皇国日帰り旅行・前
◇クリサンセマム皇国・ダンジョン【運動公園】◇
神国と皇国の戦争が終わって三ヶ月ほど経った日。
私は、神国に遊びに出かけた。
マツとカシも連れて行こうとしたのだが、余所のダンジョンは落ち着かないと言うので私だけで。
「ようこそ。クリサンセマム皇国へ!」
私のダンジョンエリアと隣接するのは、遊戯のダンジョンだ。
当然、出迎えたのも彼。
「じゃあ、早速両替しようか」
遊戯がそう言うので、私はネックレスを取り出した。
これは、ユティ神城の宝物庫から頂いた物である。
皆も一つずつ貰って、残りは皇国の物になっている。
「よし、行くか。最初は、俺のダンジョンで……ジムの無料体験でもするか?」
「遠慮します」
「じゃあ、試合観戦だ」
遊戯のダンジョン【運動公園】に行くと、凄い人出だった。
「うわ……。何の大会?」
「第一回異種格闘大会」
「武装しているけど?」
鎧を着て剣を持っている人や、槍を持っている人達が居る。
「『武装も魔法も有り』だからな」
それで出場者が多いんだから、異世界凄いな!
『只今より、一回戦第一試合を始めます!』
司会者の言葉に歓声が上がった。
『東より、ゴールデン流剣術の使い手、ケンシン選手の入場です!』
紹介が大人しいのは、第一回だからだろうか?
『そして! 西より、シルバリー流槍術の使い手、ソウタ選手の入場です!』
二人は開始線に立ち、武器を構えた。
『それでは、……始め!』
次の瞬間、ケンシン選手が目にも止まらぬ速さで突き出された槍を回避し、間合いを詰めた。
ソウタ選手が斬られると思ったら、見えない壁が音を立てて剣を防ぐ。
「防御魔法?!」
私が驚いている間にも、二人の攻防は途切れない。
うちにやって来た元聖剣使い達と比べると、その実力は段違いだった。
やっぱり、レベルだけ高かったんだな。
ケンシン選手は雷魔法を、ソウタ選手は氷魔法を使い、戦いは益々激しさを増して行く。
一回戦でこれなら、決勝戦はどうなるのだろう?
「どうだった?」
「凄かった」
試合が終わったので、私と遊戯は会場を後にする。
第一試合は、僅差でケンシン選手が勝利を収めた。
「ユティが送り込んで来た連中が、あの人達みたいに強くなくて良かったよ」
「そうだな。さて、次は、小雪の【図書館】だ」
◇クリサンセマム皇国・ダンジョン【図書館】◇
「ようこそ。【図書館】へ」
「宜しく」
<三分後に、マグニチュード6.0の地震が発生します>
突然入ったそんなアナウンスに私が驚いている間に、小雪はメニューを表示する。
「一億五千!」
ターンッと音がしそうな勢いで、ボタンを押した。
「え? 何?」
「DPを消費して、災害の規模を軽減出来るんだ」
「マジで?!」
「コドクも貯めておいた方が良いよ」
「ノーマルモードになったから、好きなだけ使えると思ったのに!」
「まあ、神国は皇国より地震の頻度は低いから……。あ、でも、火山があるから、やっぱり貯めておいた方が良い」
え? ちょっ! 噴火確率高いの?! 怖いんですけど!
「此処が、同人誌即売会の会場だよ」
私達は、目的地にやって来た。
「おたく文化に染まるの早いね~」
「いや。元からある」
「元からある?!」
私は、驚いて小雪を見下ろした。
「ああ。エロもBLも女体化もコスプレも、普通にあったよ」
「うそ~。マジで?」
「マジで」
まさか、異世界にもそんな文化があったとは!
