DP還元旅行1
虫。
2018.04.04 一部訂正。
◇ヒトリ島・31日目(続き)◇
「もうちょっと観客を意識して、盛り上がるようにダンジョンを造って」
バトル空間から元の場所に戻ったら、小雪が駄目出しして来た。
皆は、ロードアーク様の力で観戦していたそうだ。
「負けたら奴隷なんだから、そんな余裕ぶっていられないよ」
水海の返事に同意。
負けたら私達奴隷だし、マツとカシも取られるんだよ!?
「あ。でも、もし、私のダンジョンに姫が挑戦したなら、悲鳴上げたりしただろうから、人によっては面白」
「姫が挑戦して、一目で気絶したんだよ。で、スズメバチが襲いかかった」
私の言葉を遮って、遊夜が教えてくれた。
そこまで駄目なんだ……。
「ビッシリだったもんね」
「あれはキモかった」
私もそう思う。
「じゃあ、王子は私の水没ダンジョンか」
「え? 水没?」
私は耳を疑った。
ダンジョンを水中に造ったの?
「そう。転移陣でダンジョン内へ。転移した先は天井まで水」
「なるほど。王子は、【水中呼吸】無かったんだね」
「仮にあっても、【水中機動】が無いと碌に戦えないよ」
容赦無いね。
「姫のダンジョンは、どうだった?」
「白亜のお城で、動くぬいぐるみが襲って来たよ」
「へー。こっちは和風のお城で、動く甲冑が襲って来たよ」
城が好きなんだね。二人共。
ふと彼等に目をやると、悄然と座り込んでいた。
目が死んでいる。
「こんな筈じゃ……」
「むしが……むし……」
二人の首に光が集まり、隷属の首輪が現れた。
「敗者である姫と王子は、コドクの奴隷となる」
桃色の髪をしたロードアーク様がそう言うと、二人は元気を取り戻した。
あれ? 何だろう、違和感がある。
「こんなの嘘よ! 邪神を殺せないなら、神女様が私に聖剣を与えてくださる訳無い! 邪神を殺して、美しくして貰うのよ!」
「そうだ! 邪神の力に屈してたまるか!」
立ち上がった二人に、ロードアーク様が声をかける。
「跪け」
二人はその意思に反し、勢い良く膝を着いて頭を下げた。
「姫。『美しくして貰う』って言ってたけれど、どういう事?! まさか、そんな事の為にコドクを殺そうとしたの!?」
水海が怒鳴る。
「そんな事ですって!? 可愛く転生した貴女達には、私の気持ちなんて解らないわ!」
「そうだ! 元から不細工だった奴等とは訳が違うんだ!」
頭を下げ過ぎて地面に額をぶつけた姿勢のまま、二人は怒鳴り返した。
「訳って、頭悪いって事? ダンマスは【変身】が使えるんだから、さっさと美人に変身すれば良かったのに」
凍るような冷たい空気を放ち、水海が教えてやる。
「え?!」
二人は姿勢をそのままに、慌ててメニューを開いて確認したようだった。
「ほ、本当にある……!」
「でも、何よ、これ! 使えない!」
「奴隷となったからに決まって居ろう?」
ロードアーク様が、呆れたようにそう言う。
考えてみれば、隷属の首輪を付けられた奴隷が、自由な力の行使が出来ないのは当然かもしれない。
「さて、コドクよ。此処でDPを還元して渡す事も出来るが、此奴等のダンジョンを見たくば連れて行こう。如何する?」
「えっと……」
「行って来なよ。タダで旅行だと思ってさ」
「ダンジョンは、私達が守っておくよ」
迷う私に、遊子達がそう言ってくれた。
「あ、じゃあ、お願いします」
「私も行きます」
水海も一緒に行く事になった。
「マツ! カシ!」
仮想空間から元の空間に戻ると、二人は海岸で釣りをしていた。
「あ。マスター。勝ったんだな」
「心配してたぜ」
本当に?
