後日談
◇パラダイ王国・ダンジョン【理想郷】◇
ブルチンが居なくなったからか、俺のダンジョンには平和が訪れた。
討伐に来る者が居なくなったのだ。
まあ、ユニ教が無くなった訳でもアリコーン騎士団が無くなった訳でもないので、その内又来るのだろうが。
あの翌日。
俺は、ユニコーンを数体眷属召喚し、森に放牧した。
カスタムで【鑑定】を付けて召喚したので、男が森に来たらそれでステータスを見て、『強姦魔』等の記載が有ったら殺せと命じてある。
それ以外の人間からは、距離を取るように言っておいた。
パラダイ王国は、国王が後継ぎが居ないままに亡くなった為、玉座を巡って群雄割拠の乱世となっている。
この争いは、何時終わるとも知れない。
聖地の街も奪い合いの的になってしまったので、ユニコーンに、兵士共が森に入って来たら皆殺しにするように、追加で命じておいた。
戦死した者達の妻や、占領された地の女は、紅が掻っ攫っているらしい。
寡婦焚死や強姦を防ぐ為だ。
その内、パラダイ王国から女が居なくなるんじゃないだろうか?
俺は、聖地の街に、娼館を造った。
勿論、其処で働く娼婦はサキュバスだ。
料金は時間制。
サキュバスに精気を吸われる為、一回で力尽きて朝まで気絶だが、リピーターは多い。
何故なら、良質の酒と食事を格安で提供しているからだ。
それ以外にも、娼婦が皆処女だという事もある。ただ単に、回復魔法で処女膜再生しているだけなのだが。
怪しんでいる気配は全くない。
アリコーン騎士団が大勢で討伐に来ているのだから、ダンジョンの存在は知られている筈なのだが。
そうこうしていたら、他の娼館から男が恫喝に来たが、うちの娼婦達でもてなして、機嫌良くお帰り頂いた。
その後、そいつが雇われていた娼館は、娼婦を全員攫われて潰れてしまったらしい。
一体、何処の紅さんの仕業だろうか?
<飾さんから、コールです>
ある日、クリサンセマム皇国のダンマスの一人、飾から『コール』が来た。
『お久しぶりね、天国。今度うちのダンジョンで【唇美人コンテスト】を開催するんだけれど、良かったら審査員』
「やる!」
俺は、逸る気持ちを抑えきれずに、食い気味に答えた。
『相変わらずね』
飾は、嬉しげな笑顔でそう言った。
「お前もな」
飾は男だが、女言葉で喋る奴だった。
『当日の朝、迎えに行くわ。それで良いかしら?』
「そうだな。終わってから、皇国を観光しても良いか?」
『勿論。何泊するの?』
「一泊で良いよ」
『解ったわ』
『コール』を終えると、エラルが話しかけて来た。
「奴隷を増やすのか?」
「増やさないよ」
何故、増やすと思ったんだろうか? コンテストの優勝者を攫って来ると思われたのか?
「はっ!? もしかして、嫉妬?」
「誰が嫉妬などするか!」
「ですよね~」
異性愛者のエラルが、俺に惚れる訳が無い。
それ以前に、好感度上げてないからな。ちょろインでも惚れないわ。
いや。ちょろインなら惚れるか?
「ところで、さっきの悪魔は、何と言う種族なんだ?」
「ドラゴエルフ。エルフの魔法攻撃力とドラゴンの物理攻撃力を併せ持つ種族だ」
防御力とかも併せ持っているけれど、省いて説明した。
「嘘だろう?! そんな種族、聞いた事が無い!」
「嘘じゃありませ~ん。エラルが知らない事は、世の中に沢山有るんで~す」
「言っている事は尤もだが、言い方が腹立つ!」
「ははは」
俺は笑いながらエラルの側を離れると、天女に話しかけた。
「手土産持って行こうかな? 何が良いと思う?」
「そうですね。クリサンセマム皇国に無いものが良いですよね……。ドクなんてどうですか? 美味しいらしいですよ」
ドクとは、ダチョウのような飛べない鳥だ。
美味いらしく、絶滅の危機に瀕しているらしい。
「そうだな。……しかし、飾はでかい鳥を貰って喜ぶだろうか?」
「何故、生きた鳥を差し上げるつもりなのですか?! 解体して、ブロック肉にすれば良いのでは?」
「それもそうか」
うっかりしていた。
「あ。でも、飾様の好きな物を差し上げる方が、喜ばれるかもしれませんね」
「あいつの好きな物は、多分、服飾関係だな」
「では、アイリス大陸の民族衣装などを用意しましょう」
「ああ。……いや。リストにあるから大丈夫」
念の為にリストを検索すると、表示された。
アイリス大陸の服は、明るい色を中心としたカラフルな物が多い。
「ただ、皇国はイージーモードだから、リストに世界中の服も食べ物も入っているかもしれない」
「それは……」
「まあ、手ぶらって訳にもいかないし、一応両方持って行くか」
「ただいま~。いや~。堪能した~」
皇国から帰って来た俺は、土産物を手にダンジョンに入った。
「お帰りなさい」
