【女性保護区】3
◇ミサンドル王国・ダンジョン【女性保護区】◇
女達にダンジョンから出ないよう言って、あたしは地上へと移動した。
【鑑定】を発動すると、名前や職業等が表記されたウインドウが空中に現れる。
国王自ら出陣しているな。
「入れません! 見えない壁があります!」
「魔法部隊! 何とかしろ!」
魔法使い共が解呪を試みるが……残念だったね! あんた等には、ダンジョンの設定は変えられない!
「駄目です! 効きません!」
それを聞いた国王は、信じられない行動に出た。
「役立たずは要らん!」と、彼等を殺させたのだ。
ダンジョン討伐に来たのに、自ら戦力を減らして、勝てる気でいるのかい? 舐められたものだね!
「お父様! 助けに来てくださったのですね!」
王女があたしの脇を走り抜け、ダンジョンの外に出る。
あたしは驚いて、止めずに見送ってしまった。
「撃て!」
国王の命令で放たれた矢が、王女に幾つも突き刺さる。
「悪魔と交わった女など、要らぬ」
国王は、冷たく言い捨てた。
悪魔が男だと決め付けている訳ではないだろう。
ユニ教では、悪魔は同性愛も行うだとか、変身して交わるだとか言われているのだ。
「行け!」
あたしの命を受け、マンティコアが一体、躍り出る。
「黒いマンティコア?!」
「闇属性か!?」
解呪魔法が使えない為に殺されずに済んだ魔法使い共が、光魔法で攻撃する。
しかし、殆ど効かなかった。
「光魔法が効かない?!」
「闇属性じゃないのか?!」
「そうだよ。そいつは……」
マンティコアが魔法を放った。
電撃が戦場を駆け巡る。
「メラニズムの雷属性マンティコアさ」
メラニズムとは、アルビノの逆で、生まれ付きメラニン色素が多い為に黒くなるものだ。
引っ掻かれ、宙を舞う首。
電撃で、焼け焦げる体。
噛み付かれ、鎧兜毎あっさり砕ける骨。
あたしは、マンティコアが暴れている間に、王女をダンジョンに戻す。
彼女は息があったが、お腹の子は駄目だった。
「療!」
あたしは、クリサンセマム皇国のダンジョン【病院】のダンマスに、強制的に『コール』を繋いだ。
『どうした?』
療は、ドラゴエルフだ。
成長が遅い為、見た目は子供だが、魔法使いとしての技量は、此処にいる誰よりも高い。
「妊婦の腹の中で胎児が死んだ」
『解った。直ぐ行く』
次の瞬間、療が転移魔法で現れた。
うちは男子禁制のダンジョンなので、勿論、ダンジョンの外にだ。
「こんな長距離転移、大丈夫か?」
「ちょっと辛い」
療はそう答えると、あたしがダンジョンの外に出した王女を連れて転移して行った。
その間に、王国軍はマンティコアを満身創痍へと追い込んでいた。
勿論、王国軍の被害も大きい。
「行け!」
あたしは、マンティコア三体とグリフォン二体を追加して、奴等の「勝てるかもしれない」と言う希望をへし折ってやる。
「そんな……」
兵士共が、絶望し動きを止めた。
「撤退する! お前達は、足止めをしろ!」
そんな中、国王はそう怒鳴ると、背を向けて馬を走らす。
が、グリフォンからは逃げられない。
王に向かって飛ぶグリフォンが巻き起こした風で、兵士共の体が宙を舞った。
「どうなったんですか?!」
ダンジョン内に戻ると、ナディア達が不安げに尋ねて来た。
「勿論、勝ったさ。王国軍は壊滅。国王は墜落死」
「王女様は?」
「……国王に腹の子共々殺されかけたショックで、記憶喪失。子供は即死だった」
それを聞いて、皆、胸を痛めた様子だ。
言わない方が良いよな? 子供が奇形児だったって事は。
近親相姦で必ずしも奇形児が生まれる訳ではないが、代を重ねる毎に確率は高くなるらしい。
が、その所為なのかは分からない。
「暫く医者の所で様子を見て貰って、大丈夫そうなら此方に戻すから」
「王宮には戻さないんですか?」
「奴等が王女を殺さないんなら、戻しても良いけれど」
国王が死んだから王女の問題は解決した、とは言えない。
奴等には、王女を殺す理由はあっても、殺さない理由は無いだろう。
「……戻さない方が良いですね」
