VSユティ
◇ユティ神国首都・ユティ神城◇
「そんなデタラメに騙されると思ったら、大間違いよ!」
ユティは、ローダルク様の説明を信じずに吠える。
「私を、こいつ等のようなアホガキと一緒にしない事ね!」
「弱い犬ほど良く吠えるな」
天地がボソッと呟いた。
「誰が弱いですって!?」
「【威圧】で気絶しておいて、弱くないとか良く言えるな」
「レベルだけ高くてもね~?」
怒りに震えていたユティは、ビシッと私を指差した。
「ダンジョンバトルよ! 私の強さを証明してやる!」
「明らかに一番弱い私で?!」
弱者に勝利しても強さは証明出来ないのに、何を言っているんだ、こいつは?
「煩いわね! 私が勝ったら、ローダルクのメインダンジョン内への転位陣を寄越しなさい!」
「良かろう。コドクが勝利した場合は、ダンジョンキラーを回収・交換サービス終了。更に、ダンジョンエリア縮小。ダンジョンマスターとしての権限の大部分を凍結とする」
バトル受けるって言ってないんですけど! 拒否権ください!
「何よ、それ! 不公平だわ!」
「これでもまだ釣り合わん。しかし、Lv100にも満たない人間が、我がダンジョンのコアを破壊出来る筈も無し。故に、この程度に収めた」
敵を招き入れると言う事で釣り合わないのだろうか? それとも、ローダルク様が神祖だから釣り合わないのだろうか?
「ローダルク様のメインダンジョンって、何処にあるんですか?」
「我がメインダンジョンは、最も深く・最も広い【アディア】。【最も高きダンジョン】の最奥に入口が在る」
聞き覚えがあるような?
「【アディア】って何だっけ?」
私は水海に尋ねた。
「この世界の事だよ」
「あ、そっか。……この世界自体がダンジョン?!」
私は驚いたが、しかし、考えてみれば、『創造神』で『ダンジョンマスター』なのだから、その可能性に気付いて然るべきだったか? 多分、水海達が驚いていないのは、その可能性を想像していたからなのだろうし。
「ん? と言う事は、もしかして、ダンジョンコアは星の中心にあるんですか?」
「左様」
「この世界が、空に見える星と同じな訳無いじゃない!」
ユティが変な事を言い出した。
「世界は端まで真っ直ぐなの! そんな事も知らないの?!」
私は、ドヤ顔で語るユティからローダルク様に視線を移した。
「球体ですよね?」
「然り」
「この世界って、平面説が主流なんですか?」
「否。平面説を主張するのは、一部の国や宗教だけだ」
なるほど。一部の一例がこれか。
「この世界が平面なら、海の水はどうして無くならないの?」
「壁が在るからよ! 空は天井なの!」
それって、ダンジョン?
「ローダルク様……?」
「【アディア】はダンジョンだが、空も宇宙も、其方等の前世の世界と変わらぬ」
ダンジョンマスターになって、ダンジョン内に草原エリアとか造って、本物の空もダンジョン内の空と同じだと勘違いしたんだな。
「ユティよ。我が提示した条件を呑めぬと言うのであれば、転位陣の設置はせぬぞ」
ローダルク様が話を戻す。
「厭らしいわね! 分かったわ。どうせ、私が勝つし!」
そりゃそうでしょうね。Lv60台で私に負けたら、恥ずかしいよ。
それはそうと、長く生きている割にはレベル低いよね。ダンマスはレベル上がり難いのかな?
