友との取引
2017.09.19 奴隷のマギをサピエンスに変更。
◇聖地・ダンジョン【理想郷】◇
大勢でやって来たアリコーン騎士団だったが、一人を除いて皆、宴に興じている。
その一人は、どうやら、【魅了】や【誘惑】を無効にするアイテムを身に着けているらしく、正気を保っていた。
そして、通信用魔道具を使い、誰かに連絡を取り始めた。
『サキュバスと言うモンスターが』
天女が通信機を奪ったが、遅かった。
ダンジョンにサキュバスがいると知られてしまっては、対策を取られてしまう。
女冒険者を雇うか・攫うかするに違いない。
『クッ! ……退け、悪魔よ! 【ホーリーフロア】!』
神聖魔法を使うが、残念だったな。
それすらも、使い手が男ならば、サキュバスには通用しない。
そもそも、吸精鬼は神聖魔法が弱点という事はない。
『馬鹿な! 何故、効かない!?』
『頂きます』
天女はそう言って魔道具を盗ると、男に口付けた。
◇ユニ教総本山ミソジン国◇
「サキュバスだと?!」
報告を受けたユニ教教皇ブルチンは、悪魔の巣にサキュバスがいた事に衝撃を受けた。
「馬鹿な……。居る筈が無い!」
「猊下?」
訝しげに声をかけて来た部下に「何でもない」と答えて下がらせ、ブルチンは怒りに震えた。
【ユニコーンの森】に、サキュバスのようなふしだらなモンスターがいる筈が無い、と。
【ユニコーンの森】を乗っ取った悪魔は、何としてでも殺す、と。
◇パラダイ王国・聖地◇
友人から『コール』が届いた。
『久し振り』
「ああ。久し振り。……ちっちゃくなったな」
転生してから初めて見る画面に映し出された友の姿は、1・2歳位だった。
『エルフは成長遅いんだってさ』
「へえ。エルフなのか。……で、オッドアイなのは、エルフの特徴?」
右目が灰色・左目が茶色だった。
『そうらしい。他の種族より、オッドアイが生まれる確率が高いんだって』
「ほほう。それは凄い。ところで、名前、何になった? 俺の名前は、コールかけて来たから知っているよな?」
俺がそう尋ねると、幼い顔が引き攣った。
『言わなきゃ駄目?』
「……酷いのか?」
所謂キラキラネームかな? いや、DQNネームかも。
DQNネームとは、漫画等の創作キャラなら未だしもって名前だったり、外国の名前に漢字を当て字で付けたり、普通には読めない捻った名前だったり、悪意籠ってそうな名前だったり、名付けた人間の学力が低いんじゃないかと思ってしまう名前だったりする。
天国や天女も、そうだよな。
『ふーどふーが』
「は?」
『風土でふーど、風神でふーが』
「それはまた……」
風神で、音楽の形式のフーガ?
ロードアーク様が付けたんだよな? 失礼ながら、センスを疑うわ。
『ロードアーク様に理由聞いたら、日本の流行りだろうって言われた』
あの方、流行りに乗るのか?
「極一部だよな?」
『だと思いたい』
俺達の死後、名付けの主流になった可能性もあるからな~。
『で、用件なんだけど』
「うん?」
『奴隷が欲しいから、手に入ったら譲って』
「良いけど、何に使うんだ?」
風神がいる国では、手に入らないのだろうか?
因みに、アリコーン騎士団は、天女達の好みのタイプだけ生かして後は殺したので、譲る事は出来ない。
『飴と鞭の飴にしようと思って』
「どんなダンジョン造ったんだ?」
飴と鞭なダンジョンって、どんなだ? うちみたいなのか?
違うな。うちは天国から地獄……いや、天国から天国だ。
『俺のダンジョンには、関係無いんだ』
その後、詳しい話を聞いた。
要約すると、同じエリアの別の友人がテロ組織を育成している。そいつ等が奴隷を欲しがっているのでくれてやろうと言う事らしい。
テロ組織ね~。敵を増やすのはどうかと思うけれど。
「そいつ等の目的って、何?」
『世界征服』
目標高過ぎない?
「……出来そうなのか?」
『九分九厘無理かな』
目標高過ぎない?!
