皇国日帰り旅行・後
◇クリサンセマム皇国・ダンジョン【植物園】◇
「ようこそ! 【植物園】へ!」
今度は、実花のダンジョンへやって来た。
「梨狩り……は、止めておいて」
「何で?!」
解っている! 私が太ったからだよね! そんなに、ヤバいかな~?
「お昼食べたばっかりで、お腹減って無いよね? 菊人形展やっているから、そっちに行こうか」
◇クリサンセマム皇国・ダンジョン【食の都】◇
「ようこそ、【食の都】へ! おやつの時間だね!」
美味の反応からして、やっぱり、私、それほど太って無いみたい。
「ところで、日本でよく見かけるチェーン店の名前がチラホラ見えるんだけど」
「うん。コピーしているから」
異世界で取り締まれないからって。
「あのお店のココア、美味しいんだよ! 買ってくるね!」
「え? じゃあ、ココアフロートが良いな」
「……無糖の方が良くない?」
ダイエットにですかね?
「どうせ、カロリー高いし」
「無糖のココアは、ダイエットに良いんだよ」
「そこまで太ったかな?」
失礼しちゃう!
「あ。ごめんね。痩せなくても良かった?」
「痩せたくない訳じゃないけど……」
「だよね。何か、コドクの前世って、太ってて『痩せたい』が口癖だった気がするんだよね~」
「……気の所為じゃないかな?」
ヤバい。何か、私も、私の前世太ってた気がして来た!
「だから、今の内に痩せさせた方が良いって思っちゃって」
「気持ちは嬉しいけど」
「うん。ゴメン。ダイエットするもしないも、コドクの自由だもんね。【変身】という手もあるし」
その手を使ったら、負けな気がする。何に負けるのかは、解らないけれど。
「じゃあ、ココアフロート買って来るね」
「あ、やっぱり、無糖のココアで」
乙女心が勝った。
ココアを飲んだ後、マツとカシへのお土産に、ノーマルのリストには無い銘柄の日本酒を購入。
そして、次へ。
◇クリサンセマム皇国・ダンジョン【墓地】◇
「ようこそ。【墓地】へ」
葬のダンジョンで、慰霊碑に手を合わせる。
途中、場違いな光景が目に入った。
「え? 花嫁衣装?!」
「ああ。亡くなった両親に晴れ姿を見て貰いたいって言うんでな。披露宴をする許可を出したんだ」
墓地で騒ぐのを不愉快に思う人もいるんじゃないかな?
◇クリサンセマム皇国・ダンジョン【遊園地】◇
「ようこそ! 【遊園地】へ!」
今度は、遊子のダンジョンだ。
「あれ? コドクって、こんなんだっけ?」
『こんなん』って、何よ?
「いや~。ちょっと太っちゃって~」
「『ちょっと』?」
「何が言いたい?」
「ううん。人によって違うよね」
『ちょっと』の度合いが?
「じゃあ、迷路行こうか」
◇クリサンセマム皇国・ダンジョン【美術館】◇
迷路で歩き回って疲れた。
「ようこそ。【美術館】へ。間もなく閉館時間です」
「ごめんね。そんな時間に」
「あ……。コドク? ゴメン。判らなかった」
美絵は、驚いた様子でそう言った。
え? そこまでじゃないよね?!
「えっと、皇国の有名な窯元の作品展で良いよね?」
「うん。良いけど……」
思い切って聞いてみる。
「ねえ。私、友達だと判らないレベルで太っているかな?」
「そんな事無いよ! 水海達は、判ったでしょう?」
「うん」
「私は、ほら……。人の顔覚えるの苦手だから……」
安心したけど……。うん。ダイエット、頑張ろう。
◇クリサンセマム皇国・ダンジョン【劇場】◇
「【劇場】へ、ようこそ~!」
歌音が、明るく出迎えてくれた。
「疲れている感じだね。やっぱり、一日で十七ヶ所巡るのは、止めておいた方が良かったんじゃ……?」
「大丈夫だよ」
「そう?」
少しは痩せたかな?
「心配してくれて、ありがとう」
「いやいや。じゃあ、演奏会見て行ってね」
いや~。凄い演奏だった。重低音がお腹に響いた。生演奏だからかな?
