ダンジョンバトル開始即決着!
2018.04.04 一部加筆修正。
◇ヒトリ島・31日目(続き)◇
「コドク!」
動きを止められた私達の間に、幼い子供達が駆け込んで来た。
「水海……」
その中に水海の姿を見付けて、私の胸に怒りが沸き起こる。
どうして、もっと早く来てくれなかったの?!
マツとカシは……。DPで生き返るけど。でも……!
逆恨みだと解っている。襲われているなんて、解る訳無いんだから。
あれ? じゃあ、何しに此処に……?
「何するのよ!」
遊夜に蹴り飛ばされた姫が、怒鳴る。
王子も天地に蹴り飛ばされていた。
「蹴り飛ばしましたが、何か?」
「お前らこそ、何やってんだ?」
「先生に対して、その態度は何!」
姫が怒鳴った途端、皆一斉に睨み付けた。此方からは見えないけれど、多分。怖い感じがするし。
姫は声も無く腰を抜かした。あ、失禁している。
「あの、皆。怖いんだけど……」
「あ、ごめんね。怒ると【威圧】しちゃうんだ」
遊子が振り返り謝ると、恐怖感が嘘のように消え去った。
「姫! しっかり!」
王子が姫を介抱しているのを余所に、私は水海に泣き付いた。
「水海。マツとカシが……!」
「大丈夫だよ」
何が大丈夫なの? DPくれるとでも言うの?
「此処、仮想空間だし」
「か、仮想空間?」
「うん。姫も王子もダンマスだからね」
そうだ。ダンマス同士の直接的な争いは、禁じられているんだった。
「え? 何時から?」
「二人がコドクのダンジョンに入った時から」
「え? つまり……」
「現実世界のマツとカシは生きているよ。死んだのはコピー」
生きてる? 良かった……!
「ああ! もう! ショック受けたの、何なの?!」
「コドクが忘れなければ良かったんだよ」
「だって、既に仮想空間とは思わないじゃん! 移行がスムーズ過ぎる!」
「そうか、なるほど。考慮しよう」
その声に横を向くと、赤い髪の知らない男性が立っていた。
私達の争いを止めたのは、この人だろう。大人の男性の声だったし。
彼は、不思議な印象の男性だった。
其処に居るのに存在が希薄で、同時に存在感が強い。
何と言えば良いのか……。
ホラーで良くある、三人しかいない筈なのに四人いるのを不自然に思わない状況とか。
「誰がホラーか」
「済みません!」
あれ? 今、心を読まれた?
「あ。コドク、紹介するね」
水海の知り合いなのか。
「此方、創造神にしてダンマスの神祖【ロードアーク】様」
今、とんでもない事を聞いた様な……?!
「それでは、ただ今より『ダンジョンバトル』を行う」
ロードアーク様が、突然そんな事を言い出した。
「え? さっきのは?」
「あれは、其方等が勝手にやった事だろう?」
あ、はい。貴方様がルールなんですね。
「な、何よ! 勝手に出て来て! 貴方が邪魔しなかったら、こっちが勝ってたのに!」
「それで勝利しようと、無意味。第一、あれは引き分けだ。雀蜂に刺されてな」
「スズメバチ?!」
刺すのを止められたスズメバチ達は、姫と王子の頭に止まっていた。
どうやら、気付いていない様子。
遊夜達は、お口に両手をバッテンに当てていた。あざとかわいい!
