表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンマスターは神様です  作者: ひつじかい
番外編:アイリス大陸
57/191

天国は奴隷を手に入れた

BL。

女装。

◇聖地・ダンジョン【理想郷】◇


 斥候が食べきれなかった料理や酒を天女(あまめ)達と片付けていると、見知らぬ青い髪の男がワイングラスを傾けている事に気付いた。


「誰だ?!」


 おかしい。ダンジョンに侵入者があれば、気付く筈! 現に、斥候には気付いたのに!

 何て、気配の薄さだ。目にしているのに、実在感が無い。

 まるで、蜃気楼のようだ。


「我が名は、ロードアーク。アディアの創造神にして、ダンジョンマスターの神祖なり」


 ロードアーク様の声は、疑う事を忘れさせる。


「此方には、どういった御用件で……?」


 尋ねると、ロードアーク様は別の酒に手を伸ばして口に運んだ。


「美味」


 え? 酒飲みに来たの?


「我が眷属のユニコーンを、此処に放牧せんと連れて来た」


 ロードアーク様が視線を動かしたので其方を見れば、数頭のユニコーンが木の実を食んでいた。

 その中に一頭だけ小さいのがいる。子ユニコーンか。


「うちに放牧する理由をお伺いしても?」

「この地に、【ユニコーンの森】が存在していた事は、知って居るな?」

「はい」

「あれ等は、元は其処に居ったのだ」


 滅ぼされた故郷が、今は他人のものになっている。

 それは、どれほど辛い事だろうか?


「跡地に新たなダンジョンが生まれ、食欲をそそる木の実が植えられた。なれば、食わせてやろうと思うてな」


 故郷に美味い料理を出す店が出来たから、連れてってやろうって感じか?


「そうですか。あ、でも、ユニコーンって、獰猛だとか非処女を殺すとか聞きますけど……」

「其れは、ユニ教徒の誤解と偏見」

「え?」

「【ユニコーンの森】のユニコーンは、ダンジョンのモンスター。侵入者が襲われるは、必定」

「確かに」


 しかし、良いのか? 獰猛な生き物が聖獣で?


()て、ユニコーンが大人しく従う少女を見、処女には大人しいと誤解」

「その少女は、ダンジョンマスターだったんですね」

(しか)り」

「で、処女に対して大人しいなら、非処女は嫌いだろうと」

「左様」


 場所が聖地じゃなくて、ユニコーンが聖獣じゃなかったら、その誤解と偏見は無かったのだろうか?




 数日が経った。

 ユニコーン達は、ロードアーク様が設置した彼等専用の転移陣で行き来している。

 その中の一頭――子ユニコーン――が、何故か俺を観察するように見る。

 インキュバスだから警戒されているのか? 馬に手を出す趣味は無いんだが。

 いや、それなら、サキュバスも警戒されるよな? 吸精鬼は、同性もいけるんだから。

 それを知らないのか? それとも……、ロードアーク様以外の男を初めて見たとか?