「のんびり釣りをしているように見えるけれど」
「心配だけしてたって、どうにもならねえからな」
「そうそう。日課で心を落ち着けてたんだよ」
「ふーん。あ、そうだ! ちょっと、出掛けて来るから」
「え? マスターが?」
「うん」
驚いたマツ達だったが、水海達を見て納得したようだった。
「友達と遊びに行くんだな」
「楽しんで来いよ」
「うん。じゃあ、行って来る。水海以外が、私が来るまで守ってくれるって」
「え?!」
「ちょっ! ドラゴエルフ大勢置いて行かないで!」
カシ達が慌てて引き留めようとしたが、ロードアーク様は気にも留めず転移した。
◇ユティ神国・リゼル地方◇
「此処は、南東リゼル地方。姫のダンジョンエリアだ」
沼の畔に、白亜のお城が建っていた。
ダンジョンバトルで姫が造った物よりも大きい。
「行くぞ」
「はい」
私達は、大人しくさせられている姫達を連れて中へと入った。
中には可愛い系モンスターが沢山居た。
それを、ロードアーク様が還元して行く。
調度品はメルヘンチックだった。ケーキの椅子や兎の棚、キノコのランプ等が在った。
泣く姫とそれを慰める王子を尻目に、ロードアーク様はスタスタと歩みを止めずに還元して行く。
まあ、足音聞こえないんだけどね。
そして、私達は最後に宝物庫に辿り着いた。
其処を守っているのは、ネズミなランドの……。
「リストに有ったのかな?」
「一週間生存のプレゼントだと思うよ」
「ああ……」
ロードアーク様の前には、番人も鍵も何の意味も無かった。
宝物庫の中には、ダンジョンコアの他に、煌びやかな装飾品や金塊等が飾られていた。
その中に、異彩を放つ一角が在った。
「普通のリボンだよねえ?」
どう見ても――鑑定で見ても――『普通のリボン』が、『普通の櫛』や『安物のイヤリング』等と一緒に展示されている。
浮遊魔法で宙に浮いてそれを確認した水海が、顔を顰めた。
「人殺しの記念品だよ」
「人殺しの記念品?!」
私は驚愕して姫を振り向いた。
ダンジョンマスターになったのだから、人を殺して吸収しDPにする事には何も言えない。
でも、快楽殺人じゃないの、これ?!
「前世もそうだったのかな……?」
だとしたら、恐ろしい。
「どうだろう? でも、ゴブリン・オーク・オーガは、異常殺人者の割合が多いから……」
「え?! それって、私もヤバかった?!」
「そうかもね。コドクが姫や王子みたいにならなくて良かったよ」
本当に……。
「姫達も、違う種族だったら、こうはならなかったのかな?」
「なったぞ」
ロードアーク様の一言で、同情心は吹っ飛んだ。
「ダンジョンマスターに転生した事で、DP獲得の為と言う殺人の免罪符が出来、それによって、自制心と理性から己を解放したのだ」
「それって、つまり、前世でも快楽殺人犯になったかも知れないと」
「然り」
そんなヤバい人が担任だったなんて……。
「ねえ、コドク。こいつ等、遊夜に売り飛ばす?」
「え? ……止めて置く。だって、良い物食べさせるでしょう?」
「まあ、不味い物はリストに無いね」
「コドク。此れ等は、如何する?」
他を全て還元したロードアーク様が、リボン等を指差す。
「出来れば、遺族に返還したいです」
「左様か」
水海が、以前私がヒトリ島で掘り出した宝箱そっくりの箱を出し、リボン等を入れた。
そして、私達はロードアーク様の力によって、ダンジョンの外に転移した。
「最後は、此れだ」
ロードアーク様が手を翳すと、お城が、現代日本の平均的な二階建て一軒家位の大きさに一瞬で変わった。
まるで、最初からそうであったかのように。




