表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンマスターは神様です  作者: ひつじかい
番外編:アイリス大陸
62/191

【薔薇園】

◇ビアン王国・ダンジョン【薔薇園】◇


「ようこそ。ダンジョン【薔薇園】へ。あたしは、ダンジョンマスターの虹旗(にじはた)百合(ゆり)だよ」


 公開処刑場から攫って来た男を下ろし、あたしは自己紹介した。


「悪魔か!? 私を攫ってどうするつもりだ?!」

「このダンジョンは、DPを得る為に同性愛者を匿っているのさ」

「同性愛者だと?! 私は違う! 嵌められたんだ!」


 男は憤慨し、激しく否定した。


「つまり、あんたは同性愛者じゃないんだね?」

「そうだ!」

「じゃあ、用は無い。さっきの所に捨てて来ようかね」

「待て待て待て! 止めろ! 殺されてしまう!」


 男は必死になって、あたしを止めようとした。


「此処で暮らしたいって言うのかい?」

「いや、それは……」

「自力で他の街に行けるのかい?」


 道中、魔物や盗賊の危険があるし、それ以前に食料が無い。

 運良く辿り着いたとしても、国内の街では、再び捕えられて処刑される恐れがあるだろう。


「う……」

「はっきりしな!」

「はい! 此処に置いてください!」


 ビシッと『気をつけ』をして、お願いしてくる男に、あたしは素気無く答える。


「トラブルの素はごめんだよ」


 此処、アイリス大陸で広く信仰されているユニ教では、同性愛は死刑となる罪だ。

 ユニ教に於いて、同性愛は嫌悪すべきものなのだ。

 皆と仲良くやれるとは思えない。


「仲良くしますから! 性的じゃ無い意味で!」

「……仕方ないね」



 あたしのダンジョンは、アイリス大陸の南部の西側に位置するビアン王国に在る。

 アイリス大陸は南半球に在り、北部には白人が、南部には黒人が住んでいる。

 だからか、あたしの肌も黒い。

 種族は吸血鬼なので、黒人では無く黒鬼人と言うのかね?


「何だ、あの紫色の物体は!?」


 驚愕する男の視線の先に目を遣ると、紫色の大きな物体が鎮座している。


「サイ型モンスターだよ」

「モンスター?! そ、そうか。ああいう色が普通なのか」


 普通なのかねえ?

