パラダイ王国国王
胸糞注意?
◇パラダイ王国・王城◇
パラダイ王国国王は、現在病を得ていた。
回復系魔法でも治せない、死に至る病。
と言っても、この大陸の魔法使いでは治せないだけで、エルフやそれに匹敵する才能が有る者なら治せるのだが。
それはさて置き、彼には後継ぎがいなかった。
即位してから十五年。
何十人と妻を娶ったが、一人として子を生さなかった。
他の大陸であったならば、現国王は種無しだと思われただろう。
しかし、此処には、『種無し』と言う考えは無い。
普通に性交して子供が出来ない原因は、女性にのみある。
それが、この大陸の一般常識であった。
我が子で無くとも、弟や甥が継げば問題無いのではないかと思うだろうが、何方もいないのだ。
この国には、王子達が殺し合いをして生き残った一人が王になる慣習がある。
殺し合いに参加出来ない幼い王子は、王が決まった後に全て殺される。
胎児も全て、生まれてから性別が判明するのを待たず、母親毎殺されるのだった。
おまけに、先王の妻は、妊娠している可能性があれば、実際にはしていなくても判るまで待たずに念の為に殺される。例え、それが新王の実の母であろうとも。
この王には、姉も妹もいなかった。
父には二人妹がいたが、何れも生まれて数年で病死している。
祖父の女兄弟は成人し結婚したが、男児には恵まれなかった。
そう言う訳で、後継ぎがいない。
子が出来ない王は、焦っていた。
選ぶ女選ぶ女、悉く石女だと、己の不運を嘆き、呪われているのではないかと思い始めた時に、病を得たのだ。
その病の名を、梅毒と言う。
妻は全て処女であったので、即位前に娼館に出入りしていた時に感染したのだろう。
処女を好む者が何故娼館に通ったのかと言えば、変態プレイの為であった。
ユニ教では、変態プレイは娼婦とするものと教えているのだ。
まあ、どの辺りから変態プレイなのかは、個人の判断に委ねられているのだが。
さて、この大陸での梅毒の治療法は、処女と性交する事であった。
アイリス大陸には、処女と性交すると病が治ると言う迷信がある為だ。
王は、発症した頃に即位した。
直ぐに大勢の処女を後宮に入れ、治療に励んだ。
梅毒には発病後に潜伏期があり、それを知らない彼等は、症状が消える為に完治したと看做す。
しかし、実際には完治などしていない為に、潜伏期が終わり症状が現れたのだ。
王は、再び治療の為に処女を抱いたが、一向に効果は無かった。
異世界とは言え、処女との性交に特別な効果など無いので当然だが、固く信じている彼等はこう考える。
治らないのは、呪いの所為だと。
では、誰が呪ったのか?
国王は、【ユニコーンの森】に巣くった悪魔だろうと考えた。
何故なら、その悪魔を討伐したのは、パラダイ王国の人間だからだ。
パラダイ王国の人間に殺された腹癒せに君主を呪うなんて、如何にも悪魔らしい卑しさだと、憤慨する。
潜伏期が終わり症状が現れたのはダンジョン討伐前の事であるが、王はコロッと忘れていた。
悪魔の呪いを解くのは容易ではないが、王にはまだ希望があった。
それが、アリコーン。……ユニコーンの角である。
ユニコーンの角は、万病に効くと言われている。
それがあれば、病は癒え・呪いも解け・子供も生まれると、王は心を強く持った。
しかし、ユニコーンはユニ教の聖獣である為、危害を加える事は許されない。
だが、【ユニコーンの森】に悪魔が造ったダンジョンでは、時折、アリコーンが入った宝箱が見付かっていた。
なので、王は、アリコーンを献上した者に金貨100枚を支払うと言うお触れを出した。
ところが、アリコーンが献上される事は無かった。
全て、知らぬ間に、何者かに盗まれてしまっていたらしい。
斯くなる上は、ユニコーンを殺してでも奪うしかない。
そう思ったものの、ユニコーンは、呪われた聖地を嫌ったのだろう。何処かへと消えてしまっていた。
金も権力も有るのだから、最初から、アリコーンで治療すれば良かったのに。
後は、神の奇跡に縋る他は無かった。
「陛下! 朗報で御座います! 聖地の呪いが解けた模様! 湖と森が復活致しました!」
そんなある日、聖地から吉報が届いた。
「真か!? それで、ユニコーンは?!」
「いえ、それはまだ……。呪いが解けたのは、昨日の今日で御座いますので」
「そうか……」
「聖獣たるユニコーンが、聖地の呪いが解かれた事を気付かぬ筈が御座いません。遠からず戻る事でしょう」
「うむ」
希望が見えた。
しかし、数日後。
「陛下! 一大事で御座います! 聖地に、再び悪魔が巣くいました!」
「何……だと?」
前回の悪魔討伐は、発見から数百年かかった。
王の目には、嘲笑する悪魔の姿が見えた気がした。
「ですが、ご安心を! 前回悪魔を討伐した者達を向かわせますので、直ぐに討伐出来る事でしょう!」
「おお……! そうか。それならば……」
王の心から絶望が払われ、希望に満ちる。
だが、悪魔は狡猾だった。
王は絶望と後悔を抱いて死に、王国は戦乱の渦に巻き込まれる事となる。




