大陸は、冬である。
と言っても、この辺りでは雪が降るほど寒くはならないそうだが。
ある日、風呂から上がってさあ寝るか、と言う時に招かれざる客が来た。
そいつは、ダンジョンコアが在るメインダンジョンへ向かい、湖に飛び込んだようだった。
急いで転移陣でメインダンジョンに移動し、『モニター』で入り口付近の映像を確認する。
「バイコーンだと?!」
水から飛び出して来た二本角の馬を【鑑定】した俺は、驚いた。
ブルチン:Lv70 ダンジョンマスター(バイコーン) ユニ教の神・ユニ教の教皇
ユニ教の『神』がダンマスなら、ユニコーンだろうと、思っていたからだ。
次の瞬間、俺はそいつの前に転移していた。
相手がダンマスなので、ダンジョンバトル用仮想空間に移動させられたのだろう。
「お前が、ユニを殺してエリアを乗っ取ったダンジョンマスターか!」
アラフィフぐらいの男の姿になり、ブルチンはそう怒鳴った。
因みに、容姿は、黄褐色の髪に金色の目、黄褐色の肌。ブサメンで肥満体だ。
「違います」
「嘘を吐くな!」
「嘘じゃない! 俺がダンマスになったのは、【ユニコーンの森】討伐後だ」
「見え透いた嘘を……! わしは、ユニは殺させたがコアは破壊させていない!」
は?
ユニって、多分、『神の娘』だろう?
つまり、こいつの娘だよな?
え? こいつ、娘を殺させた訳?
「何で殺させたんだよ?」
「決まっている! 男を知ったからだ! 汚らわしい! ユニの処女を奪うのはわしと決まっておったものを!」
自分が娘を汚らわしくするのは、良いのか?
「俺は、実の親子でする方が、汚らわしいと思うがね」
「お前はおかしい」
「こっちの台詞だ。大体、処女じゃ無くなかったからって、何が汚いって言うんだ?」
「フン。節操の無いインキュバスには解らぬか。例えば……、そう。汚れた服は身に着けたくないだろう? そういう事だ」
「確かに、汚れた服は着たくないけれど……。男が汚いから、汚れるんだろう?」
俺がそう言うと、ブルチンは憤慨した。
「男は汚くなど無い! ふざけるな!」
「女は汚いのか?」
「そうだ!」
「そんな汚い女の胎で十月十日育って、汚くならないのか?」
「ならない!」
「何故?」
「そういうものだからだ!」
何という不思議生物。
「と言うか、何で汚い女の胎から生まれる様に創ったんだ? 何の罰だ? 男は男から生まれる様に創れよ?」
ブルチンは、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした後、我に返って怒鳴った。
「同性愛は嫌いだ!」
「同性愛じゃなくてさ、単独で。魚や鳥や爬虫類で、出来るのいるそうじゃないか。まあ、雌だけらしいけれど。雄がいなくても子供作れる雌って、凄いよな」
ブルチンは何も答えない。
「でも、神なら、雄にだって単為生殖出来る様に創れるだろう?」
「神を試すな! 不届き者め!」
「悪魔だから、知~らな~い」
「ユニは処女だぞ」
突然背後から話しかけて来た声に、俺は驚いて振り向いた。
「ロードアーク様! 驚かさないでください!」
「そのつもりは無い」
「現れたな! ローディーめ! 全く、忌々しい!」
あれ? そう言えば……。
「ユニは処女だと言いました?」
「左様」
「つまり、ブルチンは勘違いで殺させたと」
「然り」
「お前如きが、気安く名前で呼ぶな!」
ブルチンは、此方の会話が聞こえていないのか、どうでも良い事で怒っていた。
「おい。ユニは処女だったってさ」
「口の利き方を知らん小僧め! ……何だと?! 馬鹿な! わしは本人から聞いたのだぞ! 『一緒に寝ている』と!」
文字通りだったんだな。
「それは、此奴の事か?」
水色の髪のロードアーク様が、空中にユニが一緒に寝ていると言ったらしい相手を映しだした。
あれ? ロードアーク様の髪の色って、水色だったっけ?
