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DP還元旅行2

2018.04.04 一部加筆修正。

◇ユティ神国・リゼル地方・31日目(続き)◇


 (プリンセス)のダンジョン内には、モンスターは一匹も居なくなり、罠も一つも無くなった。

 今なら、誰でも容易くコアを破壊出来る。


「只今より、此のダンジョンを一年立ち入り禁止とする」

「そんな!」


 姫が抗議の声を上げるが、ロードアーク様は何処吹く風だ。


「誰も入れないのですね?」

「然り」


 水海(すいみ)が確認すると、ロードアーク様は肯定した。


「え? 何で?」

「折角ダンジョンバトルで勝利して手に入れた奴隷、あっさり死なせて良いの?」

「あ、そうか」


 ダンジョンのほぼ全てをDPに還元だけじゃ、生温いよね。


「な、何だ、あんた等は!」


 突然そんな声をかけられ振り向くと、近くの街から出て来たらしき武装した集団が立っていた。



「私達は旅の冒険者です」

「子供が冒険者?」

「体の成長が遅い種族ですので」

「そんな種族がいるのか……?」


 水海が相手と会話をする。


「貴方方は?」

「ワシ等は、あの町のもんだ」


 代表らしき男が、背後の町を指しながら答えた。


「数週間ほど前に突然現れた城が消えたから、見に来たんだが……」


 消えてはいない。二階建ての家ぐらいの城に変わっただけだと気付いたのだろう。

 まあ、どちらにしろ、異変には違いない。


「ダンジョンが変化するのは、珍しくありませんよ」

「そうなのか?!」

「やはり、ダンジョンだったか!」

「ダンジョンらしきものが出現したと、報告しなかったんですか?」


 水海が尋ねる。


「したさ! 若い女達が町から行方不明にもなったからな。だが……」

「ダンジョンの仕業と決め付けるのは良くないと言われて……」

「後、ダンジョンの可能性があるなら、危険だから城に近付かないよう言われた」

「聖剣使い様は忙しいからと」


 そうやって誤魔化したのか。


「あの。これ、城で見付けたんですけど」


 水海は、先程の宝箱を差し出した。


「これは?」

「普通のリボンとか櫛とかが入っていて、何かなと思ってたんですけど」

「まさか!」


 男達は、罠を警戒する事無く宝箱を開け、中身を目にした。


「これは、妻に贈った櫛!」

「娘のリボン!」

「ああ! 彼女に贈ったイヤリング!」


 被害者に所縁(ゆかり)ある人達が、彼女達の末路を悟って泣き崩れる。


「それで、こいつが邪神」


 水海が姫を軽く蹴っ飛ばした。

 彼女も王子(プリンス)も、ロードアーク様に声を封じられているようだ。


「邪神だと?!」

「隷属の首輪を着けてあるよ」

「何故、殺さなかったんだ!」


 水海の言葉を、誰も少しも疑わない。

 私達が犯人である可能性を考えないのは、此方にとっては好都合だけど。


「だって、呪われて死ぬんでしょう?」


 水海がそう言うと、彼等は二の句を継げなくなった。



「その奴隷……。ワシ等に売ってくれんか?」


 暫くして、代表者が水海にそう頼んだ。


「どうする?」

「え? えっと……」


 水海に確認され、私は、幾らにすれば良いのかと悩んだ。


「其方の奴隷にする事は許したが、売る事は許さぬ」


 ロードアーク様がそう言うのでは仕方ない。


「済みません。売る事は出来ませんが、一年、預けます」

「え?」

「殺しさえしなければ、法に触れない範囲で何をしても良いですよ」


 因みに、神国は皇国と違って、勝手に奴隷にしても一部例外を除いて咎められる事は無いそうだ。


「そう言う事なら、預かろう」


 姫は嫌がっているが、知らない。

 先に、情を捨てたのは向こうだ。いや、元から無かったのか?