その後、此方に戻った王女は、当初は時折不思議そうに腹に手を置いたり、矢が刺さった事がフラッシュバックしたりしたが、やがて、それも無くなった。
そして、父親と子の事は、終に思い出す事は無かった。
王国軍を返り討ちにした数週間後、ユニ教のアリコーン騎士団がやって来た。
マンティコア八体・グリフォン四体で歓迎してやったら、その後来なくなった。
「新入りだよ。貴族の妻だったけれど、妊娠して腹が大きくなったのをみっともないと離縁された女だ」
みっともないと思うなら、子作りをしなければ良いのに。
だから、あたしは、子作り出来ない様にそいつを去勢してやった。
そこまでしないと、誘惑に負けるのだろうから。
数日後に様子を見に行ったら、男のシンボルを失った事で半人前扱いとなり、半人前に当主の資格無しと言う事で、後継ぎがいなかった為にお家断絶。
更に数日後に見に行ったら、性奴隷になっていた。
周りにばれたら死刑になるので、ばれないよう祈っておく。
「マスター。子供が欲しいのですが」
ある日、一部の女がそんな事を言って来た。
「結婚したいのかい?」
「夫は要らないです。子供だけ欲しいんです」
「そうか……」
どうするかねえ? 此処を追い出すか、それとも、人工授精?
因みに、男児を妊娠していた妊婦を受け入れる為に、男子禁制では無いサブダンジョンを造ってある。
一応、DPの交換リストを『精子』で検索したら、ヒットした。あるんだ……。
ダンジョンに吸収した精子が元になっているらしい。
つまり、天国のダンジョンに挑んだ奴等の物か?
幾つか見てみたが、白人・黒人だけでは無く、黄色人種の物もあったので、どうやら、他のダンジョンで吸収された物もあるようだ。
「誰の子でも良いなら、人工授精するかい?」
「人工授精?」
あたしが人工授精について説明すると、彼女達は「それでお願いします」と言った。
療のダンジョンで施術して貰い、彼女達は母になる事が出来た。
しかし、考えてみれば、知らない間に子供を作られているって、嫌かもしれないな。
まあ、ばれる事は、まず無い訳だけれど。
さて、女にも性欲がある訳で、しかし、此処には、生まれた男児が成長するまでは、相手がいない訳だ。
だから、希望者を、クリサンセマム皇国のダンジョン【夜の街】の女性向け風俗店に連れて行く。
正確には、【夜の街】のダンマスである遊夜に送迎して貰うのだが。
因みに、日本の女性向け風俗店は儲からないとかで直ぐ潰れるらしい。
だが、【夜の街】の店はダンジョンが経営しているので、金が儲からなくてもDPが入れば良いのだ。
女性向け風俗店で働いているのは、眷属らしい。
人間だと、体力面や接客面で問題があるからだそうだ。
「エラルって、下手だったんですね」
ナディアは、帰り際そんな事を言っていた。
女性器切除の所為で痛かったんだと思うが、それが無くても、女性の性欲を否定するアイリス大陸の男が女性を満足させる訳が無いので、何も言わないでおいた。
ところで、女達に作らせている砂糖やチョコ等は、街で売っている。
安くて質が良いと、飛ぶように売れた。
勿論、ダンジョン製と言う事で、買う側は毎回【鑑定】して毒が無い事を確かめている。
しかし、奴ら曰く悪魔製なので、御禁制品に指定されてしまった。
それでも、欲しがる者は多く、こっそり買って行く。
ダンジョン産なら、何でも禁制にされると言う訳ではない。
武器や防具・回復薬などは、普通に取引されている。
恐らく、良質な砂糖を大量に安く売る事が気に入らない人間の仕業だろう。
一方、国王と王国軍の一部を失ったミサンドル王国は、新体制が整う前にビアン王国に侵攻され、国土の一部を奪われる事となった。
その後、新国王(王女の母の異母兄)は兵士の強化に努めたが、国土を奪い返す前に、はかなくなった。
次の国王(王女の母の異母弟)は、病弱で知的障害もあり(歴代の近親相姦の所為かは、不明)、政務を行わず、代わりを任され専制政治を行っている男(王族や宰相や摂政ではない)は、国土の奪還に興味が無く、国軍は力を落とした。
そして、あたしがダンマスになってから十年目。
ミサンドル王国は、ビアン王国に併合された。