「次は、飾の所だったよね?」
「うん。じゃあ、またね」
◇クリサンセマム皇国・ダンジョン【ファッションの街】◇
「いらっしゃい。ようこそ。【ファッションの街】へ」
もう日は暮れてしまったが、ダンジョン内は明るい。
「どんな服が欲しいの?」
飾は、相変わらず女言葉だ。
「えっと……。痩せて見えるワンピース」
「そうね~? このAラインのワンピースなんて、どうかしら?」
飾は、切り替えのあるストライプ柄のワンピースを見せてくれた。
試着すると良い感じだったので、購入する。
飾は、他にも、痩せて見えるコーディネートを教えてくれた。
◇クリサンセマム皇国・ダンジョン【景勝地】◇
「ようこそ。【景勝地】へ」
風光が出迎えてくれた。
「じゃあ、皇国の観光地に食事に行くか」
皇国にも観光地が存在するらしい。それはそうか。
転移陣で移動して、一件の料亭に入った。
「旅行で予約した者だが」
「ようこそ、お越しくださいました。ご案内致します」
食事をしていると、怒鳴り声が聞こえて来た。
「何やってんだ、この馬鹿!」
聞こえてくる怒鳴り声によると、どうやら、厨房でミスした誰かが怒られているようだった。
「ちょっと、クレーム入れてくる」
風光が出て行って暫くすると、声が止んだ。
「ただいま」
「お帰り。何言って来たの?」
「ん~? 『従業員が失敗した事を客に大声で宣伝したって、店の評判は上がりませんよ』って」
「うわ……。凄いね。私だったら、『五月蠅いんですけど』ぐらいしか言えないよ」
まあ、実際にはクレーム入れないけどね。そして、二度と行かない。
◇クリサンセマム皇国・ダンジョン【温泉街】◇
「ようこそ。【温泉街】へ」
次は、泉のダンジョン。
「エステで良いかな?」
「うん」
あ~。気持ち良くて寝てしまった。
「脂っこい物は、控えた方が良いよ」
やっぱり言われた!
はっ!? もしかして、痩身エステだった?
「次は、療の所だよね?」
「あ、うん」
療の所は【病院】だし、やっぱり、指摘されるよね。
怒られるかも。
◇クリサンセマム皇国・ダンジョン【病院】◇
「ようこそ。【病院】へ」
「夜遅くにごめんね」
「いや。問題無い。それより……何か悩みでもあるのか?」
「あ~。大丈夫。自棄食いとかじゃないから」
「そうか。なら良いんだが」
心の病気の可能性を考えるなんて、流石、【病院】造った人は違うね。
「あのさ、医師免許とかどうなってるの?」
「旧来の医師免許では対応出来ないのではないかと、現在新たな免許制度を導入する為の準備をしている」
「薬剤師免許とかも?」
「勿論。薬剤の認可の為の治験も行われている」
「で、導入されるのは、何十年後?」
免許制度は兎も角、治験の方は、そう簡単には終わらないんじゃないだろうか?
「そうだな。早くて六年後ぐらいか? 治験は、使用頻度が高くなりそうな物を優先している」
「そうなんだ」
◇クリサンセマム皇国・ダンジョン【夜の街】◇
最後にやって来たのは、遊夜のダンジョンだ。
「ようこそ。【夜の街】へ。歓迎するぜ」
「ありがとう。でも、私が行ける所、無くない?」
「あるよ。バーで、ノンアルコールカクテルを飲もう」
「バーって、年齢制限あるんじゃ……?」
「日本だと十八歳未満は駄目だったかな? でも、皇国では、十六歳で大人だからな。問題無い」
転生して一年目だけれど、其処は無視して良いのだろうか?
「まあ、ダンマスは治外法権だし、気にするな」
「そう言えば、皇国のお金って、ダンジョンに溜まる一方だね。あ、皇国人雇っているんだっけ?」
「ああ。納税もしている」
ダンマスが納税……。
「凄いね。私はしていないよ」
「人間の振りをしているなら、払わないといけないんじゃないか?」
「確かに」
でも、何処に幾ら払えば良いんだろう?
◇ユティ神国・ダンジョン【ヒトリ島】◇
遊戯のダンジョンから、自分のダンジョンに戻る。
「ただいま~」
ヒトリ島の自宅に入ると、マツ達はまだ起きていた。
「お帰り。マスター」
「はい。お土産」
私は、日本酒をテーブルの上に乗せた。
「おお! ありがとう! マスター!」
「楽しかったか?」
「うん」
私は、今日の事をマツ達に語って聞かせた。
「【動物園】とか【水族館】とかは、別の日に一日かけて見た方が良かったんじゃないか?」
「そうだね。今度はそうするよ」
さて寝ようと、私達は立ち上がる。
「あ。そうだ。私、明日からダイエットするからね」
ふと思い付いて、決意を口にする。
「へ~。成功すると良いな」
「頑張れよ」
「二人共、口先だけだと思っているね?」
失礼な。
「そんな事はねえよ」
「ああ。『食べ過ぎじゃね?』って言っても食べるのを止めなかったマスターでも、やると決めたらやり遂げると信じているよ」
そんな事もあったね~。
「絶対痩せてやる!」
「はいはい」
「お休み~」
その後、私のダイエットは、見事成功したのだ~! ……一年かかったけど。




