十日後
眷属の設定を変更し、ダンジョンキラーを持てるようにしました。
◇ユティ神国首都・ユティ神城◇
『ああああ!!』
『いやああああ!!』
『ママ~~~!!』
至る所から悲鳴が上がる中、ユティは半狂乱で逃げていた。
いや。彼女だけではない。
町中の人々が、我先にと逃げ惑っていた。
しかし、逃げ果せた者はいなかった。
彼等の背後から襲いかかるは、火砕流。
人々が信仰し、聖地としていた美しき山が、噴火したのである。
「いやあああ!!! ……はあっ、はあっ……。夢……?」
目が覚めたユティは、先程までの恐怖と絶望が夢であったと気付いて安堵した。
しかし、あれはただの夢ではない。
かつて、彼女自身が体験した事であった。
「何百年ぶりかしら? あの夢を見るなんて……」
ダンジョンマスターに転生したばかりの頃は、毎日のように見ていた前世の死の間際の夢。
先程まで綺麗さっぱり忘れていたと言うのに、一体、何故また見たのか?
皇国へダンジョン討伐に向かった聖剣使い達が、帰らないからか?
「まさか、また噴火しようとしている……?」
ユティは不安になったが、直ぐにある事を思い出して自身を落ち着かせる。
「大丈夫よ。DPは充分にある」
ダンジョンマスターが出来る事の一つに、DPを消費して災害の規模を小さくするものがある。
勿論、多量のDPが必要だ。
転生して直ぐにそれを知ったユティは、大量のDPを得る方法を考え、国全体をダンジョン化する事を思い付いた。
「私って天才だわ!」と心底思ったものである。
ダンジョンマスターが出来る事を知り、ダンジョンマスターは神であると彼女が思ったのは当然だろう。
故に、ユティは神を名乗り、ダンジョンエリア内にユティ神国を建国した。
人々は、何処からともなく大量の食料を出し・橋や家を一瞬で出現させたユティを見て、素直に神だと信じ・崇めた。
首都である神都は、前世の彼女が生まれ育ち、そして命を落とした街の跡地に造り上げた。
そして、嫉妬深い彼女は、他の神が崇められる事を許せず、自分以外の神は邪神だとして布教した。
少女を依代とし、十年毎に依代を替えると言うのは、嘘である。
ユティ神の依代とされている神女は、ユティ自身。【変身】で姿を替えているだけだ。
何故、そんな嘘を吐いているのかと言うと、邪神としている他のダンマスと同じ存在だと、気付かれないようにする為だ。
DPが貯まると、ユティは、更に神としての凄さを誇示しようと、死んでも無かった事になるダンジョン【女神製ダンジョン訓練所】を造った。
このダンジョンは、他のダンマスのダンジョンを討伐させる為の訓練所として造ったのだが、別にそれ等を視察して参考にした訳ではない。モンスターとの戦闘訓練の役にしか立たない為、罠や仕掛けの解除はダンジョンキラー頼みの力推しになるのだ。
その後暫くして、ユティは、ダンジョンを効率的に討伐出来るアイテムがあればと考え、メニューの『問い合わせ』で要望のメールを送った。その先に誰が居るのか、ユティは考えた事は無い。強いて言うならば、下請けか何かだろうと思っている。
帰って来た返事は、所持DP全てと滞在DPを得る頻度の変更を求めるものだった。
ユティは、火山の事を考え悩んだが、結局は承諾した。
その頃、ユティは一人の男性ダンマス・アルクと出会い、恋に落ちていた。
しかし、彼女は自身の恋心を自覚していなかった。
それどころか、彼が自分に惚れていると言う妄想を抱いた。
アルクが自分に惚れているから、仕方なく……。そう、仕方なく恋人になって上げるのだ!
そうして自分達は付き合っていると思っていたユティであったが、ある日、アルクが女性(眷属)と話しているのを見て、浮気しているとショックを受けた。
だから、手に入れたばかりのダンジョンキラーを使い、アルクを殺す事にした。彼が二度と浮気しないようにと。
それをダンジョンバトルと言う形で邪魔をされたユティは敗北し、アルクへの接近を禁じられた。
アルクが聖剣使いに殺されたのは、その一年後の事である。
嫉妬心が強いのに、何故、アルクに女性である聖剣使いを差し向けたのかと言えば、男性を特別扱いしたくなかったので仕方が無かったのである。
男性嫌いとか・男性蔑視とは違う。
男性を特別扱いしたら惚れていると皆に誤解されると、思っているからであった。
アルクと話したであろう聖剣使い達は、殺した。
邪神を……ダンマスを殺しても、基本呪われるなんて事は無い。種族によっては呪いをかけられるが。
つまり、聖剣使い達が悉く邪神の呪いで死んだと言うのは、嘘である。
全て、ユティが殺した。
嫉妬深い彼女は、自分以外が、信者達に称賛されて生きるのを許せないからだ。
さて、目が冴えてもう眠る気になれず、夜空を見ようと窓辺に近付いたユティの耳に、喧騒が飛び込んだ。
「陛下! 一大事でございます!」
訝しく思っていたユティを、臣下が扉の外から呼ぶ。
「何事なの!?」
「クリサンセマム皇国が、我が国に攻撃を仕掛けています!」
◇一時間ほど前・ヒトリ島◇
月が変わってから、十日程が経過した。
「やっほ~。来たよ~」
「始まるよ~」
「血祭りに上げるぞ~」
寝ていた私は、賑やかな子供達の声で起こされた。
「皆……。こんな夜中に何?」
「紛争の始まりだ~!」
「だから、パーティーって何?」
◇再び、ユティ神国首都◇
侵攻して来た皇国軍は、先ずは空軍が魔物に乗り空へと飛び立ち、ダンジョンキラーに魔力を込めて神都を破壊して行った。
神都は非殺傷エリア指定されているが、神都の外の街道付近もダンジョンなので、そこから、聖剣で攻撃すれば破壊出来るのだ。
彼等が手にする聖剣は、水海達が聖剣使いから手に入れた物である。
攻撃を受けた神国側は、直ちに反撃に移った。
しかし、神都を出るまでの間に数を減らされてしまった。
皇国の海軍は、空軍が飛び立った後直ぐに、港を占領した。
上陸した陸軍が魔物に乗り神都を目指す。
港と神都はそれほど離れていないので、直ぐに辿り着いた。
非殺傷エリアを出るまで攻撃出来ない神国軍は、不利だった。
神都内での死亡者が三割・逃亡者が六割、最後の一割が神都の外へと出て皇国軍へ攻撃を加えようとするも、地力が違う。
例え同じレベルでも、ドラゴエルフォイドである皇国人の方が各ステータスが高い。
更に、武器・防具にも差が在った。
ミリスル鉱山・オリハルコン鉱山が在る皇国と、それ等が無い神国。
【女神製ダンジョン訓練所】の宝箱から、ミスリル製・オリハルコン製の武器・防具が手に入るが、皇国軍より数少なかった。
「陛下! お力を……!」
ユティに助けを求めた部下は、頭に二本の短い角が生えた幼い子供に放り投げられた。
「ど、どうして?」
ユティは、目の前に立つ人物を信じられずに凝視する。
「どうして、【ローダルク】が生きているの!?」