「それでは、ルールを説明する」
全員、ロードアーク様を見た。
「先ず、今回は二対二で行う。コドク、パートナーを選択せよ」
「水海、お願い」
「もっちろん! 任せて!」
水海が快諾してくれる。
「これより、各自に百万DPを与える。制限時間三十分でダンジョンを作成せよ」
「余ったDPは貰えるのか?」
聞こうと思った事を、王子が先に聞いてくれた。
「仮想DPである為、残しても無意味」
ですよね。
「公平を期す為、ダンジョンキラーの使用は禁止する」
「そんな! 横暴だわ!」
姫の抗議は無視された。
「リストは、イージーモードの水海のみ制限をかける」
「はい」
「後の説明は、ダンジョン完成後に行う。始め!」
三十分後。
「良し。止め!」
仮想ダンジョンエリアに飛ばされた私は、普通に歩いて進めるダンジョンを作製した。
但し、狭い。幅1メートルも無い。
そして、其処に虫を召喚しておいた。奥の方では、虫以外も出てくるけれど。
「始める前に、勝利報酬の希望を聞こう」
「私が勝ったら、現実のコアも壊れるように」
「却下」
姫の要求は、最後まで言わせて貰えずに却下された。
「どうして! 納得行かないわ!」
「では、其方等が敗北した場合、其方等の現実のコアを壊して良いのであれば、許可しよう」
えー! ちょっと、それ、良いって言うに決まってるじゃないですか! 困る!
「そんなの、嫌!」
あれ~? ちょっと、ユティへの忠誠心は?
「コドクは、姫達から欲しいものある?」
「えっと……。DP全部」
あ、でも。1000未満しか残っていなかったりして。
「交換してある物も還元して全部だそうです」
「良いだろう」
還元って出来るんだ……。
「酷いわ! 釣り合わないじゃない!」
「ダンジョンバトルの開始を待たずに攻撃したペナルティだ」
「そんな! そいつは……。そいつ等は邪神なのよ!」
「決まりを変えよと申すならば、それ相応の見返りを差し出せ。ユティの様に」
え? ユティが何を?!
「ユティ様が?」
「彼奴の望みは、ダンジョンキラー。見返りに、所持DP全てとユティ神国のハードモードへの変更」
は?! ちょっと!
「ユティの所為だったの?! とばっちりなの?!」
「ユティ様を呼び捨てにするんじゃないわよ! 邪神のクセに!」
「いや。邪神だから呼び捨てにするんじゃ……」
姫の言葉に、王子が控えめに異議を唱えた。
「そもそも、どうして、私、ハードモードなんですか?!」
「ハードモードには駄目人間を配置した」
「駄目に……。え?! 私、この人達と同レベルですか?!」
邪神だと言うのを鵜呑みにして、教え子を殺そうとする人達と?!
「同レベルではないが、他に居なかったのでな」
それでも、二人を除いたら一番駄目って、ショック!
いや。同位がいるかもしれない。その中から適当に選ばれたのかも。
「甘やかされたら駄目になるタイプだって仰ってたよ」
「え? そんな事……無い……筈」
私は、遊子が教えてくれた評価を否定しきれなかった。
だって、前世の記憶が無いから。
そう言えば、駄目人間と呼ばれたのに姫達大人しいなと思って其方を見たら、誰かが【沈黙】魔法でもかけたのか、怒りの形相で口をパクパクさせていた。
「それより、報酬だ。水海、其方は?」
「では、そいつ等をコドクの奴隷にしてください」
「良いだろう」
ロードアーク様が姫達に目を向ける。
「其方等はどうする?」
「じゃあ、此方も奴隷で」
「私は……。一番可愛いドラゴンを」
「そのレベルでドラゴンを眷族にしても、言う事を聞かぬぞ」
「え? 水海達は?」
私は、水海の眷族のドラゴンや、天地がドラゴンをメインに使っていると聞いた事を思い出して、疑問の声を上げた。
「種族による。水海等は、ドラゴエルフだからな」
ドラゴン系統だからかな?
「じゃあ、マツとカシで良いわ」
絶対、負けられない!
「では、何方のダンジョンを攻めるか、パートナーと話し合え。制限時間は一分」
「水海、どっちが良い?」
「王子」
「じゃあ、私は姫か」
暫くして、制限時間となる。
「では、一斉に転移する。勝利条件は、相手のコアを壊す。或いは、相手を殺す。三十分経っても決着が着かない場合、相手を変更とする。では、始め!」
転移した先には、白亜の城が在った。DP高そう……。
中に足を踏み入れると、可愛いネズミ(?)のぬいぐるみが襲いかかって来た。
リビングドール(ぬいぐるみ)か。
私は、オリハルコンのナイフを握り締め、攻撃をかわした。
『そこまで! 勝者、コドク&水海!』
……は?