「そうだ! こいつだ!」
「女じゃねえか」
映し出されたのは、一見男性に見えるが、よく見れば女性だと判った。
「何処が女だと言うのだ!」
「胸があるのが見えないのか?」
俺の言葉に、ブルチンは驚いた様子でマジマジと映像を見詰めた。
「女の分際で男の格好をしていたのか! おのれ……! こいつの所為でわしはユニを……!」
人の所為にして、格好悪い。
自分が女だと気付かなかったくせにな。
「つーか、何で女がズボン履いたりしたら駄目な訳? 女は男を誘惑するなって言うんなら、男の格好した方が良いんじゃないのか?」
「駄目だ! わしは、異性装をする者が嫌いだ!」
何故、嫌いなのだろう?
惚れた相手が実は女装子だったとかで、ショックを受けたとか?
そう言えば、相貌失認症では、男女の区別が付かなかったりするらしいな。
まあ、ブルチンは、顔を認識出来ている様だから関係無いな。
「それより、ローディー! ユニをどうした?! 何処へ転生させた?!」
「ユニは、そなたに二度と会いとうないと言うておったので、教える訳にはいかぬ」
「何だと?! わしに会いたくない?! 馬鹿な!」
ユニがブルチンと性交したくないなら、最高神の庇護があって、逃げない訳が無いだろう。
「ならば、ダンジョンバトルだ!」
ブルチンは、俺を指差して怒鳴った。
「わしが此奴に勝ったら、ユニをわしの眷属に転生させよ!」
ロードアーク様と戦えば良いのに。
「天国が欲しいもの次第だ」
「え? じゃあ……。俺が勝ったら、こいつをユニ教の女に転生させて、女性器切除の後、父親に処女を奪われるようにしてください」
「良かろう」
「ふざけるな! 何故わしが女などに転生して、しかも、男に抱かれなければならんのだ!」
「では、ユニの事は諦めよ」
「何だ、お前。勝つ自信無いのか?」
俺は、ブルチンを煽ってやる。
「わしが勝つに決まっておるわ! 良いだろう! その条件で勝負だ!」
サキュバスは使わないと言う条件の下、俺達は仮想空間にダンジョンを造った。
勝利条件は、ダンマスが相手のコアを破壊する。若しくは、相手のダンマスが途中で死亡する。となっている。
まあ、勝っても負けても、俺に損は無い勝負なので、気楽にいく事にする。
「それまで。勝負開始」
時間になったので、お互いのダンジョン入り口に移動させられる。
ブルチンのダンジョンは、オーソドックスな地下遺跡型ダンジョンだった。
俺は、鳥の魔物の姿に【変身】して、飛び進む。
これは、罠対策だ。
勿論、全ての罠を回避出来るとは思っていないが、少なくとも、踏む事で発動するタイプの罠は回避出来る。
俺は、モンスター同士で相討ちになる様に飛び、奥へと進んだ。
一方、ブルチンは、ダンジョンらしからぬ光景に困惑していた。
頭上には青空が広がり、柱も壁も見当たらない。
楕円状に敷き詰められた砂の地面が綺麗に均され、柵で囲まれていた。
そして、青い変わった檻の中に、馬型モンスター達が入れられており、一ヶ所空いていた。
辺りを見渡して、漸く先へ進む為の扉を見付けて近付くと、プレートにこう書かれていた。
『これは、レースで一着にならないと開かない扉です』
ブルチンは、馬型モンスターが入れられている柵を振り返った。
「馬扱いしおって……!」
ブルチンがバイコーンの姿になって柵の中に入ると、前方の柵が開いた。
各馬、一斉にスタートする。
ブルチン以外は、ユニコーンとモノケロースだ。
レベルの差が有る為、ブルチンはあっさりと先頭でゴールする。
扉の先へ進むと、また同じような光景が広がっていた。
違うのは、砂が敷き詰められていた所に芝が敷き詰められている点だ。
今回も、難なく一着でゴール。
扉の先へ進むと、まただった。
今度は、コースに障害物が在る。
それでも、ブルチンには簡単だった。
「お前は……」
扉の先へ進むと、今度は普通の遺跡風ダンジョンだった。
その大広間には、一人の少女がいた。
「ユニ!? ……いや、違うか」
白い髪に紺色の目・白い肌をしていた為にユニかと思ったが、よく見れば違っていた。
少女の名は、天音。
ドワーフ製少女型戦闘用ロボット『ユニコーン』である。