「はい。これ、お土産な」
一旦ダンジョンに吸収してリストに加え、DPと交換に出した物を天女達に渡す。
「わあ! 綺麗な花ですね~!」
「朝顔だ。後でダンジョンに植えるから」
「はい」
天女達は花が好きなのだ。
「これは、夕飯に。牛肉だ。何時ものより美味しいと思うぞ」
エラルの視線を感じる。
あいつ、牛肉好きだからな。
「はい。エラルの分」
「え? ……良いのか?」
夕飯の席で、エラルの前にも同じ牛肉のステーキを置くと、珍しく遠慮がちにそう言った。
「今更、どうした? 良くなかったら、出さないぞ」
「だって、何時ものより、高いんだろう?」
「確かに高いが、ダンジョンに吸収すれば、DPで出せるんだ。エラルはレベルが高いから、滞在DPが多く入るし、遠慮するな」
「……そうなのか」
俺の説明に納得したエラルは、食事を始めた。
幸せそうに食べるなあ。
「あ。そうだ! 服も買って来たんだ。エラルの分も有るぞ」
「どうせ、女装用なんだろう?」
エラルは途端に不機嫌な顔になって、苦々しげに言う。
「いや、違うけれど」
「え? それって……!?」
「もう、女装させなくても俺の『女』だって事は、身に染みているだろうし」
「……ああ。そういう事」
俺の言葉に色めき立っていたエラルは、大人しくなった。
「因みに、以降、全く女装させないという事では無い」
無言で俺を睨んだエラルは、食事に戻ると牛肉を頬張って幸せそうに眼を細めた。
◇ミソジン国◇
一方、教皇が行方不明となったミソジン国は、混乱していた。
教皇ブルチンは、神の声を聞く事が出来る唯一の存在にして、ユニ教の教祖である。
何百年も生きているので、当然、ヒト種では無く亜人だ(と言う事になっている)が、ブルチンを差別する者は居なかった。
ブルチンが戻らず、また見付からない事で、人々は次なる教皇を立てる事にした。
候補者の或る者は神の声を聞いたと言い張り、また、或る者はブルチンに指名されていたと言い張った。
その為、ユニ教は幾つかの宗派に分かれる事となった。
最も信者を集めたのは、ブルチンに指名されていたと主張した男である。
反対に、最も少なかったのが、神に選ばれたと主張した男であった。
何故なら、彼は、神が亜人迫害を命じたと言っているからである。
亜人のブルチンを開祖に選んだ神が、そんな事を言う筈が無いと思われたのだ。
しかし、亜人迫害に大義名分を欲しがっていた一部の者達は、彼を支持した。
ただ、彼等が迫害出来る亜人が居るかどうか……。
◇ビアン王国・ダンジョン【薔薇園】◇
数度の転生の後、ブルチンは百合のダンジョンに保護された。
因みに、【鑑定】で表示されるステータスには前世の情報は記載されないので、百合はブルチンだとは知らない。
「同性愛者など、処刑するべきだ!」
百合が同性愛者を匿っている事を知ったブルチンは、嫌悪の表情を浮かべてそう怒鳴った。
「じゃあ、身体が女で心が男のあんたも死刑だねえ」
「……それは」
ブルチンは、悔しげに唇を噛む。
「其々のダンジョンに籠っているんだから、会う事も無い。それでも嫌なら、出て行くんだね」
「……会う事が無いなら良い」
今の自分の無力さを痛感しているブルチンは、プライドを捨ててでも百合の庇護下に居る事を選ぶしかないと判断した。
そして、案内されたダンジョンには、アイリス大陸の技術では作れないであろう様々な物(例:水洗トイレ)が在り、ブルチンは嫉妬を覚えた。
「これは、ドワーフの技術か?」
「……まあ、そうだね」
「忌々しい、亜人共め」
百合は、ブルチンの頭を鷲掴みにした。
「あたしも亜人なんだが、喧嘩売ってるのか?」
「痛い! 違う! ドワーフ共の事だ!」
「違うなら、わざわざ一緒くたにするんじゃないよ」
百合はブルチンの頭から手を離すと、冷たく言った。
「ドワーフの技術が嫌なら、出て行ってくれて構わないけれど?」
「……別に、技術が嫌な訳ではない」
ブルチンは、渋々不満を飲み込んだ。
さて、ブルチンは何度か自分がユニにしようとした事を体験して反省したのかと言えば、全くしていない。
ブルチンは、ユニに自らの理想の女像を投影している。
『理想』に『自我』なんて有る訳が無い。
だから、ユニがブルチンとの行為やブルチンそのものを本気で嫌がるなんて、有り得ないのだから考えもしない。
だから、『二度と会いたくない』と言うのは、ロードアークの嘘だと思っている。
この先、二人が会う事が無い以上、ブルチンがユニを理想の女だと思わなくなる事は、まず無いだろう。
まあ、仮に会えたとしても、心変わりする事があるとは思えないが。
その後、ブルチンは、エルフの技術による性転換を目指して、金を稼ぐ事に邁進するのだった。