◇ユティ神国・ガヴァン地方◇


 連行されて行く姫を助けようと追い始めた王子を水海がひっ捕らえ、私達は、再びロードアーク様の力で転移した。


「此処は、南ガヴァン地方。王子のダンジョンエリアだ」


 目の前に、和風の城がそびえ立っている。


「ダンジョンバトルで王子が造った城にそっくり」


 水海が感想を呟く。


「もし、其処の方々」


 声をかけられたので其方を見れば、老女が立っていた。

 背後に街が見えるので、其処から出て来たのだろう。


「その建物はダンジョンじゃ。近付いてはならんよ。特に、若い女子(おなご)はの」

「何かあったんですか?」


 水海が尋ねる。


「多くの女子が攫われたのじゃよ。助けようと後を追った者が、オーガがあのダンジョンに連れ込むのを目撃したんじゃ」


 私は、王子に白い目を向けた。


「討伐依頼を出さなかったんですか?」

「出したとも。じゃが、聖剣使い様は忙しいとかでのう……。何時になったら、お出でくださるのやら」

「安心してください! 私達は旅の冒険者です。攫われた人達を探して来ますよ」

「嬢ちゃんがかい?」

「体の成長が遅い種族なの。強いから安心して」

「そうかい。気を付けるんだよ」



 城の中に入った私達は、DPに還元しながら奥へ進むロードアーク様の後をついて行った。

 私は、ロードアーク様の赤紫色の髪を見ながら、違和感の正体について考える。

 モンスターは、動く甲冑だった。一週間経過のプレゼントかな?


「この先が大奥だ。攫われた女共は此処に居る」


 ロードアーク様の説明に、私は緊張する。



「プ、王子様……」


 大奥に入ると女性達が集まっており、振り向いた彼女達は怯えと憎しみを宿した目で此方を見た。


「お帰りなさいませ」


 多分、私と水海の事は攫われて来た新入りだと思っていて、ロードアーク様の事は目に入っていても認識出来ていないのだと思う。


「助けに来たよ」

「……は?」


 だから、水海の言葉は理解出来なかったのだろう。


「王子は、既に隷属の首輪を着けてあるから、もう大丈夫だよ」

「何言って……」

「えい」


 水海は王子に足払いをかけて転ばせ、頭を踏んだ。


「はい。どうぞ」


 どうぞって、何が?!


「帰れるの……?」

「え? 本当に?」

「夢じゃないの?」

「夢かどうか、踏んで確かめたら?」


 水海が足元の王子を指差す。

 一人が恐る恐る踏むと、振り向いて皆を力付ける様に頷いた。


 それからは、早かった。

 皆、躊躇い無く王子を踏んで駆け去って行った。

 モンスターが居たり、罠があったら、どうするの?


「この国って、純潔を奪われた女性はどうなるの?」

「娼婦になるしかないらしいね」

「……王子は、遊夜(ゆうや)に預けて男娼にしようかな?」


 私がそう言うと、王子は青褪めた。


「因みに、ユニ教だと殺される」

「何それ、ひっど! って、ユニ教?」

「ユニ教もユティ教と同じで、他の神やダンマスは邪神って言う宗教でね、徹底的な男尊女卑」

「一人でも困るのに、他にもいるの……」


 もう、お腹一杯です。おかわりは、要らない。



 大奥の奥の一室に、ダンジョンコアが在った。


「これ、あの人達壊せたんじゃ……?」


 普通に床の間に飾られている。


「普通の人は、ダンジョンコアなんて知らないんじゃない?」

「あ。そっか」

「或いは、聖剣でしか壊せないと思っているか」

「あ~! そうかもね!」



 全てのモンスター・罠・調度品等をDPに還元し終わり、私達は城の外に出た。

 姫の時と同じように、城が小さい物へと変えられた。


「あの!」


 声をかけられたので振り向くと、先程逃げて行った女性の一人が(くわ)を持って立っていた。


「そいつ、私に売ってください! 代金は、私を売って作りますから!」

「ごめんなさい。訳あって売れません。良かったら、貸しますけど」

「私は、そいつを殺したいんです!」

「……王子は邪神です。邪神を殺すと呪いで死ぬらしいですよ」

「構わない!」


 決意は固いようだ。どうしよう?

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