「本気で育成するなら、段階を踏んでスキルアップさせろよ?」
『育成って言っても、ダンジョンに閉じ込めただけだから』
滞在DP目当ての軟禁かよ。
「それを育成とは言わねーよ」
『自力で力を付けるべきだと思うんだよね。だから、実施訓練施設として? 死んでも生き返る設定だし』
「ああ。それなら、強くなるかもな」
世界征服の為にはダンジョンを出なければならないのだから、強制的に訓練になる訳だ。
……まさか、そうでもしないとまともに訓練しないような奴等なのだろうか?
『じゃあ、奴隷手に入ったら連絡して』
「解った」
『コール』を終えた俺は、ある事を思い出して、天女達からエステを受けているエラルを見た。
「そう言えば、ユニ教徒って、女の性器を切除してるんだよな?」
そう話しかけると、エラルは飛び起きて逃げようとしたが、天女達に捕まった。
「お、俺は女じゃない! 止めろ!」
「お前が女じゃないのは判っているよ。でも、俺の『女』だよな?」
解っているから、逃げようとしたのだろう?
「い、嫌だ! 止めろ!」
泣き叫んで嫌がるエラルに、構わず近付く。
「あの、マスター。疑問なのですが」
突然、天女が口を挟んだ。
「何だ?」
「マスターは、体の一部を失った人が好みなのですか?」
「……多分、違うな」
そう言われてみれば、俺に欠損萌え属性は無いな。
「止めておこう」
アリコーン騎士団の襲来から、数週間後。
隷属の首輪を着けられた女性冒険者三名と、恐らくミソジン国に雇われたのであろう男性冒険者三名がやって来た。
レベルは四十台。特筆すべきスキルは無い。
それがたった六名とは、舐められたものだ。
いや、何か有用な魔道具を持っているのかもしれない。油断せずに行こう。
「居たぞ! サキュバスだ! 殺れ!」
命令を受け、女性冒険者が其々動いた。
魔法使いが詠唱を始め、弓使いが矢を射る。
剣を抜きながら距離を詰めた剣士を、物陰から飛び出した男達が囲んだ。
エラルとアリコーン騎士団の生き残りである。
「男?!」
「奴隷か!」
「チッ! 加勢するぞ!」
冒険者共が状況把握をしている間に、エラルは女剣士の剣を弾き、女弓使いの弓を叩き落とし、女魔法使いは無視して、男達に肉薄した。
女と言う盾が無い男共など、敵では無い。
女魔法使いが天女達に放った魔法は、俺が美味しく頂きました。
マスターキーを使い、女達の隷属の首輪を外し、それを男共に着けてやる。
そして、風神に連絡し、回復アイテムで全員の傷を癒した。
「奴隷貰いに来たぞ~!」
もう来た?!
階段を降りた風神は、此方に駆け寄って来る。
「何だ、このガキ?」
「俺の友人のダンマスだよ。名前は、風神」
エラルの質問に答えてやると、嫌そうに眉を顰めた。
「油断させる為に、子供の姿に変身しているのか?」
「してないよ。エルフだから、成長が遅いだけ」
風神は、エラルに教えてやって、俺に向き直った。
「で、どの奴隷をくれるんだ?」
「そっちの三人」
「オークとオーガとサピエンスか。ありがとう。お礼は何が良いかな?」
何が良いか、考えていなかったな。
さて、何にするか?
「その奴隷、特別? なら、不老長寿にしてやろうか?」
悩んでいると、風神がエラルを見てそう提案した。
「出来るのか?!」
「うん。エルフの技術で」
「凄いな。欲しがる人間多いんじゃないか?」
「そうだな。もし要求されたら、幾ら吹っ掛けよう?」
下手すれば隷属の首輪を着けられて……。いや、無理か? 魔法に長けたエルフだもんな。
「なあ。他国にエルフの奴隷って居るのか?」
「居ないよ。昔、一度遭ったらしいけれど、隷属の首輪の装着を防ぐ魔法が開発されたからね」
「へ~」
「で、どうするの?」
エラルを不老長寿にするのか、確認される。
「いや~。奴隷三人で不老長寿は、釣り合わないと思うから」
「じゃあ、ロボットは? 型落ち品だから、そんなに高くないよ」
まさか、ファンタジー世界にロボットがあるとは、驚きだ。
ドワーフ製だろうか?
「そうなのか? じゃあ、それにするわ」
こうして、俺は、少女型ロボット『ユニコーン』を手に入れた。