 因みに、紫色のサイは、ゲイのシンボルらしい。


「こっちの階段の先が、男性同性愛者用。そっちが、女性同性愛者用だよ」


 あたしは、地下への階段を指差した。


「女性同性愛者?! 何だ、それは! 女の性欲は男が絡まないと湧かないんだぞ!」


 あたしの言葉に反応して、男がおかしな事を言い出した。


「何でだよ?」

「神がそう仰った!」

「じゃあ、何で処刑される女性同性愛者がいるんだ?」


 尋ねると、男は考え込んだ。


「え~っと……、それは、多分……。性欲が湧いた訳ではないけれど、キスしたりなどしたから?」

「ふ~ん。ところで、エルフの研究では」

「エルフを持ち出すなんて、卑怯だぞ!」


 男が遮るように怒鳴る。


「ほう? エルフの方が正しいと思っているのか」

「違う! あいつ等、ちょっと怒らせた位で国一つ滅ぼすクレイジーな奴等だからだよ! だから、下手に否定出来ない!」


 エルフが? う~ん……。まあ、作品によっては傲慢だったりするしな~。


「あたしの友達に、エルフ(のダンマス)が居るんだけど」

「クレイジーなんて言って、済みませんでした! 何とぞ、内密に!」


 男は、必死に頭を下げて懇願した。


「まあ、良いけど。やっぱり、同性愛嫌悪は根強いね」

「それは、その……。神への反抗である訳だし……。子孫も残さずに……」

「子供が生まれてからなら、良いのかい?」

「いや! そんな事は……! つまり、異性を選ぶのが本能で正しいんですよ! 人間以外には同性愛は存在しない訳で」

「エルフの研究では、動物・虫・魚等に同性愛行動が」

「あーあーあー! きこえなーい!」


 私が否定すると、男は手で耳を塞ぎ、大声で私の声をかき消そうとした。


「こんなんで、大丈夫かねえ?」



「どうなっているんだ? 幻覚か?」


 地下に降りると、空が有り大陽光が降り注いでいる。

 男は、それを不思議がっていた。


「マスター。新入りですか?」

「そうだよ。仲良くしてやっておくれ」


 畑仕事をしていた一人に尋ねられ、あたしは肯定の言葉を返した。

 村の中を進み、一軒の家の前で足を止める。


「此処が、あんたの家」


 一人用のログキャビンだ。


「食材は支給するから、炊事は自分でしなよ」

「やった事無いんだが」

「眷属が教えるから、聞くと良い」


 揃いの執事服を着た眷属を、指差して教える。


「当然、掃除や洗濯も自分でする事」

「……仕方ないか」


 その後、風呂とトイレの使い方を教え、支給品の服を渡した。


「其処の柵で囲まれている畑が、あんたのだ。何も作らなくても構わないが、作れば給金を遣ろう」

「金なんて、何処で使うんだ?」

「向こうに店が在る。煙草や酒などを売っている」

「酒か」


 男は酒と聞いて、目を輝かせた。


「種や苗、作り方は眷属に」

「分かった」



 翌日。


「マスター。新入りが異性愛者だとばれて苛められていましたので、救出しました」


 あたしは、眷属からそんな報告を受けた。

 (いず)れ異性愛者だとばれるとは思っていたが、存外早かったね。


「ばれたって、何故だい?」

「迫られて、『気持ち悪い』と言ったからだそうです」


 迫られては、冷静でいられなかったか。


「仕方ないね。サブダンジョンを増やそう」




 数日後。

 異性愛者用サブダンジョンに、新たな住民が入った。

 ユニ教の聖職者の相手を無理矢理勤めさせられ、大人になって用済みになったので処刑されそうになっていた青年だ。

 助けたついでに、その聖職者を身代わりにしておいた。

 布を巻き付けてミイラの様にして処刑するので、別人だと気付かれる事はなかった。

 尤も、そいつが同性愛者だと隠しておきたくなかったので、処刑完了後に、犯行声明に盛り込んで垂れ幕を下げて来たけれどね。




 更に数日経って、討伐隊がやって来た。

 迎え討つは、例のサイ型モンスター達である。

 因みに、体高は2m。

 自動車数台と人間の戦いを想像してくれれば、解り易いだろうか?

 でも、レベルが高ければ、大型モンスターも一刀両断出来たりするんだから、凄いよねえ。



 中々グロい事になった。

 グチャグチャになった人間を見ても平気なのは、ダンマスになったからなのか? 吸血鬼になったからなのか?

 あたしは、眷属と一緒に死体を回収して、ダンジョンに吸収した。




 ある日、処刑されかけていた性同一性障害者を攫って来た。


「好きで男に生まれた訳じゃないのに、どうして、それが罪なのかしら?」


 ダンジョンについて説明してログキャビンに案内すると、彼女はそんな事を呟いた。


「理不尽だよな。でも、それが、神が定めた事だろう? 本当ならばね」

「神が偽者だと言うの?」

「神は本物かもしれない。でも、神の教えとされる幾つかは、人が勝手にでっち上げたものかもしれない」

「……そんな神をも恐れぬ事をする人間が?」

「幾らでも居るさ。そんな人間は」


 そう言うと、信じられないといった目であたしを見る。


「神の存在を信じない奴とか、神の気持ちを忖度しているつもりの奴とか」

「神を信じないなんて、野蛮人じゃない」


 ユニ教での無神論者の扱いは、野蛮人か。


「野蛮人と蔑まれるだけなのかい?」

「半人前以下の扱いよ。下手をすれば、悪魔崇拝者として処刑される事もあるわ」


 神の存在を信じないなら、悪魔の存在だって信じないだろうにねえ。


「そんな人が、聖職に就くなんて……」

「悪魔崇拝者として処刑されるかもしれないのに、馬鹿正直に神を信じていないと公言する奴は、そう居ないだろうさ。誰も知らないなら、聖職に就くのを止める事は出来ない」

「でも、そんな事になる前に、神が天罰を下すんじゃ……?」

「だと良いがね」


 自分を死刑にさせる神を尚信じられるとは、凄いね。


「まあ、兎も角、此処で金を貯めなよ。そうしたら、性転換させてやるからさ」

「そんな事が可能なの!?」

「まあね」


 性別を替える魔法があるから、エルフかドラゴエルフに依頼すれば良い。


「ああ! 神への信仰を捨ててしまいそう!」

「悪魔崇拝はするなよ? あたし、悪魔じゃないからさ」

「え?! ダンジョンマスターは悪魔だと……」

「神への信仰を捨てるなら、悪魔扱いも止めてくれよ。あんただって、性別が違っただけで罪人扱いされたのは嫌だろう?」


 あたしの言葉に、彼女はハッとした。



「……悪魔って、何なの?」


 暫くして、そんな疑問を口にする。


「全員邪悪な性格なんじゃないの?」

「そんな事は無いさ。ユニ教の神があたし達を悪魔と呼ぶと決めたから悪魔なのであって、邪悪な存在として創られた訳じゃない」

「え? でも、何か悪い事をしたんじゃ?」

「したかもしれないし、していないかもしれない。生まれたばかりのあたしには、(あずか)り知らない事さ」


 彼女は、ユニ教への信仰を捨てる事をまだ迷っている様だ。


「貴女を信用して良いのかしら?」

「何を信じるかは、あんたの自由さ。でも、ユニ教を信じるなら、『男の体に女の心を持つ事は死刑になる罪』だと言う事を、受け入れるべきだと思うがね」


 因みに、ユニ教では改宗も死刑である。


「無理だわ。そんな事」

「だろうね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