◇クリサンセマム皇国・ダンジョン【学園都市】◇
幾つか気に入った物を購入して、次へ。
「ようこそ。【学園都市】へ」
此処は、保育のダンジョン。
「特にイベントは無いから、授業風景とか見て行ってよ」
「うん」
私達は、校庭での体育の授業や、教室での様々な教科の授業を見て回った。
「この教室では、皇国の学校の教師達が、新たな知識を学んでいる」
「でもさ、地球とは物理法則とか? 違ったりしないの?」
異世界だし、そう言う事もあるんじゃないだろうか?
「その辺りは、きちんと説明している。研究するのは、彼等の役目だ」
「間違っているかもしれない知識、教えて良いの?」
「間違っていないかもしれないからな。地球でだって、実は間違っていましたと後の研究等で明らかになる事もあるだろう? 冥王星は惑星じゃなかったとか」
「あ~。うん」
それと同じで、合っているのかな?
◇クリサンセマム皇国・ダンジョン【住宅展示場】◇
「ようこそ! 【住宅展示場】へ!」
次に転移すると、かぐやが出迎えてくれた。
「けん玉大会開催中だよ」
「けん玉大会?」
「今、ブームなんだ」
「へ~。……ところで、携帯ゲーム機とかって」
「売ってないよ」
カグヤの返答は、意外だった。
「えっ?! そうなの?」
「うん。車とかPCとかゲーム機とかは売ってないんだ」
「どうして?」
「車はさ、交通事故が起きたら嫌だから。PCとかは、もっとハイテクに慣れた頃にしようかなって」
「ああ。なるほど、そう言う事か~」
確かに、被害が出る物は躊躇うよね。
「まあ、その内、自分達で作り出すだろうけどね」
「ああ。そうだよね」
【図書館】も【学園都市】もあるしね~。
「私には、ゲーム売ってくれる?」
「うん。勿論。ウォーキングマシンとかは、要らない?」
「要らない。リストにあるし」
「そっか~」
◇クリサンセマム皇国・ダンジョン【水族館】◇
ゲームを買った後、けん玉大会を見て、次へ。
「いらっしゃい。コドク。此処が私の【水族館】だよ!」
「久し振り、水海! 遊びに来たよ!」
「あれ? 太った?」
その事実から目を逸らしていたのに、水海は容赦無く指摘して来た。
「……だって、ノーマルモードになったから、リストが充実して」
高カロリーな物を毎日食べたら、太ったんだよね。
「ダイエットしたら?」
「この程度なら、しなくても良いかな~って……」
「それで、もっと太るの?」
「う……」
これ以上は太りたくないと言う乙女心と食欲が、せめぎ合う。
「気を付けるよ……」
水海の疑いの眼差しが辛い。
「お昼だし、昼食にしようか」
「うん! 海鮮丼?」
海鮮丼が食べたかったのでそう言うが、水海は笑顔で否定した。
「ううん。クラゲ定食」
「クラゲ?!」
「クラゲは、コラーゲンたっぷりだよ」
コラーゲンと言えば、確か、お肌に良い成分!
「食べる!」
「じゃあ、こっちだよ」
◇クリサンセマム皇国・ダンジョン【動物園】◇
クラゲ定食を食べた後は、海獣ショーを見て、天地のダンジョンに転移する。
「よく来たな。此処が、【動物園】だ」
「宜しく」
「では、触れ合いコーナーへ行くか」
触れ合いコーナーでウサギを撫でながら、ふと、気になっていた事を思い出して、天地に尋ねてみた。
「あのさ、レベルが高い人達にスズメバチの針が刺さったのは、何でかな?」
「スズメバチのレベルが高いから。或いは、【防御無視】か何か覚えているんだろう」
「あ、そっか。スズメバチもレベルアップするんだ」
盲点だった。
「眷属がレベルアップしたら、同じ種族を召喚する時にレベルを選択出来るぞ。気付かなかったか?」
「うん。全く気付かなかった」
蜂がレベルアップするとか、思わなかったし。
「野生の蜂も、レベルアップする?」
「眷属だけだ」
「やっぱり? ……レベルアップした蜂、逃がさないようにしないと」
「そうだな。本当、気を付けろよ」