「では、ダンジョン製作、始め!」
私は、先ず最初に、ファントムだらけの部屋を造った。
ファントムは老若男女揃えてみた。
その先の通路は幅を狭くし、カスピコブラを配置。
そして、目立たない様にスズメバチも配置。
その奥の部屋には、またファントムと扉型ミミックを配置。
そこを抜けると虫だらけの狭い通路。
といった風に、ファントムとそれ以外を交互に配置して行った。
ボス戦部屋には、ローグゴブリン・ローグオーク・ローグオーガ、更に罠と床石型ミミックを配置。スズメバチも目立たぬよう配置した。
「それまで! バトル、開始!」
ユティが造ったダンジョンの外観は、ユティ神城と似ていた。
こいつも、城好きか……。
私は、カスタムで罠を発見したり解除したり出来るようにしたローグゴブリンを召喚して、先導させる。
一方のユティは、慎重さが欠片も見受けられない足取りで、コドクのダンジョンに足を踏み入れた。
彼女にとって、Lv10にも満たないダンマスのダンジョンなど、警戒するに値しなかった。
公平を期す為にダンジョンキラーの使用を禁じられているが、恐るるに足らずとの考えは揺るがなかった。
「ヒィ~~!!」
ファントムの群れを目にしたユティは、悲鳴を上げた。
彼女は、姫と同じく、幽霊が苦手だった。
襲い来るファントムを半泣きで倒し、先へ進むと蛇が居た。
「ヒィ~~!!」
ユティは、蛇も苦手である。
ユティが蛇に気を取られている隙に、スズメバチが忍び寄った。
「そこまで! 勝者、コドク!」
元の空間に戻った私は、水海達に尋ねた。
「どうなったの?」
「ワンパターン」
「必勝パターンって言ってよ!」
私は、辛辣な評価を下した小雪に、異議を申し立てる。
「こんなの、ズルだわ! インチキよ! 私がLv8の邪神になんて、負ける筈無い!」
「では、ダンジョンキラーは回収。リストから削除。ダンジョンマスターとしての権限のほぼ全てを凍結」
ローダルク様はユティの抗議に耳を貸さず、淡々と処理して行く。
「ダンジョンエリアの縮小」
ローダルク様がそう言うと辺りの景色が変わり、私達は洞窟の前に立っていた。
「この洞窟にユティのダンジョンコアが在る」
「何処なんですか、此処?」
「ユティ神国北部。かつて、『悪魔の住処』と称された洞窟だ」
「そんな所に?」
「ゴブリン・オーク・オーガは、かつてその所業から悪魔と呼ばれていた」
凶悪犯罪起こしまくったんだな。
「そいつ等の住処が在ったんですね」
「左様」
「聖地を『悪魔の住処』だなんて、酷い侮辱だわ!」
洞窟に中に居るユティが憤慨して外に出ようとする。
「何で、出られないのよ!」
見えない壁にぶつかったユティが怒鳴る。
「ダンジョンマスターがダンジョン外に外出可能であるのも、我の力あってこそ」
それも?!
「ちょっと! これじゃあ、餓死してしまうわ!」
「安心するが良い。飲食物と衣服の交換は可能にした。DPも、暫くは持つだろう。気温も冬を乗り切れる温度にしてある。知恵を絞り、生物を呼び寄せるのだな」
◇ヒトリ島◇
そして、私達はヒトリ島に転移していた。
「ダンジョンキラーの交換サービスを終了した為、ユティ神国をノーマルモードに戻す」
「おお……!」
「良かったね、コドク!」
水海達が、我が事のように喜んでくれる。
「ありがとうございます」
「礼には及ばぬ。ユティの要求の高さ故」
「レベル差を覆して、勝ったからだよ~!」
「覆したと言うか……。何で、【毒耐性】のアイテム着けていなかったんだろう?」
「そんなの、考えるまでも無いでしょう? ユティが間抜けだからだよ」
水海の言葉は辛辣だが、事実だ。
「つまり、棚ぼた勝利だよね」
「勝利には違いない」
「レベル差があるのも事実」
「ユティは、勝利の女神様も邪神扱いだから、負けたんだよ」
勝利の女神様って、この世界にも居るのかな?
「そうだよね。素直に喜んでおこう」
「そうそう! 素直が一番だよ!」
次回はエピローグですね。