「マスター。侵略者です」

「そのようだな。今回は六人か」


 天女が言う通り、地下ダンジョン入り口に六人の人の気配を感じた。

 恐らく、斥候の第二陣では無く討伐隊だろう。

 それを証明するように、彼等のレベルは50を超えていた。

 そして、一人Lv60台の男がいる。


 エラル:Lv65 サピエンス 30歳 冒険者


 普通ならば、此方が負けるだろう。

 しかし、全員男なので、ほぼ確実に勝てるな。




「何だ、このダンジョンは?!」


 新たに見付かったダンジョン(悪魔の巣)を討伐に訪れたエラル達は、かつてこの地に在ったダンジョンとの違いに困惑していた。

 そのダンジョンは、地下だと言うのに森が広がっていたが、此処は、果樹と花卉がメインの様で、見た目華やかだ。

 だが、問題はそこでは無い。

 料理と酒が並ぶテーブルと、年頃の少女達。

 こんなあからさまで美味しそうな罠は、初めてだった。


 エラルの仲間は、フラフラとそれに向かって行く。


「おい! 止めろ! 罠だ!」


 エラルが声を上げるが、誰も反応しない。


「チッ! 魅了系か!」


 エラルだけは、【魅了無効】・【誘惑耐性】があるので正気を保てていた。

 走りながら剣を抜き、少女達の一人に斬り付ける。


「無駄です」


 その言葉通り、少女には傷一つ付かなかった。


「なっ?! どうなっている?!」


 エラルは、吸精鬼の特性を知らなかった。


『そいつ、俺好みだから、生かしておいて』

「はい。マスター」


 斬れた服から覗く白い肌に、エラルの目が引き付けられる。

 【誘惑耐性】では、100%は防げないのだ。

 目の前の少女が悪魔の眷属と判っていて、手を伸ばす。

 【誘惑】に逆らえるほど、エラルの精神力は強くなかった。




「はっ?!」


 目を覚ましたエラルが、ガバリと身を起こす。


「気が付いたか」


 天女達を侍らせて座っていた俺は、そう話しかけた。


「お、お前は……!」


 エラルは、俺がダンジョンマスターだと気付いたのか、武器を身に着けていた場所に手をやり、自身の格好に気付いた。


「な、何だ、この格好は!?」


 そりゃあ、驚くよな。女装させられていたら。

 同性愛者を死刑にするユニ教では、異性装も許されない。

 あ、そうそう。この大陸に於いては、一人前の男は髭を生やしている。

 何故なら、ユニ教が、一人前で無い男に髭を生やす事を禁じているからだ。半人前だと誤解されたくないので、生やすと言う訳だ。

 では、どういう人間が半人前とされるのかと言えば、障害者や生まれつき病弱な者、そして、奴隷等が半人前とされる。


「何故、女物の服なんて着せるんだ!」

「何故って……。言わずとも解るだろう?」


 俺がそう言うと、エラルは怯えたような表情に変って大人しくなった。


「そ、そうだ! 代わりに妻を……。処女ではないが、美人だぞ!」


 暫くして、良い案を思い付いたとばかりに、そんな交渉を持ちかけて来た。

 他に、身内に処女は居ないらしい。


「お前等にとって、女は男より劣っているんだよな?」


 どうやら、俺は馬鹿にされているようだ。

 歩いて距離を詰めようとすると、エラルは後退った。


「あ、ああ」


 俺はエラルを壁に追い詰め、壁ドンする。


「劣っているモノが、優れているモノの代わりになるかよ!?」




 翌日。

 エラルに食事を与える。


「腐った豆だ……」


 エラルは、先ず納豆に目を留めて呟いた。


「腐って無い。発酵だ。納豆と言う」

「要らん。後、生卵と生魚も要らん! 危険な物を食わせるな!」


 エラルは、黄身だけの生卵と刺身を指差して怒鳴る。


「豚肉まである! 何なんだ!? 腹を壊して死ねと言うのか?!」

「生卵も生魚も豚肉も、工夫次第で安全に食べられる。勿論、絶対では無いが、それは他の食材にも言える事だ」

「人間は、悪魔や鬼とは違う!」

「人間の話をしているんだがな」


 俺は溜め息を吐いて、天女達に納豆等を除けさせ、チーズトーストと茹で卵と煮魚と牛肉のステーキを出してやった。



「な、何だこれは? これは本当に牛肉か?」


 悪魔が出した食事だからと逡巡していたエラルだったが、空腹と美味そうな匂いに耐えきれなかったようで、ステーキを口にして驚愕の声を上げた。


「これは、悪魔の幻覚に違いない!」

「違うぞ。異国で品種改良され、食用として良い餌と環境を与えられて育てられた牛だ」

「異国で? 馬鹿な! 我が国より優れた国など、あるものか!」


 世界の国をどれだけ知っていての発言なのか?


「お前、それ、エルフに言ったら鼻で笑われるぞ」


 俺がそう言うと、エラルは恥ずかしげに顔を赤くしてむくれた。

 エルフが自分達より優れている事は、否定出来ないらしい。

 まあ、それでも、エルフの女よりは優れていると思っているんだろうが。




 それから数週間後。

 今度は、アリコーン騎士団がやって来た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